Simply Dead

映画の感想文。

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2011年に面白かったもの

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▲ジェラール・ドパルデュー主演の傑作コメディ『マムート』。ぜひ日本公開を!

 2011年は本当にいろいろなことがあった年でした。実際に被災した方も、そうでない人も、震災という大きな出来事をきっかけに、今はとにかく自分にできることを一所懸命やるだけだと信じ、自分のキャパシティ以上に頑張った人たちがたくさんいると思います。本当におつかれさまでした。ぼくも来年はもう少し心穏やかに、それでも勢いは緩めず、前に進んでいきたいと思います。

 今年は忙しさのあまり見逃してしまった作品も少なくないのですが、それでも面白い映画には事欠きませんでした。昨年同様、順位はつけず、面白かったものを50音順で50本ほど並べてみました。上位ベスト10は来月発売の「映画秘宝」ベストテンアンケートで答えているので、そちらもお楽しみに。

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『アクシデント』 『アジョシ』 『明日を継ぐために』 『アンニョン!君の名は』 『生き残るための3つの取引』 『ENCOUNTERS』 『宇宙人ポール』 『英国王のスピーチ』 『エイリアン・ビキニの侵略』 『エリート・スクワッド』 『エリート・スクワッド ブラジル特殊部隊BOPE』 『海洋天堂』 『哀しき獣』 『カメリア』 『監督失格』 『クレイジー・ホース』 『恋人のディスクール』 『高地戦』 『ゴーストライター』 『この愛のために撃て』 『ゴモラ』 『コンテイジョン』 『ザ・タウン』 『桜の温度』 『シリアスマン』 『水曜日のエミリア』 『スーパー!』 『春香秘伝』 『シラノ:恋愛操作団』 『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』 『先生を流産させる会』 『ソーシャル・ネットワーク』 『その街のこども 劇場版』 『TATSUMI』 『単身男女』 『探偵はBARにいる』 『狄仁傑之通天帝國』 『デタッチメント』 『電人ザボーガー』 『坡州 パジュ』 『バトルフィールド・ヒーローズ 平壌城』 『ハングオーバー!! 史上最大の二日酔い、国境を越える』 『ヒア アフター』 『引き裂かれた女』 『フェア・ゲーム』 『復讐捜査線』 『ファンタスティック Mr.FOX』 『武侠』 『ブラック・スワン』 『へんげ』 『マネーボール』 『マムート』 『Meek's Cutoff』 『ミッション:8ミニッツ』

 旧作上映も充実しており、魅力的な特集上映がたくさんありました。なかなか時間が作れずに通えなかったのが心残りですが、それでも、フランス映画祭協賛企画のクロード・シャブロル特集で観た『ヴィオレット・ノジエール』『破局』『仮面』、午前十時の映画祭『ブラック・サンデー』、カナザワ映画祭『アンディ・ウォーホルのBAD』『ジェイコブス・ラダー』、川谷拓三映画祭『河内のオッサンの唄 よう来たのワレ』、TRASH-UPLINKで上映された継田淳監督の『ともだち』は、本当にスクリーンで観られてよかった!

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 2011年は本を読む機会が多くなり、10~12月はエンタメ・ノンフィクション作家、高野秀行さんの著書をひたすら読みあさっていました。なかでも旅先で読んだ『イスラム飲酒紀行』は本当に素晴らしかったです。基本的に飲酒は禁じられているイスラム世界で、あらゆる手を尽くして酒を飲もうとする著者の悪戦苦闘が予想外の展開満載で描かれる、酒飲みなら必読の冒険譚です。また、代表作『西南シルクロードは密林に消える』『アヘン王国潜入記』『巨流アマゾンを遡れ』にも、いたく感銘を受けました。特に『巨流アマゾンを遡れ』はもっと若い頃に読んでおきたかった名著。

