Simply Dead

映画の感想文。

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『BIRD★SHT バード・シット』(1970)

『BIRD★SHT バード・シット』
原題:Brewster McCloud(1970)

brewster_mccloud_poster.jpg

 問答無用の大傑作。作家として絶頂期を迎えたロバート・アルトマンの才気の奔りが全編にひしひしと感じられ、観ていて最高に甘美な気持ちになれる映画。そのバカバカしい狂騒の空虚さも含めて、いとおしい。

 初めて輸入ビデオで観た時の感動は忘れられない。何より衝撃的だったのはラストだ。これまでさんざん勝手な遊びを繰り広げ、随所にミステリアスな要素をちりばめながら、何も回収しない! 物語の主題たる「我らが主人公ブルースター・マクラウドがいかにして人力飛行に挑み、そして墜落したか」を描くことのみ大事であって、後に残るのはフィナーレだけだ。

映画って、
映画って終わっちゃえば終わるんだ、と
そのとき知った。

 どんなに多くの謎を物語に残そうと、どんなに映画を無責任な面白さで満たそうと、約束されたラストを迎えれば映画は必ず終わる。それは「ストーリーの整合性」や「正しい映画の在り方」といった戯言に拘泥しない、アルトマンの強烈な提示だった。描くべきことは描けたのだから、それ以外のことは忘れて結構。その真理に辿りついてしまった作家に、もはや「行き詰まる」などということは有り得ない。

 アルトマンはそんな締めくくり方で、観客全員を「もうサーカスは終わりだよ」と言われて涙ぐむ子供たちに変えてしまう。

 それでもなお、映画は虚構の産物だ、とは言い切らない念の入りよう! 他の出演者たちがサーカス団員の扮装をして、いかにもフェリーニっぽい「映画=虚構」のラストを演じている中、哀れなイカロス……主人公バッド・コートだけは「本当に」死んでいる。アルトマンの映画は、決して観客が胸を撫で下ろせないようにできている。遺作となった『今宵、フィッツジェラルド劇場で』(2006)の不穏に笑えるラストもそうだった。

 そして先日、スクリーンでの再会叶った『BIRD★SHT』は、相変わらず全てがひたすら面白く、そして今度は、何もかもが納得できる映画だった。回収するべき未消化な要素なんてどこにもない。謎なんてどこにもないじゃないか。

 素晴らしい映画だと思う。大好き。

brewster_mccloud_02.jpg

 本作で女優デビューを飾ったシェリー・デュヴァルの初々しい可愛らしさときたらどうだ! 守護天使にして死の使いであるサリー・ケラーマンはまるで女神のよう。主演のバッド・コートはそんな母性的慈愛に見守られるのがよく似合う……『雨にぬれた舖道』(1969)のマイケル・バーンズにも重なる、アルトマン好みのしたたかさと無垢な愚かさを備えた少年性のイコンだ。洒落者の腕利き刑事マイケル・マーフィと真面目な巡査ジョン・シャックが見せる凸凹コンビぶりも絶妙。もちろん鳥類学者に扮したルネ・オーベルジョノワの怪演も忘れちゃいけない。幕間に鳥類の講義をぶちながらだんだん鳥化していくという難役(笑)を見事にこなしている。

 こんなにおちゃらけた映画なのに、クライマックスの飛行シーンは結構凄い。撮影はベテランのラマー・ボーレンと、新人ジョーダン・クローネンウェスが共同で担当。後年、クローネンウェスは『ブレードランナー』(1982)の撮影監督を手がけ、その名を馳せる。

brewster_mccloud_poster02.jpg

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〈おはなし〉
 テキサス州ヒューストンの観光名所アストロドーム。そこに隠れ住む青年、ブルースター・マクラウド(バッド・コート)は、いつの日か自分で作った人工翼で空を飛ぶことを夢見ていた。彼は、背中に翼を切られたような傷跡のある女ルイーズ(サリー・ケラーマン)の協力で、着々と計画を進めていく。後に残るのは、意地悪な邪魔者たちの死体の山と、鳥のフン。

 不可解な連続殺人事件を捜査するため、サンフランシスコから腕利き刑事シャフト(マイケル・マーフィ)が乗り込んでくる。しかし解決の糸口はなかなか掴めない。そんな中、シャフトは遺体に必ず付着している鳥のフンに目をつけるが……。

 ある時、ブルースターはドームの案内係として働く、ちょっと風変わりな女の子スザンヌ(シェリー・デュヴァル)と親密な仲に。その時から、ブルースターの運命は少しずつ変わり始めた。

brewster_mccloud_01.jpg


製作/ルー・アドラー
監督/ロバート・アルトマン
脚本/ドーラン・ウィリアム・キャノン
撮影/ラマー・ボーレン、ジョーダン・クローネンウェス
編集/ルー・ロンバルド
音楽/ジーン・ペイジ
出演/バッド・コート、サリー・ケラーマン、シェリー・デュヴァル、マイケル・マーフィ、ジョン・シャック、G・ウッド、ジェニファー・ソルト、ルネ・オーベルジョノワ、ステイシー・キーチ

・Amazon.co.jp
本「ロバート・アルトマン わが映画、わが人生」

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コメント

“I”が抜けてますよー

  • 2010/05/25(火) 22:56:11 |
  • URL |
  • 通りすがり #-
  • [ 編集]

>通りすがりさん
はじめまして。ご注意ありがとうございます。
でも、邦題はこの表記でいいのです。
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=17503
なぜかは映画本編を観れば分かります。今年7月にリバイバル公開されるようなので、ぜひお確かめください。
当時の宣伝部はなかなか秀逸なことをするな、と思いました。

  • 2010/05/27(木) 22:18:39 |
  • URL |
  • グランバダ #-
  • [ 編集]

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【PFFのロバート・アルトマン特集】[ 2007/07/30 at 渋谷ユーロス

  • 2007/08/05(日) 00:45:30 |
  • 白痴浪漫の傀儡館

アルトマン特集上映。

【PFFのロバート・アルトマン特集】[ 2007/07/30 at 渋谷ユーロス

  • 2007/08/05(日) 00:52:07 |
  • 白痴浪漫の傀儡館

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【PFFのロバート・アルトマン特集】[ 2007/07/30 at 渋谷ユーロス

  • 2007/08/05(日) 00:55:27 |
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