Simply Dead

映画の感想文。

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『Fay Grim』(2006)

『Fay Grim』(2006)

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 90年代前半に一世を風靡したハル・ハートリー監督の佳作『ヘンリー・フール』(1997)の、まさかの続編。中身はなんと世界を股にかけたスパイアクションスリラーだ。篠崎誠監督がよく冗談まじりに言っている『おかえり』(1995)の続編企画『おかわり』を本気でやったらこういう感じか……とか思ったりした。

 主人公フェイ・グリムに扮するのは、やはり90年代にインディーズ映画界の女王として名を馳せたパーカー・ポージー。さらに、弟サイモン役のジェームズ・アーバニアック、息子ネッド役のリーアム・エイクン、そしてもちろんタイトルロールを演じたトーマス・ジェイ・ライアンら、前作のキャストが勢揃いしている。『シンプルメン』(1993)のエレナ・レーヴェンソーンも登場し、ジェフ・ゴールドブラムやサフロン・バロウズといった有名キャストも参加。さながら同窓会めいた賑やかさと共に、冗談めかしていながらストレートな生真面目さを貫く、ハートリーならではのペーソス溢れる作品になっている。賛否は分かれるだろうが、意表をつくかたちで健在ぶりを示した力作として、一見の価値はある。ぜひ日本公開してほしい。

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〈おはなし〉
 かつて志村けんのコントのようなプロポーズシーンを演じ、流れ者のあらくれ文士ヘンリーと結婚してしまった女、フェイ・グリム(パーカー・ポージー)。夫がとある事情で姿を消してからは、息子ネッド(リーアム・エイクン)とふたり暮らしだ。一方、天才詩人として大成した弟のサイモン・グリム(ジェームズ・アーバニアック)は、ヘンリーの国外逃亡を助けたかどで刑務所行きに。

 ある時、フェイは編集者のアンガス(チャック・モンゴメリー)から、ヘンリーの本「告白」を出版しないかという誘いを受ける。誰が見ても駄文の集積であるそれは、今や天才詩人サイモンが身を呈してかばった男の唯一無二の著作であり、話題作だった。しかし、ノート8冊分の原稿はヘンリー本人と共に消えてしまっていた。

 その日、フェイが帰宅すると、CIA局員フルブライト(ジェフ・ゴールドブラム)が待ち受けていた。彼の話によるとヘンリーは数々の政治工作に関わった国際スパイであり、ヘンリーが書き記したノートを狙って各国の工作員が動き出しているという。そして、ヘンリー自身は外国で死んだ、と。

 フェイは信じられぬまま、遺品のノートを受け取りにパリへ。そこで数人のスパイたちの接触を受けた彼女は、否応なくノートの争奪戦に巻き込まれていく。

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 その頃、サイモンはCIAの手引きで釈放され、アンガスと共に秘密裏に入手した「告白」の1冊の翻訳を急ぐ。おそらくヘンリーがイスタンブールから息子宛てに送ってきたスケベなスライドフィルムのおもちゃも、何らかの手掛りに?

 はたしてヘンリー・フールとは何者だったのか……そして本当に、彼は死んだのか。フェイの冒険はさらに加速する。

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 何たってパーカー・ポージーがいい。エキセントリックなクセ者女優という従来のイメージを払拭するかのように、巻き込まれ型ヒロインをひたむきに演じている。もちろん優れたコメディエンヌとして、とんでもない下ネタギャグもさらりと演じてみせるが、同時にものすごくエロティックな見せ場でもある。ヒントはバイブ付き携帯電話(クイズになってない)。冗談はさておき、およそ冗談としか思えない設定から入っていくこの映画で、これほどシリアスで美しいパーカー・ポージーの表情をふんだんに見られるとは思わなかった。誇張に走らない、彼女本来の魅力が存分に引き出されている。黒のコートに身を包んだビジュアル的なかっこよさも見どころ。

 先進諸国の政治工作とテロリズムとの関係を、故意に安っぽく茶化して最後まで突っ走るのかと思いきや、やがて映画のテーマは「愛」というハートリー終生の主題へと移行していく。「ヘンリー・フールは何者か」「本の中身は何なのか」というミステリーも、いつしか「フェイ・グリムはヘンリー・フールを愛しているか?」という一点を問う物語に変わっていく。この臆面のなさ、ひねくれているようで青くさいほどストレートな世界観が、ハートリーらしさだと思う。テロリストが大真面目な口調で「Do you love him?」とヒロインに尋ねる場面は、やっぱり感動的なのだ。政治的な部分で最後まで笑い飛ばせない深刻さも、監督にとって今この時代にはリアルな真情らしい。

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 海外ロケを敢行し、銃を構えたスーツの男女が暗躍するスタイリッシュな作品世界が、なんといっても魅力的。カメラマンのサラ・コーリーが捉えたシャープな映像も楽しい。全編、斜めに傾いだ構図を守り、サスペンスフルな雰囲気をベタに表現している(でも『バトルフィールド・アース』みたいにイヤな感じはしない)。とはいっても何せハル・ハートリーの映画なので、目の覚めるアクション演出を見せてやろうという意欲はなく、トンチでうまく逃げている。お得意のフィジカルな暴力描写も封印気味。エスピオナージを描く部分は能書き説明台詞のオンパレードで、字幕なしで観るのは正直ツライ。ジェフ・ゴールドブラムのような芸達者がいなければ、到底もたなかっただろう。

 名だたる助演陣の中で特によかったのは、謎の金髪ロシア人女性に扮するエレナ・レーヴェンソーン。ハートリー作品のファンなら、彼女の登場はとても嬉しいはず。ポージーと並んで、気心の知れた演技を見せてくれる。

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監督・脚本・編集・音楽/ハル・ハートリー
撮影/サラ・コーリー
衣装/アネット・グーザー
出演/パーカー・ポージー、ジェフ・ゴールドブラム、ジェームズ・アーバニアック、サフロン・バロウズ、エレナ・レーヴェンソーン、ハラルト・シュロット、リーアム・エイクン、アナトール・トーブマン、二階堂美穂、トーマス・ジェイ・ライアン
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コメント

はじめまして

この映画、面白かったんですけど、筋を追うのが大変で、色々検索していたら、こちらにぶちあたりました。日本でこの映画について書いているのって、こちらだけみたい?よろしかったらTBさせてください!

  • 2007/10/21(日) 21:50:47 |
  • URL |
  • chuchu #-
  • [ 編集]

はじめまして

TBご遠慮なくどうぞ。『Fay Grim』、面白かったですよね。日本語でレビューを書いてる方は、探せば他にもちらほらいると思いますが、まあ確かに多くはないかも。日本でもちゃんと公開して、色んな人に観てほしいんですけどね……

>筋を追うのが大変で
僕もかなり苦労しました。chuchuさんの方がちゃんと映画を最後まで読み取れていて素晴らしいです(笑)。

  • 2007/10/23(火) 22:44:22 |
  • URL |
  • グランバダ #h1buydM2
  • [ 編集]

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