 高野さんがプロデュースを手がけた大野更紗さんの難病冒険小説『困ってるひと』も忘れられません。こちらはベストセラーになっているのでご存知の方も多いと思いますが、今年を代表する一冊だと思います(師匠である高野さんの名作『ワセダ三畳青春記』もちょっと思い出させるところも面白いです)。そして、平山夢明さんの久々の新作『或るろくでなしの死』も、言うまでもなく最高でした。さまざまな「死」を描いた全7編の短編のうち、特に印象深かったのは、やはりラストを飾る「或るからっぽの死」。平山さんらしい着想の見事さ、美しさと苛烈さに溢れた傑作です。

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 では、そろそろ行きつけの飲み屋で年越ししてくるので、この辺で。皆様、よいお年を!
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DVD-BOX「キム・スヨン コレクション」発売!

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 キム・ギヨン、ユ・ヒョンモク、イ・マニらと共に、韓国映画黄金期を支えた名監督のひとり、キム・スヨン。その代表作を収めたDVD-BOX「キム・スヨン コレクション」が、韓国映像資料院から発売されました。収録タイトルは『浜辺の村』(1965)、『ある女優の告白』(1967)、『霧』(1967)、『夜行』(1977)の4本。全作品、日本語字幕つき。監督自身が参加したオーディオコメンタリーも収録されています。来年公開されるイ・チャンドン監督の傑作『ポエトリー アグネスの詩』に主演した名女優、ユン・ジョンヒの出演作も2本含まれています。

 文芸映画を得意としつつ、1年間に監督作が10本も公開されるほどの職人でもあったキム・スヨン監督は、ほかにイ・マニ監督の名作を『母なる証明』のキム・ヘジャ主演でリメイクした『晩秋』(1981)、アナーキーな言動で知られる実在の僧侶の半生を描いた問題作『空言』(1986)、韓国の日本映画解禁前に製作された日韓合作映画『愛の黙示録』(1995)なども手がけています。ぼくもほとんど作品を観たことがないので、今回発売されるDVD-BOXでその作品世界に触れたいと思います。

キム・スヨン コレクション
4枚組/全作品ワイドスクリーン(2.35:1)/日本語・英語・韓国語字幕つき/Dolby Digital Mono
特典:キム・スヨン監督ドキュメンタリー(56分)、イメージ資料集(全作品)、『霧』復元前後映像、キム・スヨン監督によるオーディオ・コメンタリー(全作品)
[YesAsia]

《収録作品》
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『浜辺の村』(1965年・93分)
南海の小さな漁村に暮らす若い女性ヘスン(コ・ウナ)は、結婚したばかりの夫を嵐で失ってしまい、そこに村の男サンスが強引にアプローチしてくる。最初は拒絶していたヘスンだったが、次第に彼の情熱にほだされ、ふたりで村を出て新生活を始めるのだが……。オ・ヨンスの小説を映画化した文芸ドラマ。興行的にも批評的にも成功を収め、キム・スヨン監督の代表作となった。

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『ある女優の告白』(1967年・87分)
60年代の黄金期を迎えた映画界を背景に描く、ややメタ的要素の入ったメロドラマ。往年の名優キム・ジンギュ(キム・ジンギュ)は、かつての役者仲間であり、今はもうこの世にない元恋人との間に、娘が生まれていたことを知る。彼は自らの正体を明かさないまま、娘を映画女優としてデビューさせ、演技指導やアパートの世話など懸命にサポートするのだが……。

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『霧』(1967年・79分)
ビジネスマンとして成功しながらも倦怠感にとりつかれた男(シン・ソンイル)が、母の墓参りと休暇をかねて故郷へ帰る。立ちこめる霧のほかには何もない寒村で、彼はひとりの女性と出会い、衝動的に結ばれてしまう……。キム・スンオクの小説「霧津紀行」を、原作者自ら脚色した現代的ドラマ。アンニュイな雰囲気が全編を覆い、ミケランジェロ・アントニオーニ作品とも比較された。ヒロインを演じるのは『ポエトリー アグネスの詩』のユン・ジョンヒ。一部欠損したオリジナル版を映画祭上映用に修復したバージョン。

