Simply Dead

映画の感想文。

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『ハッピーフィート』(2006)

『ハッピーフィート』
原題:Happy Feet(2006)

happyfeet_01.jpg

 悪い意味ではなく、ものすごく露骨な性愛教育映画だった。親御さんはぜひお子様連れで見ていただきたい。のみならず、差別問題にしろ教育問題にしろ環境問題にしろ、全体に啓蒙的。特に後半では、単に明るく楽しいだけの娯楽作を観に来た客が面食らうような展開が待っている。といっても辛気臭くはなく、あくまでファンタジックな寓話であり、問題意識は言外に汲むものとして巧みに処理している。

 本作がアカデミー長編アニメーション賞を獲ったのも、作品的な完成度やアニメーションとして優れているかということより、アル・ゴアの『不都合な真実』(2006)が長編ドキュメンタリー賞を受賞したのと同じ流れだろう。もちろん十分に面白いのだけど、作品的にはどう見ても『カーズ』(2006)の方が上だ。

 おそらく『ハッピーフィート』の乱暴さは意図的で、救いようのない将来の不安をご都合主義的なハッピーエンドで終わらせてしまうのも、「それじゃ現実は解決しねーよ」と観客に悟らせるためだ。ジョージ・ミラー監督独特のシニシズムは本作でもしっかり際立っている。別に生ぬるいファミリー映画作家に転向したわけではないから、『マッドマックス』シリーズのファンはご安心を。

 そしてこれは紛れもなくオーストラリア映画でもあった。自然と人間(文明)の対立、人知では計り知れぬ大自然の中で神経症に陥るちっぽけなヒトという構図は、オーストラリア映画で昔から繰り返されてきたテーマだ。その図式をひっくり返したのが『ベイブ』(1995)や本作である。映画の後半で主人公マンブルが強いられる精神的苦痛は、大自然によって死へと導かれる人間を描いた『ロング・ウィークエンド』(1978)の焦燥と重なる。そこで映し出される自然と人間の“断絶”……そのシビアさは筋金入りだ。ジョージ・ミラーはやっぱり、愛と共感と思いやりに溢れた『ベイブ』ではなく、衝突と混沌に満ちた『ベイブ都会へ行く』(1998)の人だった。

 また、前半の青春映画風のシークエンスも、非常にオーストラリア映画的である。卒業式を迎えて最後の青春を謳歌するペンギンたちは、閉鎖的なコミュニティに暮らす郊外の若者像だ。彼らの享受するカルチャーはなぜかリアルタイムではなく、近過去のノスタルジックなものばかり。今時ディスコサウンドを臆面もなく楽しんだりする自己卑下的なセンスも『プリシラ』(1994)や『ラブ・セレナーデ』(1996)でお馴染みだ。そのテの悪趣味を全世界的に通用させた慧眼の持ち主はバズ・ラーマンだが、ジョージ・ミラーも本作で後輩の方法論に倣い、大っぴらにアース・ウィンド&ファイアーをフィーチャーしたりする。それがリバイバルとか再発見ではない、田舎センスであるところが重要だ。

 もちろんニコール・キッドマンもヒュー・ジャックマンも、ハリウッドスターではなく、オーストラリア映画人として本作に参加している。映画の開巻は彼らに飾ってもらわねばならなかった。『ベイブ』から続くヒューゴ・ウィーヴィング、マグダ・ズバンスキーの登板も同様。(ところでキッドマンの可愛い母親ぶりは絶品。『アイアン・ジャイアント』の主人公の母親ぐらいマザコンの心を捕えると思う)

happyfeet_ramon.jpg

 非オーストラリア人キャストの中ではブリタニー・マーフィーの歌唱力に驚かされた。まあでもきっと歌えるんだろうな、声優歴もいちばん長いし(ブレイク前から『キング・オブ・ザ・ヒル』のレギュラーキャストを務めている)、と思っていたらやっぱり凄く巧かった。ロビン・ウィリアムズは相変わらず。ヒスパニックのラモンはいいけど、変な教祖の二役やる意味がよく分からない。マンブル役のイライジャ・ウッドは、どうも『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ以降、心身共に苦痛を受けてボロボロになるキャラが定着しているような気がする。

「いかにしてディズニーと差別化を図るか」という避けがたい意識もありつつ、結果として『ハッピーフィート』は想像以上にエキセントリックな映画になったと思う。映像的には文句なしだ。特に水中での群舞シークエンスは素晴らしい。他にもいろいろと盛り込んでいる中で、やっぱり最初にも書いたけど、ペンギンを考えうる限りセクシーな動物として描いた点は評価したい。これでもかと盛り込まれたセックスアピールには、もう笑うほかない。

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『ハッピーフィート』特別版(2枚組)DVD


製作・監督/ジョージ・ミラー
共同監督/ジュディー・モリス、ウォーレン・コールマン
脚本/ジョン・コリー、ジョージ・ミラー、ジュディー・モリス、ウォーレン・コールマン
音楽/ジョン・パウエル
振付/セヴィアン・グローバー、ケリー・アビー
スーパーバイジング・アート・ディレクター、ライブアクション視覚効果監修/デイヴィッド・ネルソン
美術/マーク・セクストン
レイアウト&カメラ・ディレクター/デイヴィッド・ピアーズ
アート・ディレクター/サイモン・ホワイトリー
アニメーション・ディレクター/ダニエル・ジャネット
デジタル監修/ブレット・フィーニー
声の出演/イライジャ・ウッド、ブリタニー・マーフィー、ロビン・ウィリアムズ、ニコール・キッドマン、ヒュー・ジャックマン、ヒューゴ・ウィーヴィング、マグダ・ズバンスキー、アンソニー・ラパリア

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【映画】短足萌えなので。

「ホリデイ」を見たかったのだけど、公開日だけあって満席な有楽町。お近くでやってた

  • 2007/06/27(水) 13:07:18 |
  • のびのびにっき

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