Simply Dead

映画の感想文。

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『渇き』(2009)

『渇き』
原題:박쥐(2009)
英語題:Thirst

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 最高!! マジ最高!!!!!! 超マジ最高!!!!!!!!!!!

 東京国際映画祭で『復讐者に憐れみを』(2002)を初めて観た時、この監督には一生ついていこうと心に決め、そして韓国映画シーンからも絶対に目を離すまいと誓った身としては、本当に2度目のエポックが訪れたと言っていい大傑作だった。これでもう今年のベストワンは決まった!

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 本作はパク・チャヌク監督が『JSA』(2000)の頃から温め続けてきた念願の企画であり、初の本格的ホラー映画である。10年間じっくり煮込んだ鬼才の渾身作であるからして、もちろんその内容は一筋縄ではいかない。ソン・ガンホ演じる主人公の神父は、ある理由から人間の血を糧としなければ生きていけない身となり、さらに己の人生を一変させる運命の女性とも出逢ってしまう。光と闇、エロスとタナトス、信仰とマゾヒズム、良心の呵責と罪の快楽。表裏一体のアンビヴァレンツが濃密にせめぎあう中、シネマスコープの画面には真紅の血の華が盛大に咲き乱れ、蒼ざめた死体の山が累々と築かれる。一瞬スガシカオと見分けがつかないくらいスリムになったソン・ガンホの熱演、血まみれ野獣系ファム・ファタールを演じるキム・オクビンの美貌と壊れっぷりが素晴らしい。おなじみ常連俳優オ・ダルスや、出てくるだけで面白いシン・ハギュンら、脇を固めるキャストの充血じゃなかった充実も大きな見どころ。パク・チャヌク作品になくてはならない、お茶目で残酷なブラックユーモアも当然てんこ盛りだ。

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 とにかくホントに腰が抜けるほど面白くって、いまだに興奮冷めやらず、いつにもまして脳内辞書がウンともスンとも状態なので全然うまく説明ができないのだけど……ひとつだけ。本作は原作として、エミール・ゾラの古典小説「テレーズ・ラカン」をモチーフにしている。この先『渇き』を観ようと思っている人は、そのあらすじだけでも、事前に知っておいた方がいいかもしれない。もちろん、なんの予備知識も持たずにパク・チャヌクの新作に接したい人もいるだろうから、万人にはお勧めしない。しかし個人的には、原作の「テレーズ・ラカン」がどんな内容かを呑み込んでいれば、10倍くらい楽しく観られる映画だと思う。

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 あとまあ、なんたって今回の『渇き』が自分にとって特別なのは、ついに
パク・チャヌク監督本人にインタビューさせていただいたってことが、やっぱり大きいんスよねえ……。

 というわけで来年1月発売予定の「TRASH-UP!! Vol.5」をお楽しみに! そして『渇き』日本公開は来年2月! 言うまでもなく必見!!

・Amazon.co.jp
DVD『渇き』
本「初期名作集 ゾラ・セレクション (1)」※原作『テレーズ・ラカン』所収
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近況(仕事してました)

 ハイ、ごぶんさたしております。このところ全く更新が滞っておりまして、誠に申し訳ありませんでした。なぜ放置状態になっていたのかというと、ものすごく仕事が忙しかったからです(つまんない理由ですみません)。もう少ししたら余裕が持てると思いますので、今しばらくお待ちください。欲しいDVDリストも、まとめてやります。

 さて、一体何をやっていたかと申しますと、12月中旬に発売される「PLUS MADHOUSE 04 りんたろう」(キネマ旬報社刊)という本の編集作業に携わっておりました(まだ絶賛作業中なんですが)。そのキャリアがそのまま日本アニメ史の歩みと重なる、巨匠・りんたろう監督の特集本です。監督ご本人が少年時代から現在までを語り明かした「ロングインタビュー」、監督ゆかりの方々に貴重なお話をうかがった「関係者コメント」、そして「主要作品解説」「完全プロフィールデータ」「スペシャルコラム」などを掲載。はっきり言って、とてつもなく面白い本になります。日本の映画史・映像文化史に少しでも興味のある方なら、ぜひ読んでいただきたい一冊です。発売日等、いろいろ確定しましたら改めてご紹介します。お楽しみに。