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『夜行』(1977年・78分)
ソウルの銀行で働く女性ヒョンジュ(ユン・ジョンヒ)は、職場の上司(シン・ソンイル)と同棲しているが、ちっとも結婚に踏み切る気配のない彼との生活に、苛立ちと倦怠を抱えている。彼女は休暇で故郷を訪れ、かつてベトナムで戦死した学校教師との情事に思いを馳せる……。1973年に撮影されたものの、検閲で一部をカットされた上、4年間もオクラ入りの憂き目にあったという曰くつきの作品。主演は『霧』と同じく、ユン・ジョンヒとシン・ソンイル。

映画秘宝12年2月号!(ナ・ホンジン監督インタビュー)etc.

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 『ヒミズ』主演の二階堂ふみさんが表紙の「映画秘宝 2012年2月号」は、明日12/21発売。前号はお休みしましたが、今回は2本ほど記事を書かせていただきました。まずは、ライムスター宇多丸さんも「来年のベスト1!」とフライング気味に断言されていた傑作『哀しき獣』のナ・ホンジン監督へのインタビュー。さすがはリサーチの鬼というか、着想のきっかけから訊ねた途端、映画の下敷きになった実在の事件についてものすごい勢いで語り始め、取材時間の大半が実録犯罪談義に費やされてしまいました(笑)。初対面の相手でも飄々としたユーモアを織り交ぜながら話してくれて、自分でゲラ読みながら思わず笑ってしまったくらい面白い内容になっています。先日発売された「映画の必修科目02 激辛韓流映画100」掲載のインタビューより4倍近く長い別バージョンなので、併せて読んでいただけると幸いです。(ちなみに『哀しき獣』導入部の舞台である延辺朝鮮族自治州は中国と北朝鮮の国境地帯にあり、現在どういう状況になっているのか気になるところでもあります……)

 また、同じ韓国映画特集内で「2011-2012 この韓国映画を見逃すな!」という記事も担当しました。来年日本でも公開予定の『青い塩』『トガニ』『ワンドゥギ』といったタイトルのほか、個人的に今年のベストテンには必ず入れたいチャン・フン監督の傑作戦争映画『高地戦』や、サマーシーズン最大のヒット作となった『最終兵器 弓』などの新作情報を紹介しています。

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 そして、現在公開中のイギリス映画『ロンドン・ブルバード』のパンフレットにも、「ロンドン・ノワール・マップ」というコラムを寄稿しています。『ディパーテッド』『復讐捜査線』の脚本を手がけた米・ボストン出身の俊英ウィリアム・モナハンの監督デビュー作で、コリン・ファレルがカタギになりたい元犯罪者の主人公を好演。異邦人監督ならではの軽快さでサウスロンドンの下町と川向こうの高級住宅街をさらりと行き来する魅力的な小品です。その内容と絡めながら、地域によって表情の異なるロンドンのダークサイドを描いた新旧ブリティッシュ・ノワールの秀作群……『狼たちの処刑台』『フェイス』『ギャングスター・ナンバー1』などをつらつらと紹介してみました。もちろんマイク・ホッジス信奉者なので『ブラザー・ハート』『狙撃者』もしっかり盛り込んでおります。

 あと、こういう雑誌でも結構書いております。『桜の温度』の平尾隆之監督インタビュー、『マインド・ゲーム』の湯浅政明監督インタビューなどを担当しました。そして「映画の必修科目02 激辛韓流映画100」も好評発売中です! よろしくお願いします!

『汗』(2007)

『汗』(2007)
英語題:Sweat

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 国内外の映画祭で好評を博した短編『完璧な鯛料理』(2005)に続き、ナ・ホンジン監督が撮り上げた2本目の短編。ひとりの中年男を中心に、様々な人々が日常的に流す「汗」を、高解像度の白黒・ハイスピード映像でねっとりと映し出した約12分のコンセプト・ムービーだ。これも『完璧な鯛料理』と同じく、台詞はない。ほぼ全編モノクロだが、1ヶ所だけカラーになる。『チェイサー』(2008)の日本版DVDにも映像特典のひとつとして収録されており、KMDB(韓国映画データベース)の動画配信サービスでも無料で観ることができる(ココ。ただし要登録)。

