
〈おはなし〉
秋葉川温泉いちの売れっ子芸者、しめ香(叶順子)。器量良しながら口のきけない彼女は、他の芸姑とは「ひと味違う」と評判で、多くの男たちが彼女目当てに温泉へとやってくる。ところが実はオシというのは真っ赤な嘘。その方が客受けがいいからと彼女が考えついた計略だった。
次から次へと客をとり、一心不乱に金を貯め込むしめ香。その肉体の虜となり、彼女をモノにしようとする男どもはひきもきらずだが、妾になるのは性に合わない。そんな彼女にも、本物の恋が訪れるのだが……。
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大映のスター女優・叶順子が主演した、温泉芸者シリーズの第1作。「映画秘宝/セクシーダイナマイト猛爆撃」で読んで以来、ずっと観たかった映画で、ラピュタ阿佐ヶ谷の「映画×温泉」特集でやっと観ることができた。叶順子の主演作って観たことなかったんだけど、もうこれ1本でファンになってしまった。可愛いし。でも本作から数えて何作か出た後に引退してしまったのだという。この映画のヒットのおかげで温泉芸者モノの看板スターにされそうになったというから、まあ賢明な判断かもしれない。
映画は想像以上にあけすけな内容で面白かった。別にヒロインの全裸シーンとかベッドシーンがあるわけじゃないけど、完全に温泉芸者=売春婦という割り切った話になってて、まったく悪びれるところなく話が進んでいく。不謹慎だけど大らか。そういうのが許される時代だったということだけど、いっそ清々しい。勉強にもなるし。一応お約束として取って付けたような教訓的オチは待っているけど、何ら反省を促すものではない。
富岡壮吉監督のテンポよくコミカルな演出も快調。シナリオの構成は単純だけど退屈させずに見せきる。「カタワは普通と具合が違うというので人気がある=金が稼げる」と知った主人公が、最初はびっこになろうと橋の上から飛び下りたりするギャグが可笑しい。もう今では絶対作れない映画だろうな。当時でも人権蔑視だと問題になったとか(当たり前だ)。「あたしのなんて人並みだと思うんだけど、オシってだけで具合がいいとか評判たっちゃって」なんて台詞にもいちいちキックがあって面白い。
がめついけど憎めない、懸命だけど愚かなキャラクターを、叶順子があっけらかんと演じていて、すこぶる魅力的。ふくよかでコケティッシュな美貌が、陽性のキャラクターと相まってフルに活かされたハマリ役だ(まあ本人的にはハマリすぎて危険だと思ったのかもしれないけど)。
ドスケベ面全開の助演男優陣も素晴らしい。うだつの上がらない置屋の主人役の中村鳫治郎、山を叩き売った金で幾日もヒロインと宿に引き込もる老マタギ役の左卜全が最高。
次は『温泉あんま』(1963)が観たいなあ。
監督/富本壮吉
原作/斎藤米二郎
脚本/下飯坂菊馬
撮影/小原譲治
美術/井上章
音楽/広瀬健次郎
出演/叶順子、川崎敬三、中村鳫治郎、左卜全

