Simply Dead

映画の感想文。

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『アポカリプト』(2006)

『アポカリプト』
原題:Apocalypto(2006)

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 いや凄かった。始まってしばらくは「変なところで期待しすぎたかな」とか思ったが、やっぱり圧倒された。今こんな映画を作る必要は全くないし、こんな企画を通すために越えなきゃいけないハードルは考えただけで途方もないし、それをまんまと実現させているメル・ギブソン先生の馬力たるやとんでもない。しかもムチャクチャ見応えある残酷アクション大作に仕上げている。誇大妄想的な使命感をもって映画というものを何か原初的な場所へ立ち返らせようと驀進するギブソン先生の闇雲なパワーには素直に参りましたと言うほかない。実現してしまったものはもう誇大妄想とは呼べないから。時代考証やら文化的誤解やら、真に受けると危険な部分はあとで観客それぞれが勉強すればいい(劇場入り口で「正しいマヤ知識」みたいな冊子でも配ってくれればいいのに……パンフでもろくに間違いには触れてないんだから)。観ている間はひたすら血沸き肉躍る映画の躍動を体感するだけで、138分間があれよあれよと過ぎていく。『アギーレ/神の怒り』(1972)と合わせて観たい1本。

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 ノースター、聞いたこともない言語、シンプルなストーリーでこれだけハートを持っていかれるということは、やはりギブソン先生の映画修練の力がハンパじゃないのだ。中盤、巨大な神殿のてっぺんで超かっこいい人たちが執り行う大残酷儀式の盛り上がりに抵抗できる観客がいるだろうか?(まあいても大丈夫ですけど)。そこから後半、ひたすら走って飛んで泳いで殺してまた走るクロスカントリー版オデュッセイアから、ラストシーンに至るまで、上がったテンションがまるで落ちない。CG全盛の風潮に否を叩き付けるがごとく、体を張ったアクションのつるべうちで観客の襟首を掴んで引きずり回す。『ブレイブハート』(1995)以来となるギブソン先生の野蛮なアクション作家としての手腕が遺憾なく発揮されていて、凄く楽しい。

Apocalypto02.jpg

 CGを駆使した絶対安全の絶体絶命アクションに慣れきった、腑抜けた観客の前にギブソン先生が生贄の生首のごとく差し出すものは、映画的興奮の原点回帰。すなわち生身のアクション、実物大のスペクタクル、過剰なエキゾティズム、レイティング上等の残酷性、そして偏ったリアリティ。マヤ語によるダイアログの徹底と、役者の肉体そのものが放つ説得力だ。特に主人公と敵対する帝国側の面構えがほぼ100%完璧で素晴らしい。特にいやらしい憎まれ役のヘラルド・タラセーナは絶妙すぎて「こういう人が出なくなったから最近の映画はつまらないんだな!」と心底から思った。さっきも書いたけど、ピラミッド頂上で血まみれの儀式を楽しむ人たちのかっこよさたるや尋常ではない。司祭もいいけど半笑いの王が最高だった。ほとんど『ヘルレイザー』並のインパクト。あと、ヒロインが凄く可愛くて綺麗(やや真理アンヌ似)なのはさすがギブソン先生! と思った。

▼素晴らしすぎる名悪役G・タラセーナ
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 でも最初は「えっ、HD撮りなの!?」と意外なところで面食らったりした。光量の少ないジャングルでの撮影を可能にするため、本作ではパナヴィジョンが開発した最新デジタルカメラ“ジェネシス”が採用されている。フィルムなら多量のライティングを必要とする状況でも、自然光だけで十分な明るさが映像に得られるそうだ。実際、映像のクオリティはフィルムとほとんど遜色ない。ただ、デジタル特有の弱点はある。残像がソフトにぼやけた感じに流れてしまうので、本作のようにアクションの多い作品の場合、乱暴なスピード感が出なくなってしまう。パンフレットなどでは「おかげでスピード感が増した」とか書いてあるが、逆だと思う。その辺はまだ改善の余地ありかなと感じた。

 観ながら思い出したのは、同じオーストラリア人のロルフ・デ・ヒーア監督が作った『十艘のカヌー』(2006)。白人の入植地となる遥か以前のオーストラリアを舞台に、先住民たちのドラマを淡々とユーモラスに描いた作品で、台詞は全編アボリジニ語。これも観客を日常とは無縁の別世界に連れていく秀作だった。もしギブソン先生が観ていたら、「俺だったらもっとアクション満載にするのになあ」とか思ったかもしれない。ていうか、なんでいつもオーストラリアに“帰らない”のだろう? やたらスケールのでかいものを作りたがったり、ひとつの思想や文化が弾圧の末に滅びゆく題材に執拗にこだわったり、だったらオーストラリアでアボリジニの映画でも撮ればいいのに、絶対に戻らない。もし戻るとしたら、何かさらに自身の深い闇へと潜って行くような決定打が見られるのでは、という気がしている。無難な自伝映画など作ってほしくないものだ。

〈このあと少しネタバレ〉


 冒頭、「文明は自ら滅びるものだ」と字幕で示しておいて、ラストでダメ押しに(時代的にはありえない)スペイン人の到来が描かれる。カソリック原理主義者であるメル・ギブソンは、本作でも無理やりキリスト教を登場させているが、そこでは主人公一家が助かることと引き替えに、南米大陸に侵略と蹂躙が訪れる皮肉がしっかりと示されるのだ。そこがちょっと意外といえば意外だった。もっとひどい優越思想の表れたオチになるのかと思っていたので。いくらギブソン先生とはいえ、西欧文明/キリスト教の到来をはっきり破壊と終焉の象徴として提示するだけの分別は持ち合わせているんだな、と思った。まるで彼らが退廃の都へ天誅を下しにやってくるように思わせるところは問題だけど。

・Amazon.co.jp
『アポカリプト』DVD

製作/メル・ギブソン、ブルース・デイヴィ
監督/メル・ギブソン
脚本/メル・ギブソン、ファラド・サフィニア
撮影監督/ディーン・セムラー
プロダクションデザイナー/トム・サンダース
衣装/マイエス・C・ルビオ
編集/ジョン・ライト
音楽/ジェームズ・ホーナー
出演/ルディ・ヤングブラッド、ダリア・ヘルナンデス、ラウール・トルヒーヨ、ヘラルド・タラセーナ、ジョナサン・ブリューワー、モリス・バード、ヒラム・ソト、フェルナンド・ヘルナンデス・ペレス

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