Simply Dead

映画の感想文。

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『わが心のジミー・ディーン』(1982)

『わが心のジミー・ディーン』
原題:Come Back to the 5 & Dime, Jimmy Dean, Jimmy Dean(1982)

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 やばい。傑作。今回のPFFアルトマン特集で観た中で、いちばん凄い映画だった。終映後、思わず放心してしまうほど素晴らしかった。

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〈おはなし〉
 1975年、テキサス州マッカーシー。20年ぶりに再会することになったジェームズ・ディーン・ファンクラブの面々が、なじみの安物雑貨店に集まってくる。今もこの店で働くシシー(シェール)、億万長者と結婚したステラ・メイ(キャシー・ベイツ)、7人目の子を宿しているエドナ・ルイーズ(マータ・ヘフリン)、そして愛するディーンに人生を捧げたファンクラブのリーダー的存在のモナ(サンディ・デニス)。昔から雑貨店を切り盛りする老女フアニータ(スーディ・ボンド)と共に、4人は再会を喜び、在りし日の記憶を思い起こす。「彼」に夢中だった高校時代、会員みんなで記念写真を撮った夜、かつてファンクラブにいた美しい少年ジョー(マーク・パットン)のこと……。

 20年前、モナはジェームズ・ディーンの出演作『ジャイアンツ』にエキストラとして参加し、そのロケ地で「彼」の子を授かった。生まれた男の子はジミー・ディーンと名付けられたが、モナは彼を人前から隠すように育てた……。

 そして現在。それぞれの人生を歩んできた4人の前に、都会風の女ジョアンナ(カレン・ブラック)が現れる。彼女はどうやらファンクラブの元会員だったらしい。その正体とは……?

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 原題にある“5 & Dime”とは、ファイブ(5セント)とダイム(10セント)硬貨で大体の買い物ができるような、昔からある安物雑貨店のこと。映画はその雑貨店を舞台に、現在[1975年]と過去[1955年]、ふたつの時代を行き来する。

 店内の壁には大きな鏡があり、過去を映すシーンは鏡の向こうで展開する。つまり、一種のマジックミラーを挟んで、全く同じふたつのセットが作られているのだ(向こう側の照明をつけると鏡が透けて見える)。過去の記憶という、人間の脳内で曖昧なフィルターのかかった領域を、アルトマンはまさに鏡を通した虚像として映し出す。このアイディアがとても映画的で興奮した。撮影のピエール・ミニョーによる凝りに凝ったカメラワークも素晴らしい。舞台では奥行きや視点、照明設計の問題で、ここまでテクニカルに見せ方を徹底することはできないだろう。

 「映り込みや鏡像というもの、実像を破壊して異なる様々なレイヤーを現実に与える映像に、私は常に魅了される」と、アルトマンは様々な場で公言してきた。この『わが心のジミー・ディーン』では、その独自のセオリーが最もシンプルに、秀逸なかたちで実践され、素晴らしい成果をあげている。演劇の映像化だから、結局は人物をカメラで追い掛けるだけだろう、というこちらの先入観を完璧に打ち壊してくれた。

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 原作はエド・グラツィクによる戯曲。舞台版の演出もアルトマンが務め、キャストメンバーも全く同じだという。『雨にぬれた舗道』(1968)以来のアルトマン作品登板となるサンディ・デニス。これが本格的女優活動の幕開けとなったシェール。まだブレイク前ながら実力は折り紙付きだったキャシー・ベイツ。アルトマンの小品ラブコメディ『パーフェクト・カップル/おかしな大恋愛』(1980)でヒロインを演じた、ヴァン・ヘフリンの姪マータ・ヘフリン。『ナッシュビル』(1976)にも出演した70年代を代表する女優、カレン・ブラック。そして、ベテラン脇役のスーディ・ボンド。それぞれ見事なテキサス訛りを操り、堂に入った芸達者ぶりを見せてくれる。ふたつの時代の年齢差を演じ分けるという難しい課題もしっかりこなしている。シェールの歯切れいい台詞回し、キャシー・ベイツの傍若無人な迫力、カレン・ブラックの存在感と安定した演技力は、見ていて気持ちいい。

 だが本作の見どころは、なんと言ってもサンディ・デニスの演技に尽きる。他人にも自分にも嘘をつき続けてきた女性の表情を、夢見るような風情で演じる様は、まさに凄絶。彼女の演技を見てしまうと、ジュリアン・ムーアの芝居なんて3倍ダビングに思えるほどだ。正直『雨にぬれた舗道』よりも凄い。終盤にいたっては、その表情を見ているだけで涙が出てきた。“アルトマン女優”の真打ちはこの人だったのか、と思い知らされ、打ちのめされた。

 彼女は『イメージズ』(1972)のヒロインにも考えられていたことがあったという。もちろんスザンナ・ヨークも素晴らしかったが、デニス主演の『イメージズ』も全くの別物として観てみたかった。閑話休題。

 どんでん返しを畳みかける物語はちょっとやりすぎな感じもするが、幻惑的な語り口と、女優陣の演技で、120分間をひたすら面白く見せきってしまう。演劇と映画、どちらの愉しさも濃密に溶け合った傑作である。今まで未公開だったのが信じられない。


製作/スコット・ブシュネル
監督/ロバート・アルトマン
原作・脚本/エド・グラツィク
撮影/ピエール・ミニョー
美術/デイヴィッド・グロップマン
編集/ジェイソン・ローゼンフィールド
出演/サンディ・デニス、シェール、カレン・ブラック、スーディ・ボンド、キャシー・ベイツ、マータ・ヘフリン、マーク・パットン

・Amazon.co.jp
本「ロバート・アルトマン わが映画、わが人生」

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