Simply Dead

映画の感想文。

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『結婚演出家』(2006)

『結婚演出家』
原題:Il Regista di Matrimoni(2006)

registadimatrimoni_poster.jpg

 イタリア映画祭2007出品作品。鬼才マルコ・ベロッキオが、迷える映画監督を主人公に描く不可思議なコメディ。「こんなことあったら面白いなあ」という映画作家の妄想をそのまま野放しにして1本の映画にしたらどうなる? どうなると思うんだ、えぇ!? と詰め寄られているような、愉快な怪作(快作)だった。

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〈おはなし〉
 著名な映画監督フランコ(セルジョ・カステリット)は、娘が嫁いだばかりで落ち込み気味。新作のオーディションや準備も放ったらかして、気が付くとシチリアの浜辺にたどり着いていた。

 フランコは浜辺で、結婚式の記念ビデオを撮影する一団と出くわし、ディレクターの好意で彼の家に居候することになる。そこへ、街の屋敷に住む貴族グラヴィーナ(サミー・フレイ)がやってきて、フランコはひょんなことから彼の娘の結婚式ビデオを演出する羽目に。

 教会のミサへ赴き、グラヴィーナの娘ボーナ(ドナテッラ・フィノッキアーロ)と対面したフランコは、彼女の話を聞いて驚く。先日オーディション会場まで自分を訪ねてきて、会わないまま消えてしまった謎の美女とは、ボーナのことだったのだ。彼女は家名を守るため望まぬ結婚を強いられようとしていた。

 瞬時に惹かれ合うフランコとボーナ。はたして彼は、苦境に佇む美女を救うヒーローとなれるのか?

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 ほとんど妄想の数珠繋ぎと言って差し支えない内容で、全編夢だと言われてもおかしくない。逆にその方が納得しやすいくらいだ。でもベロッキオはそれらを辛うじて現実と捉えられるように辻褄を合わせ、陳腐スレスレのストーリーを巧みに構成してしまった。とんでもない大ボラ吹き野郎である(誉め言葉)。ラストシーンでは前作『夜よ、こんにちは』(2003)でも見せた幻想と現実の混濁を鮮やかに現出してみせるが、ここではより楽天的で洒落たオチを決めている。作品全体を見ても、こんなに肩の力が抜けたベロッキオ作品は今まで観たことがなかった。

RegistadiMatrimoni_01.jpg

 異郷に流れ着いたフィクション作家が地元の騒動に巻き込まれ、自らフィクショナルな冒険物語に身を投じるというプロットは、マイク・ホッジス監督の『PULP』(1972)も思わせる。この手のジャンルは失敗すると悲惨だが、ベロッキオほど一筋縄では行かない作家の手にかかると、やっぱりおかしな映画になっていて面白かった。当然ながらセルフパロディ的な要素もあり、そこかしこに自虐的なユーモアが散りばめられている。おせっかいな監督助手がオーディションに来る女優に「監督に会ったら、自分からフェラチオを申し出てくれ。慣例なんだ」というシーンは、『肉体の悪魔』(1986)の一場面に絡めたギャグだろう。ひたすら弧高を貫いてきたベロッキオの視点から、映画監督というものへのパブリックイメージ、過去の名作映画の引用と影響、現在のイタリア映画界への見解がシニカルに語られているのも興味深い。

 また、ベロッキオ作品特有のホラー映画的な過剰さは、さらに派手派手しく、コミカルに増幅されている。音楽・SEのバカバカしいほどの盛り上がりが可笑しい。特に主人公が修道院の階段を上っていくシーンで2回も流れる♪デロンデロンデロンデロンというおどろおどろしい音楽がスゴイ。この上なく作家性の強い監督なのに、センスは80?90年代のホラー映画だったりするところがベロッキオの謎のひとつだ。

 主人公に扮するのは、イタリアで最も知名度のある俳優の一人、セルジョ・カステリット。悩める監督ぶりが板についていた(映画祭では彼が監督した21分の佳作『私です』も併映された)。

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 そして、こんなに遊んだ映画でも、魔性をおびたヒロインをしっかり美しく撮っているのは、さすがベロッキオ。演じるドナテッラ・フィノッキアーロの謎めいた存在感からは目が離せなくなる。フランスの名優サミー・フレイの風格溢れる演技も見ものだ。


製作・監督・脚本/マルコ・ベロッキオ
撮影監督/パスクァーレ・マーリ
美術/マルコ・デンティチ
衣装/セルジョ・バッロ
音楽/リッカルド・ジャーニ
出演/セルジョ・カステリット、ドナテッラ・フィノッキアーロ、サミー・フレイ、ジャンニ・カヴィーナ、ブルーノ・カリエッロ、マウリツィオ・ドナドーニ

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