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〈おはなし〉
 真夏のある日。ひとりの中年男がサウナでマッサージをうけている。マッサージ師の青年の肌から大量の汗が滴り、客の背中に落ちる。外では炎天下の下、運転手が車のエンジンを汗だくで修理している。中年男がサウナから出てきて、運転手は慌てて車のドアを開ける。その時、中年男のシャツの袖口に油汚れがつく。シャツはクリーニングに出され、それを洗濯屋が汗をボタボタ垂らしながらアイロンがけしている。綺麗なシャツに着替えた中年男は、工事現場へ視察に行く。すると、頭上から現場作業員の汗が落ちてくる。一瞬、見つめ合う両者。帰宅した中年男が居間で扇風機に当たってくつろいでいる間、台所では妻(または愛人)がびっしょりと汗に濡れながらサムゲタンを作っている。それを汗だくでむさぼる中年男。そして夜になり、中年男とその妻(または愛人)は、今度はベッドの上で汗まみれになる。上に乗って腰を振り続ける中年男の汗が、まるで雨のように女の身体に降り注ぐ。次の瞬間、女は分娩台にいる。苦悶に歪む女の顔は汗で覆われている……。

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 本作で映し出される「汗」は、労働の汗だったり、快楽の汗だったり、苦痛の汗だったりと多種多様。そこには現代社会に生きる人々の上下関係や社会格差が透けて見えたりもするが、一方でまた汗を流さない人間などもいない。真面目で勤勉な労働者だろうと、他人を踏み台にすることに慣れた実業家だろうと、その肌からは平等に汗が噴き出す。一見ダラダラと無意味に流される汗は、鮮烈なラストシーンに至って、人間の生命を象徴するものとして提示される。

 そんな人の世の営みを冷徹に、うっすらと悪意も込めながら見つめる図太い観察眼、グロテスクなまでに緻密な描写で生の本質に迫ろうとするパワフルな目線は、まさにナ・ホンジン演出の真骨頂だ。『チェイサー』や『哀しき獣』(2010)でも顕著な彼の「しつこさ」が、この短編では存分に発揮されている。いかにもあくどそうな面構えの中年男を演じるソク・チョンマンをはじめ、俳優陣のキャスティングも絶妙だ。

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 ハイコントラストの白黒映像で、人間の肌と汗のディテールを高密度に捉えたビジュアルも独特の迫力を生んでいる。特にクライマックスのセックスシーンは、さながら悪夢のようなインパクト。顔のアップのカットバックを繰り返すだけで、強烈なブラックユーモアと強迫的な生々しさに満ちた画面を作り上げている。露骨なヌードなど映さなくても十分いやらしさは醸し出せるという、濡れ場演出の手本みたいな場面だ。とめどなく溢れる汗が、自分の肌だけでなく他人の身体にも滴ったりする描写のつるべ打ちなので、潔癖性の人には向かないかもしれない。が、その生々しさにこそ、ナ・ホンジン監督の目から見た人間の生(性)のありのままの姿が、パワフルに表現されている。

 本作は2007年のプチョン国際ファンタスティック映画祭で審査員賞を獲得。ふたつの短編で業界の熱い注目を集めたナ・ホンジンは、『恋の罠 淫乱書生』(2006)などを製作した映画会社シルクロードに招かれ(短編を観た社長が「この監督を無条件でスカウトしてこい!」と指示したのだとか)、そこで長編デビュー作『チェイサー』を完成させた。そして2作目の『哀しき獣』も、もうすぐ日本で公開されようとしている。驚かされるのは、今の韓国映画界では異例とも言えるそのスピードだ。ポン・ジュノがじっくりと準備期間を費やして次回作にとりかかるのを尻目に、ナ・ホンジンは軽々とその本数を追い越してしまうのではないか?

