Simply Dead

映画の感想文。

『Rabid Dogs』(1974)

『Rabid Dogs』
原題:Cani Arrabbiati(1974)

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 『デス・プルーフ』(2007)にぶっ飛ばされた直後、車が出てくる70年代のいびつなB級アクション映画が観たい! と思ってまず手持ちのDVDの山から引っ張り出してきた作品。イタリア恐怖映画の巨匠、マリオ・バーヴァ監督が手がけた辛口の犯罪スリラー。人を人とも思わない残酷なバイオレンス、神経を逆撫でするようなサディスティックな描写に溢れ、当時のイタリア国内の世相を反映したような殺伐としたムードに支配された異色作。70年代イタリアン・バイオレンス映画をも見事にモノにしてみせるバーヴァの職人技が堪能できる、シンプルな傑作だ。

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〈おはなし〉
 ある猛暑の日、大金を奪って逃走する武装強盗3人組。彼らは駐車場で若い女を人質にとり、さらに1台の車をハイジャックする。車を運転していた中年の男は、病気の子どもを病院へ連れていかなければと強盗たちに乞うが、聞き入れてもらえない。かくして6人を乗せた車はアジトを目指し、地獄のドライブを続ける。彼らを待ち受ける運命とは?

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 一触即発の緊張感と、うだるような暑さのなかで正気を失っていく人々を、バーヴァはパワフルな演出で活写する。鮮烈な色彩美と怪奇ムードに満ちた過去のバーヴァ作品とはかなり趣きを異にしているが、暑苦しいだけに終わらないシャープでスピーディな語り口はさすが。隠れた持ち味である独特の乾いたシニシズムも本作では特に色濃く打ち出されている。

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 映画の大部分が狭い車の中で展開するため、実質的には密室劇。セットで擬似的に撮影するスクリーンプロセス方式ならいざ知らず、実際に走る車の中での撮影は技術的にも困難だし、つまらないカットバックになりやすい。そこをどう緊張感を保たせながら単調にならず見せきるか、というところにバーヴァの作家としての意欲が発揮されている。

 各キャラクターもそれぞれ際立っていて、配置のバランスがまた見事。“犯罪者と人質の逃避行もの”のお手本のよう。若い狂犬ギャング2人組がいつ理性を棄てて暴走するか、いつ人質が悲惨な目に遭うかでハラハラさせながら、彼らが人間的な一面を覗かせる瞬間を絶妙なタイミングで映し出す。それが巧い。

 当初は、主役に『PULP』(1972)や『ゲッタウェイ』(1973)のコワモテ俳優アル・レッティエリがキャスティングされていたが、イメージが合わないということで『死刑台のメロディ』(1971)の中堅俳優リッカルド・クッチョーラに交代した。そのおかげで、ラストのショッキングなどんでん返しがより効いている。狂犬コンビの片割れで「32」という妙なニックネームを持つチンピラを、『猟奇!喰人鬼の島』(1980)のルイジ・モンテフィオーリ(a.k.a.ジョージ・イーストマン)が怪演。役名の由来は映画を観てのお楽しみ。大層くだらない。人質となる女性マリアを終始ヒステリカルな表情で演じるリア・ランデールの熱演も見もの。ステルヴィオ・チプリアーニの手がけたアクの強い音楽も素晴らしい。

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 この映画は完成直前に製作会社が倒産したせいでオクラ入りとなり、「幻の作品」と化していた。が、出演女優のリア・ランデールが所有していた素材からプリントを修復し、一時期DVDがひっそりと流通していた。最近またアンカーベイ社から2バージョン収録の復刻版DVDがリイシューされ、これが決定版になるだろうと思われる。

 米アンカーベイ社からリリースされたDVDは『Kidnapped』と題されている。これはランデールらが修復した『Rabid Dogs』に追加撮影と再編集を施した新バージョンのタイトル。作ったのは『血ぬられた墓標』(1960)を始め数々のバーヴァ作品をプロデュースしてきたベテラン製作者のアルフレッド・レオーネと、撮影当時に助監督を務めていたマリオの息子ランベルト・バーヴァ。はっきり言って「余計なことしやがって」としか思えない出来だ。追加シーンは完全に蛇足だし、差し替えられたステルヴィオ・チプリアーニの新作スコアはダサいにもほどがある。絶対に『Rabid Dogs』の方から先に観るべし。

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・DVD Fantasium
『Kidnapped(Rabid Dogs)』DVD(US盤)


製作/ロベルト・ロヨーラ
監督/マリオ・バーヴァ
原案・脚本/アレッサンドロ・パレンツォ、チェザーレ・フルゴーニ
撮影/エミリオヴァリアーノ、マリオ・バーヴァ
音楽/ステルヴィオ・チプリアーニ
出演/リッカルド・クッチョーラ、レア・ランデール、モーリス・ポリ、ルイジ・モンテフィオーリ、アルド・カポーニ

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