Simply Dead

映画の感想文。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『ロサンゼルス・それぞれの愛』(1976)

『ロサンゼルス・それぞれの愛』
原題:Welcome to LA(1976)

welcome_to_la_01.jpg

 ロバート・アルトマンがプロデュースを務めた、アラン・ルドルフ監督の“公式”デビュー作。ルドルフはこれ以前にジェラルド・コーミア名義で『Premonition』(1972)と『悪魔の調教師』(1974)という低予算ホラー映画で演出を経験している。が、作家として臨んだ仕事ではないのでカウントしたくないらしい。

 彼が初めて自身の作家性を打ち出した『ロサンゼルス・それぞれの愛』には、すでに「アラン・ルドルフ映画」の特徴的なテイストがデビュー作ならではの濃密さで漂っている。つまり、息苦しいほどメランコリックで、ロマンティック。若干ココロのねじれた大人たちが織りなす恋愛群像劇が、アダルトなムードたっぷりに、シリアスなタッチで描かれる。違う言い方をすれば、後年の作品に比べるとやや軽みと飛躍に欠け、ルドルフの生真面目なロマンティストぶりが大っぴらに露呈した処女作なのだ。慣れない人はちょっと胃もたれするかもしれない。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
〈おはなし〉
 売れないシンガーソングライターのキャロル・バーバー(キース・キャラダイン)が、数年ぶりにL.A.に帰ってきた。人気歌手のエリック・ウッド(リチャード・バスキン)に曲を提供してほしいと、元恋人のエージェント、スーザン(ヴィヴェカ・リンドフォース)に頼まれたのだ。再会を機に復縁をほのめかすスーザンだったが、キャロルの態度はにべもない。

 キャロルは仮住まいのアパートを用意してくれた不動産屋のアン(サリー・ケラーマン)と軽い気持ちでベッドを共にする。明くる日、アンは頼んでもいないのにメイドのリンダ(シシー・スペイセク)を世話係として連れてきた。

 大会社の社長である父カール(デンヴァー・パイル)を訪ねたキャロルは、父と付き合っているカメラマンのノナ(ローレン・ハットン)と会う。カールは息子を会社の跡継ぎにと願っていたが、今ではそれも諦め、若く野心に溢れた側近のケン(ハーヴェイ・カイテル)に経営の大部分を任せていた。

 ケンの妻カレン(ジェラルディン・チャップリン)は、仕事第一の夫に愛されない苦しみから、今日もタクシーに乗って街をさまよっていた。そんな時、偶然出会ったキャロルとの間に奇妙な共感が芽生えるのだが……。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

 各キャラクターが初めて顔を見せる冒頭10数分は、キャラクター説明をほとんどしない。単なる「顔見せ」を済ませた後、徐々にそれぞれの関係性を浮かび上がらせていく。アメリカ映画ではあまり見ないタイプの語り口だ。それも、重要なのは彼らの内面であって、設定ではない(実際、ハーヴェイ・カイテル演じるビジネスマンの具体的な仕事内容は意図的に明かされない)。その内面を饒舌に伝えるのが音楽。冒頭とエンディングは主人公キース・キャラダインが主題歌をさりげなくも切々と歌い、彼がメインの歌謡映画なのかと思いきや、実は劇中で歌われる曲のほとんどはリチャード・バスキンによるピアノの弾き語りである。バスキンは『ナッシュビル』(1975)や『ビッグ・アメリカン』(1976)の音楽を手がけたミュージシャン/プロデューサー。彼がスタジオでねっとりと歌い上げる曲が、キャラクター達の心情を説明するように、いくつもインサートされる。

welcome_to_la_02.jpg

 出演者のほとんどはアルトマン作品の現場で知り合った俳優たちで固められ、しかも群像劇。公開当時は否応なしに師匠アルトマンと比較され、二番煎じと批判されることもあったという。だが、『ロサンゼルス・それぞれの愛』はまぎれもなくアラン・ルドルフの映画だ。自身の求める世界観を貫き、きっちりとオリジナルな作品に仕上げている。決定的に違うのは、アルトマンはこんなに臆面もなくロマンティックな映画は撮らないということ。

 個人的にアラン・ルドルフ監督の作風は昔から好きで、特に『トラブル・イン・マインド』(1985)『堕ちた恋人たちへ』(1992)『アフターグロウ』(1997)の3本は心の映画だったりする。ベルトラン・ブリエが好きなのもアラン・ルドルフに似てるからだ、と断言できるほど好き。その魅力は……やっぱり、臆面のなさだと思う。それは本作でも存分に開花している。

 後年、ルドルフはファンタジックな飛躍とツイストのきいた笑いを用いて、作品に軽快さと奥行きを与えていく。だが『ロサンゼルス・それぞれの愛』の時点では、せいぜいシシー・スペイセク扮するメイドがいきなり上半身裸で掃除をし始めたりするぐらいで、シュールな素ッ頓狂さには乏しい。特に、ジェラルディン・チャップリンが怪演する“憂鬱なスクリューボール・ヒロイン”カレンの人物造形は、ルドルフの趣味とアルトマンからの影響が重苦しく組み合わさった、本作のバランスを象徴するキャラクターだ。

 手放しで誉められる傑作ではないとは思うが、ファンとしてはやっと観ることができて非常に嬉しかったし、ルドルフのよさが随所に表れていて面白かった。やっぱり俳優の扱い方が巧い。中でもキース・キャラダイン、ハーヴェイ・カイテル、ジェラルディン・チャップリンの演技が出色。かつてドン・シーゲルと結婚していたベテラン美人女優ヴィヴェカ・リンドフォースの存在感も強烈だった。『エクソシスト3』(1990)の殺人看護婦といえばピンとくる人もいるだろう。

▼野心溢れるヤンエグに扮するハーヴェイ・カイテル。若い
welcome_to_la_03.jpg

 この作品も、音楽の権利問題で引っ掛かっているのか、アメリカでも大昔にビデオが出たっきりで、DVD化されていない。最近、国内のネット配信テレビ「エンタミレル」で観られると知って、わざわざこの1本を観るためだけに加入した。まあ、そこまで頑張って観る映画かどうかは、その人の思い入れの度合いによる……。


製作/ロバート・アルトマン
監督・脚本/アラン・ルドルフ
撮影/デイヴィッド・マイヤーズ
音楽/リチャード・バスキン
出演/キース・キャラダイン、ジェラルディン・チャップリン、ハーヴェイ・カイテル、サリー・ケラーマン、ローレン・ハットン、シシー・スペイセク、リチャード・バスキン、ヴィヴェカ・リンドフォース、ジョン・コンシダイン、デンヴァー・パイル、ダイアン・アボット

スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://simplydead.blog66.fc2.com/tb.php/182-bd034049
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。