・Amazon.co.jp
DVD『チェイサー』初回限定生産2枚組(※本作『汗』を映像特典として収録)

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『完璧な鯛料理』(2005)

『完璧な鯛料理』
原題:완벽한 도미요리(2005)
英語題:The Perfect Fishplate (A.K.A. A Perfect Red Snapper Dish)

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 『チェイサー』(2008)、『哀しき獣』(2010)のナ・ホンジン監督が2005年に撮り上げた約10分の短編映画。偏執狂的なまでの完璧主義に取り憑かれた若きシェフの悪戦苦闘を、『青春デンデケデケデケ』でおなじみザ・ベンチャーズの名曲「パイプライン」に乗せて、スピーディーかつコミカルに描く。デビュー作からしてすでに卓抜した演出力と完成度の高さを誇っているあたり、ナ・ホンジンという男の怪物ぶりが如実に見て取れるが、それ以上に、のちの監督の作風から考えると「こんなに若々しい映画を作っていた頃もあったのか!」と驚かずにいられない内容。ノリはとことん軽く、かなりブラックとはいえ明快なユーモアに溢れた「若気の至り感」が楽しい作品だ。

 主人公を演じるのは、オムニバス映画『隣りのゾンビ』(2008)のオ・ヨンドゥ監督編「逃げよう」にも主演していたペ・ヨングン。撮影・照明は『チェイサー』と『哀しき獣』でも組むイ・ソンジェが手がけ、ムーディーで艶のある映像を創り出している。

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〈おはなし〉
 厨房でグースカ居眠りしている、ひとりの若い料理人(ペ・ヨングン)。そこに「完璧な鯛料理」というオーダーが入る。やる気に燃える料理人は、緻密な調理の公式を書き出し、食材も手間も惜しまず、究極の美食作りにのめり込む。ところが、彼は大変な完璧主義者であるだけでなく、救いがたいドジでもあったのだ……。

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 台詞を一切排し、調理過程のアクションや予想外のトラブルを歯切れのいいカッティングでテンポよく見せる演出が心地好い。時折「繰り返し」の動作や構図を効果的に織り込みながら巧みに見せていく手法には、アニメ的なセンスも感じられる。細かなディテール描写も、いちいち巧い。ウェイトレスの女性が主人公にオーダーを伝える冒頭の場面で、小さな窓口から女の手がにゅっと伸びて呼び鈴をまさぐるという撮り方が、実に不気味かつヤラしくてイイ。短編映画の掴みとしては100点だ。

 途中で主人公が指を切り落としてしまったり、片目を失ってしまったりする暴力的かつ悪趣味なギャグには、今の僕らが知るナ・ホンジンらしさを分かりやすく感じることができる。どこかホラー映画めいたムードが漂う美術の過剰な作り込みにも、その「場」の空気感を醸成することにこだわる作風がすでに健在だ。ただ、肝心の料理がそれほど美味そうに見えないのがタマにキズ。その辺はアン・リーの『恋人たちの食卓』(1994)ぐらいのレベルを目指してほしかった(あれは見た目優先で実際は全然食えなかったらしいけど)。

 この作品は第4回ミジャンセン短編映画祭「絶対悪夢」部門グランプリという栄誉を勝ち取ったほか、ハワイ国際映画祭、RESFEST 2006、インターフィルム・ベルリン国際短編映画祭など、海外の映画祭でも頻繁に上映された。日本でもRESFESTの1プログラム「SHORTS ONE」で上映されている。続く2本目の短編『汗』(2007)も高く評価されたナ・ホンジンは、各映画会社の注目の的となり、間もなく衝撃作『チェイサー』で長編デビューを果たすことになる。ちなみに『完璧な鯛料理』本編の映像は原題でググれば意外と簡単に見つかる(たとえばココ)。台詞はなく無字幕でも楽しめるので、興味がある方は観てほしい。

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「映画の必修科目02 激辛韓流映画100」近日発売!

