Simply Dead

映画の感想文。

映画秘宝10月号! アナーキー日本映画史 1980~2011!

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 我らがカツシン演じる座頭市が表紙を飾る「映画秘宝 2012年10月号」は、本日8/21発売。ぼくは今回、3つほど記事を担当させてもらいました。

 まずは「モキュメンタリー映画の世界」。疑似ドキュメンタリーというスタイルで大胆不敵に虚構を紡ぐ、モキュメンタリー映画の簡単な歴史とバリエーションを考察してみた特集です。『カメレオンマン』『スパイナル・タップ』といった代表的タイトルをはじめ、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』から始まったホラー系モキュメンタリーの系譜、POVスペクタクルという新潮流が生んだ注目作『クロニクル』『Project X』などを紹介しています。本当はサシャ・バロン・コーエンの最新作『ディクテーター/身元不明でニューヨーク』(9/7公開)に合わせた記事だったんですが、筆者も担当編集もまさか完全な劇映画だとは思わず、試写室でぶったまげたという経緯も挟んでおります……が、やはり『ボラット』『ブルーノ』でのモキュ/ドキュ・ボーダーへの過激な接近なくして、『ディクテーター』はあそこまで成熟したコメディの快作に仕上げられなかったとも思うので、そこに言及できたのはよかったです。あと『クロニクル』は本気でオススメ!

 洋画最前線コーナーでは、韓国で大ヒットした時代劇アクション『神弓 ―KAMIYUMI―』(8/25公開)を取り上げております。ポン・ジュノ作品でおなじみのパク・ヘイルが弓の名手に扮し、超絶スキルの数々を披露。敵の武将に扮するリュ・スンニョンのかっこよさも必見! 古今東西の「弓アクション映画」を紹介するコラムも担当しました。

 また、真夜中の小学校で内蔵むきだしの人体模型が大暴れする3DCGアニメ『放課後ミッドナイターズ』(8/25公開)の短いレビューも書いております。ひたすら大人げない言動ばかり繰り返す人体模型キュンストレーキ(声:山寺宏一)、その相棒をつとめる骨格標本ゴス(声:田口浩正)の掛け合いを見るだけでも楽しい快作。時計塔を舞台にしたクライマックスの大アクションはなかなかの迫力なので、ぜひ劇場でお楽しみください。「秘宝」の記事とは別に、WEBで竹清仁監督へのインタビューもさせてもらいました。

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 8/29発売予定の「映画秘宝EX 爆裂! アナーキー日本映画史 1980~2011」にも、ちょこっと参加しております。三池崇史監督の「黒社会」三部作をはじめ、石井隆監督の『黒の天使 Vol.2』、藤田秀幸監督の『グループ魂のでんきまむし』、中島哲也監督の『下妻物語』、大林宣彦監督の『その日のまえに』と、大好きなタイトルばかり書かせていただきました。自分がいちばんよく日本映画を観ていた頃を思い出しながら書けた上、個人的に愛してやまない作品をこの機会にがっつり見直すことができたのも嬉しかったです。特に『黒の天使 Vol.2』『新宿黒社会/チャイナマフィア戦争』『日本黒社会/LEY LINES』『下妻物語』は涙が出るくらい好き(まあ全作品泣いてますけども)。

 別のムックや「TRASH-UP!!」最新号の原稿も現在進行中です。また近々お伝えしたいと思います。よろしくお願いします!
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『イントルーダーズ』(2011)

『イントルーダーズ』
原題:Intruders(2011)

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 『28週後…』(2007)のフアン・カルロス・フレスナディージョ監督による、一風変わったファンタジーホラー。スペインとイギリスを舞台に、子供のイマジネーションが生んだ「怪人」(劇中の台詞では“Hollow Face”、つまりカオナシ)が、遠く離れた別々の家庭に恐怖をもたらす。「あらゆる恐怖の正体は、人間の想像力の産物である」という概念を、空想としてでなく「それは実在する」というアプローチで描いた、なかなかの野心作だ。シナリオも凝っており、カメラワークも非常に神経が細かく、フレスナディージョ監督の演出力の高さに改めて感じ入った。

 が、映画としては残念ながら失敗している。やはり舞台をふたつに分け、双方のドラマが同時進行で描かれるという構成がよくない。観客の集中度を著しく殺いでしまうし、ただでさえ曖昧でミステリアスな恐怖の対象がさらにボンヤリしてしまう結果を招いている。作り手の意図は分かるし、オチも狙いどおりに着地できているのだろうが、観ている間はどうしてももどかしさを感じて仕方なかった。

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 いわゆるベッドの下のオバケに代表される「悪い想像」=恐怖の源泉が、時代や国境を越えたコモンセンスとして伝播し、受け継がれていく不思議さ、不気味さ。それが本作のアイディア源であり、ホラー映画としてのテーマでもあるだろう。ただ、シナリオ上のひねりを重視するあまり、もっとシンプルに描けたはずのストーリーが散漫になってしまった感は否めない。作品自体、スペインのスタッフを中心に欧州数カ国で撮ることを前提にしたプロジェクトだったようだが、もう少し別のバランスでも撮りようがあったと思う。

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 作品の善し悪しはともかく、前作とは異なりオリジナル要素の増した今回の映画は、グッとスパニッシュ・ホラー寄りになっていたのが面白かった。ホラーに限らずスペイン映画では、大人には見えない世界の真実、裏側を見ることができる存在として「子供」がフィーチャーされることが多い。『パンズ・ラビリンス』(2006)しかり、『永遠のこどもたち』(2008)しかり、『ブラック・ブレッド』(2010)しかり。「純粋な者」「能力者」である子供たちは、同時に「弱き者」「犠牲者」でもある。本作『イントルーダーズ』でも同様に、闇夜に潜む「悪」を抽象化・具現化する力を持ち、それゆえに闇へと引きずり込まれるものとしての子供が描かれる。さらに、その力に共鳴してしまう大人(親)が、神経症的恐怖に巻き込まれていくという趣向が新鮮だ。

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 キャスティングも含めた俳優への演出の巧さも、やはり『28週後…』同様に際立っている。この監督は、子供を描くのが本当に巧い。イギリス側のヒロイン、ミアを演じるエラ・パーネルの魅力的な表情は、本作最大の見どころと言っても過言ではない。クライヴ・オーウェンは、娘がインターネット詐欺レイプの犠牲者になる『Trust』(2010)に続き、今回も苦悩するパパを熱演。優しい父親役がすっかり板についている。しかし、バスケットボールを頭に見立てたカカシにオイルぶっかけて燃やして、それをあんな至近距離で娘と一緒に眺めるなんていう頭のおかしい行為(ていうか、ボール爆発するんじゃないの?)を平然とやるような親父なので、多分『宇宙戦争』のトム・クルーズぐらいダメな人な気がする。

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 作品としては惜しい仕上がりながら、今後も注目していきたい監督であるという評価は揺るがなかった。ホラー映画ファンならチェックしておきたい作品である。

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