Simply Dead

映画の感想文。

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『カイマーノ』(2006)

『カイマーノ』
原題:Il Caimano(2006)

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 イタリア映画祭2007出品作品。ナンニ・モレッティ監督の新作は、一風変わった構成で見せる異色の秀作だった。

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〈おはなし〉
 B級映画のプロデューサー、ブルーノ(シルヴィオ・オルランド)は破産寸前。かつて自作の主演女優だった妻パオラ(マルゲリータ・ブイ)との結婚生活も終焉を迎えようとしている。

 そんな時、ブルーノは過去の作品の上映会で、映画監督志望の若い女性テレーザ(ジャスミン・トリンカ)から一冊のシナリオを手渡される。起死回生の企画を探していた彼は、出だしだけ読んで製作にとりかかってしまう。ところがよくよく読んでみれば、それは多額の負債隠しのために政界に乗り出し、首相の座にまで登りつめた“怪物”ベルルスコーニを描いた物語だったのだ!

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 おそらく監督は、まずフェリーニの『8・1/2』(1963)タイプの人情喜劇が作りたくて、主人公に「最も不向きな題材」を撮らせたら秀逸なコメディになると思ったのだろう。その一方、まだ誰もマトモにやっていないベルルスコーニ批判(劇中で何度も語られるが、ストレートにやるにはリスキーな企画だ)も撮りたくて、これだ! となったのではなかろうか。B級映画人がお堅い政治劇を作る羽目になるという設定は、シネマ・ヴェリテとしては面白い趣向だし、ラジカルな政治風刺をやるにしても、劇中劇なら罪がない。どっちにとってもいいアイディアだと踏んだに違いない。

 モレッティが凄いのは、そこで変に「まとまりのいい」映画を作らなかったことだ。結果として『カイマーノ』は、ラジカルな人情喜劇、実験的な実録政治モノ、そして観客を試す娯楽作として完成した。何せ、劇中劇でベルルスコーニ役を演じる俳優が3人もいるのだ(本人の映像も含めると4人)。大抵の人は混乱する。

 様々な点で中途半端だという批評もあるだろうが、ここまでイレギュラーなかたちのエンタテインメントをしれっと差し出してしまうのは、やはり才人のワザと言うほかない。実際、ドラマそのものは非常にすんなり見られるし、堅苦しさとは無縁の仕上がりだ。それでいて辛辣な政治批判も徹底して行っている。「そんな無茶な構成で、ちゃんと映画になるのか?」と問われても、「なる!」と自信を持って答えられる人間の作った映画という気がした。そんな秀作は少ない。

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 役者の力も大きい。中でもやはり、しがない映画製作者に扮するシルヴィオ・オルランドが凄くいい。人間味溢れる情けないキャラクターを絶妙に演じ、即座に観客の心を奪ってしまう。彼の妻パオラを演じるマルゲリータ・ブイも素晴らしく魅力的。主人公に災厄をもたらすテレーザ役のジャスミン・トリンカは、映画祭の舞台挨拶にも登場したが、役柄同様にクレバーで可愛らしいユーモリストだった。ベテラン俳優ミケーレ・プラチドの怪演も強烈。現実のベルルスコーニを除く、全てのメインキャラクターに監督の愛情が注がれており、適度な距離感を保った眼差しが快いドラマを生み出している。

 それにしても、映画祭で適当に観た7本のうち、3本は映画のスタッフが主人公。流行ってるのか? なんとなく想像力に欠ける気がして好きじゃないのだけど、3本ともちゃんと面白かったので、考えを改めかけた。

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監督/ナンニ・モレッティ
原案/ナンニ・モレッティ、ハイドルン・シュリーフ
脚本/ナンニ・モレッティ、フランチェスコ・ピッコロ、フェデリカ・ポントレモーリ
撮影監督/アルナルド・カティナーリ
美術/ジャンカルロ・バジリ
編集/エズメラルダ・カラブリア
音楽/フランコ・ピエルサンティ
出演/シルヴィオ・オルランド、マルゲリータ・ブイ、ジャスミン・トリンカ、ミケーレ・プラチド、ジュリアーノ・モンタルド、イェジー・スツール、ナンニ・モレッティ

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コメント

シルヴィオ・オルランドはよかったですね。
いやみでなく、人間的にもにくめず、子どもの世話まで一生懸命して、なのに奥さんはさっさとお楽しみで。かわいそうでしたー

  • 2007/05/17(木) 23:42:46 |
  • URL |
  • マヤ #mQop/nM.
  • [ 編集]

シルヴィオ・オルランドはダメな感じも凄く巧かったですね。奥さんの方も相当いい女だと思いました。
ベルルスコーニは同じくメディア王のチェッキ・ゴーリと共同で映画のプロデュースもしてるんですよね。アカデミー外国語映画賞をとった『エーゲ海の天使』(1991)もその1本。

  • 2007/05/18(金) 18:23:47 |
  • URL |
  • グランバダ #h1buydM2
  • [ 編集]

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