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▼同シリーズ「PLUS MADHOUSE 02 川尻善昭」も発売中!
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 来る12月23日からは、りん監督の最新作『よなよなペンギン』が全国劇場にて公開。それに先立ち、12月5日に池袋・新文芸坐にてオールナイトイベント「新文芸坐×アニメスタイル セレクション Vol.4 マッドハウス・マニアックス」が開催されます。上映作品は、りん監督の『カムイの剣』『X』、そして平田敏夫監督の『ボビーに首ったけ』『グリム童話 金の鳥』の4本。スクリーンにかかる機会が少ない作品ばかりなので、この機を逃すと次はないかも? という貴重な上映です。

 『カムイの剣』は、角川春樹プロデュースによる時代劇アクション大河ロマンの傑作。真田広之の好演、『AKIRA』に決定的影響を及ぼした宇崎竜童+林英哲の音楽も最高です。『X』は上映時間98分の間に、人体も都市も可能な限りデストロイ! という痛快至極な一編。平田監督の『ボビー』『金の鳥』も瑞々しさ溢れる秀作なので、未見の方はぜひ。トークゲストとして、りんたろう監督、平田敏夫監督が来場予定。チケットは新文芸坐チケットぴあにて発売中です(前売2300円、当日2500円)。

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 そんな中、クエンティン・タランティーノ監督の新作『イングロリアス・バスターズ』がいよいよ全国劇場にて封切られましたが、時同じくして「別冊映画秘宝『イングロリアス・バスターズ』映画大作戦!」も洋泉社様より絶賛発売中であります。そこになんと、わたくし、ライターとして参加しておるのでございます(なんだこの口調)。お題はレニ・リーフェンシュタール監督のナチ・プロパガンダ映画『意志の勝利』。ついに憧れの秘宝デビュー! というプレッシャーの中でビビりまくりつつ、夏に書いた『意志の勝利』劇場パンフ用の原稿とは全然違うものを書こうと意気込んでたんですが、気合いを入れすぎて方向性を見失い、すったもんだの挙句にさして変わり映えしない内容に……鳴呼……。しかし、こんな栄誉ある機会を与えていただき、自分の非力はさておいて、感謝しております。

 ぼくの原稿なんざ読み飛ばしてしまってかまいませんが、この本が映画ファン必携の超弩級の一冊であることは火を見るより明らかです。町山智浩さんによる大ボリュームの関係者インタビューを始め、錚々たる執筆陣の超重量級テキストが満載。最高に楽しい本なので、ぜひお買い上げください!

 来年発売の「TRASH-UP!! vol.5」の準備もすでに始まっております。無間地獄という言葉が脳裏をよぎりますが、それが人生ってもんでしょう。ではまた!

『凶悪犯』(1966)

『凶悪犯』
原題:Brigade Anti-Gangs(1966)

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 フランス犯罪小説の大家、オーギュスト・ル・ブルトンが原作・脚色を手がけた犯罪アクションスリラー。監督は『情報は俺が貰った』(1959)や『アンジェリク』シリーズのベルナール・ボルドリー。パッケージに「男の美学を追究したフィルムノワールの傑作」みたいな事が書いてあったから、渋めの映画なのかと思ったら全然違った。オープニングでミシェル・マーニュ作曲のやけにアッパーなテーマが流れた時点で「ん?」と思ったけど、とにかくサービス満点の娯楽作で、それはそれで非常に面白かった。

