Simply Dead

映画の感想文。

『ドリームガールズ』(2006)

『ドリームガールズ』
原題:Dreamgirls(2006)

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 傑作。見事な編集技が冴え渡るオープニングシーンから完ペキに圧倒された。以降、有無を言わさぬテンションで130分を一気に駆け抜ける。途中でダレるかな、普通になっちゃうかな、と思うところでも一切停滞する気配を見せないのだ。誰が見ても素晴らしいジェニファー・ハドソンの、熱唱絶唱また熱唱を繰り返す決してテンションの下がらない演技が、この映画のスタイルそのものを体現している。

 キャラクター描写に余計な時間を割かない語り口にも驚かされた。冒頭からこんなに歯切れよく展開する映画も近年珍しいだろう。スピーディだが節度もある(スコセッシの映画とは違う)。すでに25年前にブロードウェイでヒットした舞台劇がもとになっているのも理由のひとつだろうが、「余計なことをしなくても、彼女たちが登場すれば観客は引っ張れる」という思い切りと自信が映画を活性化させているのだ。ある欠落をものともしない勢いというのは、傑作の条件なのではないかという思いをまた強くした。

 嬉しいのは本作が「音楽映画」ではなく、ちゃんと「ミュージカル映画」になっていたこと。最近は『Ray/レイ』(2004)や『ウォーク・ザ・ライン』(2005)など、人気ミュージシャンの伝記映画が流行しているが、『ドリームガールズ』はそれらの音楽映画と本格ミュージカルのデリケートな融合と言える。もちろんその微妙なバランスを理解する演出力あってこその話だが、ビル・コンドンは意外にも本作で見違えんばかりの達者ぶりを発揮してみせた。

 ホラー/スリラー畑から出てきて、秀作『ゴッドandモンスター』(1998)で頭角を現し、『愛についてのキンゼイ・レポート』(2004)では「巧いけど地味なところに落ち着くのかな」と思っていたら、今回いきなり化けた。監督業の合間に脚本を手掛けた映画版『シカゴ』(2002)が結局は舞台中継映像でしかなかったことで、コンドンとしては「そうじゃねえだろ!」という苛立ちがあったのかもしれない。優れたミュージカルのパフォーマンスをいかにして映画に捕らえるか。今まで暖めてきた興奮まじりの夢想を全てぶつけている感が『ドリームガールズ』にはある。コンドンはゲイなので、60?70年代の派手なファッションを過剰に描きそうな予感もあったが、わりと時代の捉え方が爽やかなのも好感が持てた。

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 フグちゃんことジェニファー・ハドソンは登場シーンから“スペシャル”だ。自分でもそれを分かっているという役柄に見事になりきっているので、観客は一目で彼女に惹きつけられてしまう(普段からそういう自信たっぷりの女=ディーヴァでいるよう、監督から注文があったとか)。彼女を見る驚きだけで映画が終わっていく。もちろんビヨンセもいい。“美しすぎてつまらない女”を涙ぐましいほどストレートに熱演している。エディ・マーフィも、アニカ・ノニ・ローズも、キース・ロビンソンも、ダニー・グローヴァーもみんないい。唯一、スカした芝居のジェイミー・フォックスが周りの芸達者たちに食われまくっているくらいだ。ジョン・リスゴウの特別出演にも笑った。

 誰がどう見てもモータウン・レコーズの年代記だがあくまでフィクションとして物語が進むため、ファンタジーにも越境できる自由さが快い。最近の例だと『ブギーナイツ』(1997)に近いと思う。また、特に明確に主人公を立てているわけではなく、登場人物みんなに花を持たせているのが偉い。原作のよさもあるだろうが、映画用脚色の巧さも特筆すべきだ。そんな演者を立てる心意気はエンディングの“カーテンコール”でさらにダメ押し的に爆発する。これが本当にかっこいい! いやあ泣いた。やっぱドラムロール流れたら泣くしかないよ!!

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製作/ローレンス・マーク
監督・脚本/ビル・コンドン
原作・作詞/トム・アイン
撮影/トバイアス・シュリースラー
プロダクションデザイナー/ジョン・マイヤー
衣装/シャロン・デイヴィス
振り付け/ファティマ・ロビンソン
編集/ヴァージニア・カッツ
音楽/ヘンリー・クリーガー
音楽プロデューサー、アレンジャー/アンダードッグス
出演/ビヨンセ・ノウルズ、ジェニファー・ハドソン、ジェイミー・フォックス、エディ・マーフィ、アニカ・ノニ・ローズ、キース・ロビンソン、ダニー・グローヴァー、ジョン・リスゴウ

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