Simply Dead

映画の感想文。

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『激怒』(1972)

『激怒』
原題:Rage(1972)

scott_rage_poster.jpg

 俳優ジョージ・C・スコットの監督デビュー作。軍の開発した毒ガス兵器が漏れ、家畜が大量に死んだという実際の事件をもとにした作品。中子真治著「フィルム・ファンタスティック5」で知って以来ずっと観たかった映画で、中古の米版ビデオを取り寄せて観てみた。

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〈おはなし〉
 ワイオミングで羊牧場を営む男ダン・ローガン(ジョージ・C・スコット)は、一人息子のクリスと2人暮らし。ある日、ローガン親子は放牧地の丘の上でキャンプをする。翌朝、ダンが飼い犬の吠える声で目を覚ますと、テントの外で寝ていたクリスが鼻血を出してグッタリしていた。周辺には大量の羊の死骸が……。ダンは慌てて息子の身体を抱え、町の病院へと向かう。クリスの治療は若い医師ホリフォード(マーティン・シーン)がおこない、ダンも検査入院することに。

 クリスは病院のベッドの上で、苦しみながら死んでいった。それは軍が実施した化学兵器実験中の事故が原因だったが、軍上層部はその事実を隠蔽しようと画策する。ホリフォードはその手先であり、ダンの身体が汚染されていることも、息子が死んだことさえもひた隠す。ローガン親子の主治医カードウェル(リチャード・ベイスハート)は真実を伝えるべきだと訴えるが、軍によって接触を禁じられてしまう。

 クリスの安否が気がかりで仕方ないダン。ホリフォードは強い麻酔を与えて彼を黙らせようとする。だがある時、彼は解剖室から息子の衣類を持った医師が出てくるのを見た……。深夜に病室を抜け出し、解剖室に忍び込んだダンは、変わり果てた息子と対面する。怒りのあまり病院を抜け出した彼は、ライフルと大量のダイナマイトを手に、クリスの敵を探し始める。だがその体はすでに化学兵器に蝕まれつつあった……。

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 ジョージ・C・スコットは自ら主演もこなし、怒れる父親を熱演。ありふれた西部男になりきるため、メイクで眉毛を濃くして普段とは違った印象にしている。後半、鬼の形相になってからはいつものジョージ・C・スコット。怖い。

rage_scott01.jpg

 個人が国家や軍といった巨大な組織の犠牲にされていく過程を、スコットは丹念な演出で描いていく。前半の病院でのシークェンスは、視線の冷徹さと巧みなカットバックが冴えていて、思わず引き込まれてしまう。息子が死んでいく場面と、父親が息子の死を知ってしまう場面は特にいい。ここで十分に怒りとやるせなさを覚えさせてから、後半の復讐譚へとなだれ込んでいくのだけど、予想していたほど凄い展開にはならず、意外と地味なまま終わってしまった。派手な爆破シーンもあることはあるけど、主人公がライフルで軍人を射殺しまくったり、個人の怒りが世界を破滅に導いてしまったりといった破天荒な展開を期待すると、やや拍子抜けの感は否めない。ちょっと生真面目なのかな?

 ただ、怒りに燃えるジョージ・C・スコットの狂気走った表情はやっぱり怖いし、主人公が虫のように痙攣しながら死んでいく様を淡々と映す突き放した演出には、非凡なものを感じる。とりわけ印象的なのは、要所要所で挿入されるスローモーションのカット。噛み煙草の唾を吐いたり、コーヒーを捨てたり、猫がソファに上ったりといった何気ない瞬間を引き延ばし、不安や緊張感を煽る。「ちょっと変わった演出」としてはベーシックなテクニックだが、わりと巧く使いこなしているのはさすが。

 撮影は、ジョージ・C・スコットの役者としての代表作『パットン大戦車軍団』(1970)も手がけた、フレッド・コーネカンプ。基本的には手堅いカメラワークながら、時折「おお」と思うような面倒なこともやってのけている。編集は後にスピルバーグ作品の多くを手がけるマイケル・カーンが担当。ラロ・シフリンの音楽もいい。

rage_scott_sheen.jpg

 出演者の中では、軍から派遣された医師を演じるマーティン・シーンが非常によかった。こういう人間性のない若者の役がとてもよく似合う。スコットは自分も俳優だから、やっぱりその辺の目利きは素晴らしい。

 これも題名はよく知られていながら、今ではあまり観る機会がない映画のひとつ。日本では一度もソフト化されておらず、アメリカでもDVD化は見送られたまま。羊とか猫とか動物の死ぬ場面がいっぱい出てくるのがマズいとか?

・Amazon.co.jp
ビデオ『激怒』(米国版)


製作/フレッド・ワイントローブ
監督/ジョージ・C・スコット
脚本/フィリップ・フリードマン、ダン・クレインマン
撮影/フレッド・コーネカンプ
編集/マイケル・カーン
音楽/ラロ・シフリン
出演/ジョージ・C・スコット、リチャード・ベイスハート、マーティン・シーン、バーナード・ヒューズ、ニコラス・ビューヴィ
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