Simply Dead

映画の感想文。

『暗黒街の男たち』(2007)

『暗黒街の男たち』
原題:Truands(2007)

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 フランス映画祭2007上映作品。暗黒街で繰り広げられる血なまぐさい「日常」を、過激な描写満載で描いたフランス版『仁義なき戦い』。綿密なリサーチのもとに製作されたというが、明らかに視点が殺伐とした方面に偏っており、全編に仮借ないバイオレンス&セックス描写をぶちまけている。傑作ではないけど、強烈な作品だった。

 パリの裏社会を暴力ざたに明け暮れる地獄として描いたのは、『スパイ・バウンド』(2004)のフレデリック・シェンデルフェール監督。ヤン・ブリオンと共に共同脚本も担当。ちなみに父親は『317小隊』(1964)や『愛と戦火の大地』(1992)などで知られる映画監督ピエール・シェンデルフェールで、本作にはブノワ・マジメル演じる主人公がテレビで『317小隊』を見ている場面も出てくる。

▼主演のフィリップ・コベール(左)とブノワ・マジメル
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 キャストの中で最もインパクトが強いのが、ジャック・ニコルソンみたいな組織のボス、クロードを狂演するフィリップ・コベール。フランス演劇界の重鎮だそうだが、観ている間はそんなこと夢にも思わない。裏切り者の両目を指でえぐり出すわ、トイレで娼婦をバンバンひっぱたきながら犯すわ、捕えた男のケツに角材を突っ込むわ、まさに暴力の権化のような所業のオンパレード。チンコまるだしでもお構いなし。こんな男らしい人も久々に見た気がした(凄くワルい意味で)。あまりに常軌を逸した活躍ぶりに、物語中盤でひとまず退場してしまった時は心底「残念!」と思った。

 今回の映画祭で上映された『石の微笑』(2004)にも主演しているブノワ・マジメルが、腕の立つ若きギャング・フランクを演じ、これまでとは違った渋いムードを醸し出している。オールバックのクールな殺し屋姿は結構ハマッていて、動作も鋭く、なかなかカッコイイ。彼の相棒ジャン=ギィに扮するのが、『あるいは裏切りという名の犬』(2004)の監督でもあるオリヴィエ・マルシャル。元警官だったくせに、役者としてはいぶし銀の犯罪者がこの上なく似合ってしまう人だ。ラスト近くでは凄まじい暴力シーンにも挑んでいる。この他にも主要男性キャストはほぼ全員、寿命が縮まるくらい力演。女も軒並みセックスか暴力のえじきになる。

 クロードの妻を演じているのはベアトリス・ダル。最近はバケモノじみた色っぽさをあまり出さない感じだったが、今回は登場シーンからエロかったので安心した。とはいえ自堕落なギャング妻以上のキャラクターではないのが残念。

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 近年のギャング映画の流行に漏れず、本作では悪党どもの“家庭の悩み”や“生活感”も随所に描かれる。しかし、その行く末は常に苦い。女にも仕事にもクールな主人公フランクだけが、ただ一人「うまいやり方」を知っているように見える。だが、ギャングに平穏な人生などない。町を歩く主人公がふと背後に視線を向ける姿を、シェンデルフェール監督はスローモーションで印象的に映し出す(2度も)。この男は、死ぬまで背後を気にして生きていくしかない。

 映画は変わり行く裏社会の姿を暗示して終わる。円環構造にはなっているが、続編も作れそうだ。今のところ日本での配給会社は未定だそうだが、もし公開されるとしても手付かずで上映できるかどうか。修正なりカットなりされる気がする。とにかく下品なバイオレンスが観たい! という人にはお薦め。

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追記:2008年2月、『裏切りの闇で眠れ』のタイトルで劇場公開決定。もちろんR-18指定。

・Amazon.co.jp
DVD『裏切りの闇で眠れ』


監督/フレデリック・シェンデルフェール
脚本/ヤン・ブリオン、フレデリック・シェンデルフェール
撮影/ジャン=ピエール・ソヴェール
音楽/ブリュノ・クレ
出演/ブノワ・マジメル、フィリップ・コベール、ベアトリス・ダル、オリヴィエ・マルシャル

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コメント

カットが望ましいです

私も「暗黒街~」を昨日観てきました。
あまりにも残酷なシーンと見たくないおじさんの下半身が耐えられませんでした。
ブノワマジメルの下半身は見せないのか!なんて思ったりして(笑)
ブノワファンですが2度目は観れないです。

  • 2007/03/18(日) 22:45:25 |
  • URL |
  • ひゅーのすけ #-
  • [ 編集]

はじめまして。
確かにブノワ・マジメルのかっこよさだけ見に行くと、とんでもない目に遭う映画でしたね(笑)。まあ、どんな映画でもノーカット上映が望ましいとは思いますけど。
もう1本の主演作『石の微笑』はご覧になりました? すばらしかったですよ。個人的にはシャブロル監督との前作『悪の華』よりよかったと思います。

  • 2007/03/19(月) 01:14:01 |
  • URL |
  • グランバダ #-
  • [ 編集]

観ました石の微笑

石の微笑も観ました。
私は変なところが印象に残りました。
息子の母を思う?気持ち。
ブノワは物静かな青年を演じるとハマルような気がします。
実物のブノワも物静かな人でした。
http://blogs.yahoo.co.jp/hugh_nosuke/29904889.html

  • 2007/04/05(木) 23:06:10 |
  • URL |
  • ひゅーのすけ #-
  • [ 編集]

お返事おくれてすいません

実物、間近で会われたんですねー。いいなあ。
フランス映画祭はやたらと客とゲストの距離が近くて面白いですよね。ぼくもいつだったか、『リトル・エルサレム』に出ていたファニー・ヴァレットという女優さんのサインをもらいました。

同じシャブロル監督/ブノワ主演の『悪の華』も母親との関係が物語のキーになってるんですよね。日本版DVD出せばいいのに……

  • 2007/04/19(木) 18:17:28 |
  • URL |
  • グランバダ #-
  • [ 編集]

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