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〈おはなし〉
 白昼、パリ市内で銀行強盗事件が発生。かねてより強盗団をマークしていたル・ゴフ警部(ロベール・オッセン)率いる刑事たちは、激しい銃撃戦の末、犯人グループの逃走を許してしまう。数時間後、レストラン経営者サルテ(レイモン・ペルグラン)が重要参考人として連行される。その時、サルテは愛娘のマルティーヌ(キャロル・ルベル)に、銀行から奪った金の隠し場所をそっと耳打ちした。父親が本当にギャングだと知り、ショックを受けるマルティーヌ。その夜、彼女は元アイドルの恋人アップル(ピエール・クレマンティ)と共に、金の入ったスーツケースを取りに行く。そこには大量の銃も入っていた。

 アップルは大金と豊富な武器に目がくらみ、再び一花咲かせようと、仲間たちを引き連れて警察襲撃を企む。マルティーヌの父親を権力の犬どもから奪い返すのだ。若者たちはサルテが拘留されている警察署に乗り込み、壮絶な修羅場を繰り広げる。銃弾が雨と降り、おびただしい血が流れる。結局、サルテの奪還は失敗に終わり、アップル一味はなんとか逃げ出すが、警官殺しの現行犯という決定的な罪を背負ってしまう。サルテの正体もバレてしまった。が、アップルは次にサッカー場へ向かい、ル・ゴフ警部の弟で国民的サッカー選手のジョビック(ガブリエレ・ティンティ)を誘拐。サルテの釈放を要求するが……。

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 ル・ブルトン、ボルドリー、そしてフランシス・コーヌが共作したシナリオは、ノワール的なストイシズムや硬質さとは正反対ながら、なかなかの逸品。犯罪スリラー、刑事アクション、ラブストーリー、ファミリードラマ、さらにヌーヴェル・ヴァーグ調の無軌道な青春群像劇など、さまざまな要素がごった煮状態で詰め込まれ、あの手この手で次から次へと新展開がたたみかけられるので、観ている間まったく退屈しない。ピンボール的に連鎖していく人間関係も面白く、ご都合主義的なところもスピーディーな語り口で乗り切ってしまう。

 犯罪アクション映画としての視覚的な見せ場も多い。特に、呆気にとられるほど無鉄砲な警察署襲撃シーンは、ちょっと昔の映画とは思えないくらいアナーキーな興奮に満ちている。クライマックスの人質交換シーンにおけるスリルも相当なものだ。警察ものとしては『七人の刑事』風というか、日本の古き良き刑事ドラマにも通じるムードもある。昔気質の冷酷なギャングと若いチンピラ集団との対比、両者が交錯するところに流れる緊張感は、『いつかギラギラする日』(1992)も思い出させた。

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 登場人物もそれぞれ魅力的。特に、元イエイエのアイドルで、かつての栄光が忘れられず、ふとしたきっかけで凶行に走っていく青年アップルの無軌道ぶりと安っぽい悲哀がいい。こういう現代的なキャラクターを、クラシカルな犯罪映画の枠の中に突っ込んで、お手軽に新味を加えてみようという非常に分かりやすい魂胆ながら、本作の場合はそれがうまくいっている。

 主演は『傷だらけの用心棒』(1968)のロベール・オッセン。いわゆる「デカ長」的な役柄で、ひたすら渋い存在感を醸し出しているが、『夜の放蕩者』(1969)とか変な映画にもよく出ている人である。アップル役に扮したピエール・クレマンティの個性と好演も印象に残る。娘思いの父親と非情なギャングという二面性を持つレイモン・ペルグランの酷薄な感じもナイス。キャロル・ルベルをはじめ女優陣も綺麗どころが揃っていて、目に楽しい。また、おとぼけキャラ的な刑事役で、ルイ・ド・フュネス主演の喜劇映画や『サブウェイ』(1985)などでおなじみのミシェル・ガラブリューが登場するのだが、映画が始まって10分程度でいきなり殉職してしまう。ただの顔見せだったのか……。

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 ジャン=ピエール・メルヴィル作品みたいな、いぶし銀の魅力で迫るフィルムノワールを期待すると、あまりのゴラク味に胸焼けするかもしれない。でも、こういうなりふり構わないエンタテインメントが、フランス映画にも昔からちゃんとあったことは、年に一回ぐらい思い出しておきたい。なかなかの拾い物だった。

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