原題:Romanzo Criminale(2005)

イタリア映画祭2007出品作品。70〜90年代にかけて、暗黒街を牛耳るギャングとしてのし上がって行く若者たちの姿を描いた、青春群像劇風のピカレスク・ロマン。ギャング版『若者のすべて』とでもいうべき、見応えある作品だ。キム・ロッシ・スチュアートを初めとする豪華キャストを揃え、スピーディな展開で146分間を一気に見せきる。
最初は観るつもりじゃなかったけど、アンナ・ムグラリスが主要キャストで出ていると知って、慌てて予定に入れた。シャネルのモデルもつとめる絶世の美女だけど、個人的にはクロード・シャブロル監督の秀作『ココアをありがとう』(2000)で、にわか探偵となるヒロインを可愛らしく演じていたのが印象的だった。本作ではギャングと刑事の双方に愛される情婦パトリツィアを巧演。すっかり貫禄がついていて、大人の色香を振り撒いていた。
▼『犯罪小説』のアンナ・ムグラリス

基本はあくまで、ガイ・リッチー作品のように渾名で呼び合う男前の悪党どもが、メロドラマチックに死んでいくギャング映画である。しかし、題名のようにまるっきり架空のクライム・ストーリーではなく、70〜90年代のイタリア国内の社会情勢を密接に絡めた物語であるところが面白い。マルコ・ベロッキオ監督の『夜よ、こんにちは』(2003)でも描かれたテロ集団「赤い旅団」によるキリスト教民主党党首の誘拐殺害事件や、大量死傷者を出したボローニャ爆弾テロ事件などがフィーチャーされ、政府とテロリスト組織の対立にギャングたちが巻き込まれていく図式が浮彫りにされる。といっても、犯罪の温床や要因として社会問題を取り上げるのではなく、初めから裏社会に生きる犯罪者たちがどのように社会と関わっていったかを描いているので、無粋な感じはしない。ちょっとマイケル・マンの映画を思い出した。
監督は俳優として長いキャリアを持つミケーレ・プラチド。ジャーロ・ファンには『コリンヌ・クレリー/濡れたダイヤ』(1976)や『The Pyjama Girl Case』(1977)などでおなじみだろう。今回の映画祭で上映された『カイマーノ』(2006)にも出演するなど、現在も精力的に活動中だ。本作『犯罪小説』で見せる演出ぶりは、ひたすらスピーディでテンポがいい反面、人間関係が飲み込めなかったり、切り返しを多用するカッティングが単調に映る部分もある。が、役者の魅力をオーソドックスに引き出す技は、さすがに巧い。細かなディテールの散りばめ方も、映画作りが分かっているという感じ。時代風俗やノスタルジーに全く固執せず、とにかく人物のドラマに焦点を置いた演出が潔い。撮影監督のルカ・ビガッツィはフィルムにブリーチバイパスを施し、色褪せたルックでそこはかとなく時代性を出している。
▼演出中のミケーレ・プラチド監督

非常にオーソドックスな娯楽作だが、キャスティングが何しろ完璧なので、それだけで長尺を飽きずに見ていられる。キャラクター選びが的確なのだ。ギャング集団の中で特に光っているのは、濃いルックスが強烈なリバネーゼ役のピエルフランチェスコ・ファヴィーノ。アンナ・ムグラリスとは対照的に、等身大のヒロインを演じるジャスミン・トリンカの好演も印象的。キム・ロッシ・スチュアートとのカップリングもさまになっている。
監督/ミケーレ・プラチド
原作/ジャンカルロ・デ・カタルド
脚本/ジャンカルロ・デ・カタルド、ステファノ・ルッリ、サンドロ・ペトラリア、ミケーレ・プラチド
撮影/ルカ・ビガッツィ
美術/パオラ・コメンチーニ
衣装/ニコレッタ・タランタ
音楽/パオロ・ブオンヴィーノ
出演/キム・ロッシ・スチュアート、アンナ・ムグラリス、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、クラウディオ・サンタマリア、ステファノ・アッコルシ、ジャスミン・トリンカ

