Simply Dead

映画の感想文。

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『King of the Ants』(2003)

『King of the Ants』(2003)

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〈おはなし〉
 冴えない毎日を送っている青年ショーン(クリス・L・マッケンナ)。彼はある日、バイト先で出会った中年の大男デューク(ジョージ・ウェント)に気に入られ、不動産実業家のレイ(ダニエル・ボールドウィン)を紹介される。ある男の動向を監視するよう頼まれたショーンは、スパイ気取りでさっそく尾行を開始。しかし所詮はずさんな素人探偵。終いには監視相手の美人妻スーザン(カリ・ウーラー)に一目惚れする始末。

 ある夜、ショーンのもとに泥酔したレイが現れ、大金と引き換えに男の殺害を依頼する。うまく乗せられ、引っ込みがつかなくなったショーンは、覚悟を決めて男の家に乗り込み、奮闘の末になんとかトドメを刺した。

 ところが、レイは約束の金を払わなかったばかりか、砂漠の小屋にショーンを監禁。デュークたちに毎日ゴルフクラブでぶっ叩かれるうち、彼は狂った肉塊と化していく。だが本当の悪夢はこれからだった……。

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 ステュアート・ゴードン作品の主人公は、常に最悪の選択をする。異界の扉を開けるとか、死の壁を超越するといったタブーを侵した挙げ句、世界の条理は崩壊し、悪あがきの末に罪のない女子供が死んだりする。それを大真面目なブラック・コメディとして撮るのがゴードンだ。極限状況にあって「人間どこまで鈍するか」を描いてきた彼の真骨頂と呼べるのが、本作『King of Ants』である。

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 『King of Ants』はバイオレンス満載の犯罪スリラーであり、虐げられた男の復讐劇でもあり、派手なクライマックスが見せ場のB級アクションとしての体裁も守っているが、基本的にはいつもと同じシュールなオフビート・コメディだ。ポイントは主人公がとんでもないボンクラ野郎であること。小粒だが、未公開がもったいない佳作である。

 前半はどこにでもいる平凡な青年がふとしたことから散々な目に遭い続ける『DAGON』(2001)のような作品と見せかけて、だんだんと違う様相を呈してくる。壮絶な拷問によって愚鈍さを研ぎ澄まされた(あるいは殴られ過ぎて余計バカになっちゃった)主人公は、周囲にことごとく災渦をもたらす「超人」として蘇るのである。こう書くと黒沢清監督の映画みたいだが、実際そうなのだ。

 後半の展開はカタルシス満点の復讐劇に見えるが、実際はかなりねじれた暴力喜劇で、非常に面白い。自らの罪を清々しく忘れて暴れまわる青年は、贖罪とか宿命とか悲劇的帰結といった映画的モラルなぞに回収されたりはしない。彼が着ているTシャツの柄も素晴らしくバカでよろしい。いかにも痛快アクション映画の大団円といったラストの大爆発は、ぞんざいな装置の仕掛け方といい、ゴードンの悪意と適当さがダイレクトに出ていて感動してしまった。これは快作である。優れた冗談としてよく出来ている。

 主役の新人俳優クリス・L・マッケンナは、全裸の拷問シーンやエレファント・マン状態に膨れ上がった頭部メイクなど、過酷な試練にも前向きに取り組んでいて偉い。脇を固めるキャストはB級的になかなか豪華で、『ヴァンパイア/最後の聖戦』(1998)のダニエル・ボールドウィンや『スパイダー・パニック!』(2002)のカリ・ウーラー、『ガン・ホー』(1986)のジョージ・ウェントや『マッドマックス2』(1981)のヴァーノン・ウェルズ、さらに『リストラ・マン』(1999)のロン・リヴィングストンといった陽の当たらない名優たちが集結している。中でもやはりヒロイン役のカリ・ウーラーが魅力的だ。劇中では激しい濡れ場に挑むほか、とんでもない姿に変身したりする。

 元々は、デューク役のジョージ・ウェントがイギリスでTVコメディ番組を企画していた時、作家でTV俳優のチャーリー・ヒグソンが持ち込んできた「およそTV向きでない」小説がオリジナル。その内容に惚れ込んだウェントが、映画スタジオ各社に持ち込んでは「ダークすぎる」と断られまくった末、旧知のゴードン監督の元に預けたのだとか。いわば雇われ仕事だが、仕上がりは相当にゴードン色濃厚だ。

 低予算で作られた小品だが、それでも特殊メイクに凝ったり、出さなくてもいいクリーチャーなどを出したりするのがステュアート・ゴードンらしさだ。本作のような犯罪スリラーでも、人体損壊部分のメイクは一貫してシュールなホラー感覚で作っているのも楽しい。やたら発色を強くしたスーパー16mmのブローアップ映像は、カラフルな白日夢の趣き(ややデジタルくさいが)。日本でもDVDが出ないもんだろうか。

追記:2007年10月3日に、ジェネオンエンタテインメントから『キング・オブ・バイオレンス』のタイトルでめでたく国内リリース!

・Amazon.co.jp
『キング・オブ・バイオレンス』DVD


監督/ステュアート・ゴードン
製作/デイヴィッド・マイケル・ラット、ダフィ・ヘクト
原作・脚本/チャーリー・ヒグソン
撮影監督/マック・アールバーグ
編集/デイヴィッド・マイケル・ラット
音楽/ボビー・ジョンストン
出演/クリス・L・マッケンナ、カリ・ウーラー、ジョージ・ウェント、ダニエル・ボールドウィン、ヴァーノン・ウェルズ、ライオネル・マーク・スミス、ティム・シャープ、ロン・リヴィングストン

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