 来る12月14日、洋泉社さんから「映画秘宝EX 映画の必修科目02 激辛韓流映画100」というムックが発売されます。これは今年9月に発売された「仰天カルト・ムービー100」に続く「映画の必修科目」シリーズ第2弾で、10~20代の映画ファン初心者をメインターゲットに、この10年モーレツかつキョーレツな勢いで躍進を続けてきた韓国映画の必見作を紹介する1冊です。もちろん30代以上の読者も楽しめる内容の濃さもありますし、コアな「映画秘宝」読者でもスルーしがちな韓国映画の隠れた秀作群についても網羅した、本格的入門書になっていると思います。

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「映画秘宝EX 映画の必修科目02 激辛韓流映画100」
定価:1,260円 洋泉社刊 [Amazon]
発売日:12月14日

・インタビュー(二階堂ふみ、ナ・ホンジン、松江哲明、イ・チャンドン)
・作品紹介100本(バイオレンス、南北問題、アクション・大作系、青春・コメディ、男女関係、ドラマ etc.)
・コラム(韓国映画のキーパーソン、反日映画の世界、キム・ギヨン、日韓コラボ、未公開傑作選 etc.)

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 秘宝ライター陣イチオシの必見作として掲載されている100本は、韓国映画のモードを一変させた『シュリ』が公開された1999年前後から、2011年現在までに作られた日本公開作品(DVDスルー含む)の中からセレクト。ぼくは以下の29タイトルの作品紹介を担当しました。

『NOWHERE 情け容赦なし』 『友へ チング』 『甘い人生』 『哀しき獣』 『JSA』 『クロッシング』 『義兄弟 SECRET REUNION』 『タチャ イカサマ師』 『チョン・ウチ 時空道士』 『少女たちの遺言』『顔のない女』 『M(エム)』 『渇き』 『生き残るための3つの取引』 『バンジージャンプする』 『彼とわたしの漂流日記』 『クワイエット・ファミリー』 『達磨よ、遊ぼう!』 『木浦(モッポ)は港だ』 『楽しき人生』 『GOGO70s』 『僕たちはバンドゥビ』 『エイリアン・ビキニの侵略』 『王の男』 『熱血男児』 『ラジオスター』 『光州5・18』 『あなたは遠いところに』 『ポエトリー アグネスの詩』

 そして、巻頭カラーページでは2本のインタビュー記事も担当しております。1本目は「韓国暴力映画の一番星 ナ・ホンジン監督が語る『哀しき獣』壮絶舞台裏」。衝撃のデビュー作『チェイサー』に続いて超重量級の傑作バイオレンス・ノワール『哀しき獣』を放った若き鬼才ナ・ホンジン──その実像は、実録犯罪談義とブラックジョークが大好きな、いたって気さくなあんちゃんでした(笑)。そして2本目は「松江哲明が見た韓国映画躍進史」。ちょうど韓国映画が『シュリ』以降メキメキと頭角を現してきた頃、時同じくして『あんにょんキムチ』でデビューを飾り、現在まで幅広いフィールドで活躍している松江哲明監督に、ここ10年の韓国映画事情について縦横無尽に語っていただきました。

 また、コラムのコーナーでは「日本発禁!? 反日映画の世界」と「この未公開作を観せろ! 知られざる激辛傑作群」の2題を担当。前者では、イ・ドゥヨン監督の抗日テコンドー・アクションから『ユリョン』『韓半島』といった最近の作品までとりあげ、韓国における反日娯楽映画史とその代表作をピックアップ。後者では、ファン・ジョンミン&リュ・スンボム共演のピカレスク・ノワール・アクション『死生決断』をはじめ、キム・ヒョンソク監督の傑作コメディ『スカウト』、横溝正史風の猟奇ミステリー『影の殺人』など、今からでもいいから日本公開してくれ! と声を大にして主張したい未公開の秀作群を紹介しています。

 今回は「企画協力」というクレジットもいただいております。自分から「あれも入れたい、これも入れたい」「こんなネタで書きたい」と後先考えず提案しまくったおかげで、作業量がエラいことになってしまったというだけなのですが、ガッツリ関わることができて楽しかったです。魂削るつもりで頑張ったので、よろしくお願いします!

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