Simply Dead

映画の感想文。

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『ルワンダの涙』(2005)

『ルワンダの涙』
原題:Shooting Dogs(2005)

shootingdogs01.jpg

〈おはなし〉
 4月。ルワンダの首都キガリには、英国人神父クリストファー(ジョン・ハート)が運営する公立技術専門学校があった。そこに英語教師として赴任していた青年ジョー(ヒュー・ダンシー)は、生徒たちの人気者。彼は特に、成績優秀で運動能力にも長けた少女マリー(クレア・ホープ・アシティ)に目をかけていた。

 ある夜、ルワンダ大統領の乗った飛行機が墜落したというニュースが入り、国中に緊張が走る。平和監視目的で学校の敷地内に駐留していたベルギー軍はすぐさま臨戦態勢をとり、一夜のうちに校門前には避難を求めるツチ族の人だかりができていた。

 夜が明け、避難民はさらに増える一方。クリストファー神父が駐留軍のデロン大尉(ドミニク・ホロウィッツ)に兵士の増強要請を提案すると、「我々の目的は平和監視で、独断による支援はできない」という答えが返ってくる。ジョーはマリーを探すため、トラックで彼女の家に向かった。その時、町で繰り広げられていたのは、フツ族民兵による理不尽な虐待。だが、それは地獄の始まりに過ぎなかった……。

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 当時は誰も気に留めなかった(あるいは見て見ぬふりをした)が、10年を経てやっと世界的に振り返られるようになった事件。アフリカの小国ルワンダにおける大虐殺。ルポルタージュ『ジェノサイドの丘』や映画『ホテル・ルワンダ』(2004)などによって、初めてその出来事を知った人も多いだろう。僕もそうだった。そうした近年の風潮にはどこかしら「贖罪」の気分が含まれているが、この『ルワンダの涙』はまさに、虐殺を目の当たりにしながら何もできず逃げ帰るしかなかった白人の悔恨と苦渋の物語だ。ある種、人間性の尊さを説く美談だった『ホテル・ルワンダ』に比べ、絶望も為す術のなさも一層強烈である。

 原題の“Shooting Dogs”という言葉の意味は、ベルギー平和監視軍の大尉が「死体に群がる犬は不衛生だから撃ちたいんだが、どうか?」と神父に問う場面から採られている。弾丸を暴徒の鎮圧に使わず、野良犬にくれてやるって? 言い換えれば、他にやるべきことがあったはずなのに? という自問、忸恃たる思いのこもったタイトルだ。

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 パンク状態の避難所からこっそり抜け出したツチ族の一団が、すかさず駆けつけたフツ族に殺されるシーンは圧巻だ。その中には老神父の名を授かった赤子もいる。その時、かの地では確かに全ての希望が潰えたのだ。

 襲いくるフツ族の人々の表情には、ほぼ例外なく、えもいわれぬ高揚感が浮かんでいる。泣き叫ぶ人間を鉈でガンガンぶっ叩いているうち、物言わぬズダ袋になっていくのが、うれしい! という。人は理由さえ見つけられれば、暴力を心底楽しんでしまう。その変容こそが恐怖の神髄であり、その表情をしっかり描いた点でこの映画はとても誠実だ。

 さらに、劇中ではBBCの女性ジャーナリストが「ボスニアで白人が虐殺されているのを見た時は胸が痛んだけど、ここじゃ何も感じないの。ただ黒人が死んでるだけ」と言い放つ。あまりに正直な、しかし真実であろう欧米諸国の反応を代弁してみせる。それが黒人でもアジア人でも同じことだ。本作の原案・製作を手がけたのは、他ならぬBBCのジャーナリストである。

 監督はマイケル・ケイトン・ジョーンズ。『ホテル・ルワンダ』は南アフリカで撮影されたが、ジョーンズは「現地で撮らねば意味がない!」と、ルワンダの首都キガリでのロケ撮影を貫徹した。意図的に主要人物が一部の白人に限られているので、場面作りのバリエーションには欠けるが、全体にみなぎる生々しい緊迫感は凄まじい。この映画でよほど度胸がついたのか、それともやりたいことはやりきったのか、次回作には『氷の微笑2』(2006)の監督を引き受けたつわものである。

shootingdogs_marie.jpg

 極限状況の中で人間への愛を試される老神父役は、ジョン・ハート。相変わらず名優らしい気取りがなく、常にナイーヴな青年が心にいるのではないか、と思える。それでいて毅然とした人物を見事に演じており、最近『10番街の殺人』(1971)を観ていただけに感慨深かった。まさに地獄を目にする青年ヒュー・ダンシーの熱演も忘れ難い。ヒロインである少女マリーを演じるクレア・ホープ・アシティがやけに艶めかしく、社会派問題作という以上のうずきを映画に与えている。『トゥモロー・ワールド』(2006)での印象とはえらい違いだ。

 『ルワンダの涙』は疑いの余地なく必見の秀作である。しかし、これはあくまで白人の目から見た物語だ。自らの罪に向き合い、救いを得るための。だから、ツチ族の視点から虐殺を描いた『Sometimes in April』(2005)の公開も望まれる。

 追記:『Sometimes in April』はすでにスターチャンネルで『ルワンダ 流血の4月』のタイトルでTV公開され、2007年3月にWOWOWでも放映することが決定。

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『ルワンダの涙』DVD


製作/デイヴィッド・ベルトン、ピッパ・クロス、ヤンス・ミューラー
監督/マイケル・ケイトン・ジョーンズ
原案/リチャード・アルウィン、デイヴィッド・ベルトン
脚本/デイヴィッド・ウォルステンクロフト
撮影/アイヴァン・ストラスバーグ
美術/ベルトラム・ストラウス
音楽/ダリオ・マリアネッリ
出演/ジョン・ハート、ヒュー・ダンシー、クレア・ホープ・アシティ、ドミニク・ホロウィッツ、ニコラ・ウォーカー

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