Simply Dead

映画の感想文。

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『逃げろ! いつか戻れ』(2006)

『逃げろ! いつか戻れ』
原題:Pars Vite et Reviens Tard(2006)

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 フランス映画祭2007出品作品。フレッド・ヴァルガスによるベストセラー小説を映画化したミステリー巨編。国際的スケールの大河ロマン作品で知られるレジス・ヴァルニエ監督が、初めて現代のパリを舞台にした刑事ものに挑んでいるのが見どころ。また、ジョゼ・ガルシアとミシェル・セローという新旧の人気喜劇俳優が顔を合わせ、シリアスな演技を披露しているのも本作の売りだ。

 娯楽映画としては映像に見応えがあり、役者も芸達者ばかり揃えているが、いかんせんスジが悪い。そもそも原作自体に致命的な欠陥があるのだと思うけど、推理ミステリーとしてはただのバカミスの部類に入る凡作だった。

 発端部はなかなか面白く、パリにペスト菌をばらまくという大仕掛けで期待を煽るのだけど、中盤からどんどん事件のスケールが小さくなり、ありきたりな因縁話に落ち着いたかと思えば、結局は陳腐な二重オチになったりしてしまう。犯人像はもとより、犯行理由から殺しのからくりまで、見事につまらなくなっていく。ここまでくると、ちょっと大したものだ。

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 途中から刑事が身近な容疑者を探す展開になると、さらにいけない。今時、映画で犯人当てなどというリスキーな題材に挑む人の気が知れない。『Ruby』(1977)のカーティス・ハリントン監督がインタビューで語っていたが、「ミステリーとサスペンスは違う」。ミステリーは最後に真犯人が明らかになるまでいろいろ手練手管を使って頑張らなくてはならないが、そのわりに観客の興味を持続させられない。映画では鬼門のジャンルなのだ。一方、サスペンス(スリラーともいう)というのは緊張感やスリルの積み重ねだから、犯人を途中で明かしても構わない。むしろ観客が余計な気を回さなくて済むから、映画の流れがスムーズになる。似ているようで作り方も楽しみ方も全く違うのだ。

 大別すると、ミステリーは小説向き、スリラーは映像向きのジャンルだと思う。小説であれば、本作のように次々と新事実が明かされるような展開で、読者を飽きさせずページを繰らせることも可能だろう。しかし映画では難しい。観客は短い時間に多大な期待を膨らませながら観ているから、話がスケールダウンもしくは明後日の方向を向いたりすると一気にシラケてしまうのだ。よほど巧くやらないかぎり、この手は成功しない。特にフランス人は計算された物語構築というのに最も向いてない人種という気がする。だから『ギャングスター』『あるいは裏切りという名の犬』のオリヴィエ・マルシャルみたいな人が出てくると、素直に驚いてしまうのだけど。

 と、いったような意識を働かせながらヴァルニエが現場に臨んだとは思えず、仕上がりはごく普通の娯楽大作だ。お仕事と割りきって、原作のつまらなさにも目をつぶった様子。そういえば、ここ最近に観たフランスのベストセラー原作の映画化というと、面白かった記憶がまるでない。本作もやはり、その例に漏れなかった。すっかりおじいちゃんになってしまったミシェル・セローが、こんな企画に付き合って頑張っている姿を見ると、名優も大変だなあと思う。

追記:2008年1月、『サイン・オブ・デス』のタイトルで、アルバトロスからDVD発売。

・Amazon.co.jp
DVD『サイン・オブ・デス』


監督/レジス・ヴァルニエ
原作/フレッド・ヴァルガス
撮影/ローラン・ダイヤン
音楽/パトリック・ドイル
出演/ジョゼ・ガルシア、ミシェル・セロー、オリヴィエ・グルメ、リュカ・ベルヴォー、マリー・ジラン、ラン・ダー・ファン
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