Simply Dead

映画の感想文。

欲しいDVDリスト・国内編[2008.6]

20weekslater_jpdvd.jpg

 月に買っていいDVDは5枚まで! という約束が全然守れない、欲しいものリストのお時間です。今回は6月リリースの国内版DVDから、いくつか気になるタイトルをつらつらと。楽しみなのは、今年のベストの1本である『28週後…』特別編と、湯浅政明監督の最新TVシリーズ『カイバ』Vol.1。後者は現在WOWOWでオンエア中ですが、毎回泣かされてます。あと8月には、オリヴィエ・アサイヤス監督/アーシア・アルジェント主演の『レディアサシン』と、『ヘザース』の脚本家ダニエル・ウォーターズがウィノナ・ライダー主演で監督した『セックス・カウントダウン』がソフト化。各商品タイトルのリンク先は、Amazon.co.jp。

●2008.6.6発売
freeway_re-release.jpg

『フリーウェイ』ニューマスター版(1996)
「TRASH UP!!」にも監督論を書かせていただいた、鬼才マシュー・ブライトの傑作『連鎖犯罪』が、ものすごくダサいジャケットで改題再発売! リース・ウィザースプーンの出世作であり、『ダークシティ』と並ぶキーファー・サザーランド怪優時代の代表作である。HDリマスター、新録吹替つき。『24 -twenty four-』のジャック・バウアー役・小山力也が変態殺人鬼ボブを熱演してるのが売り……になるのか? 【追記】東宝版には入っていた監督のオーディオコメンタリー、予告編などの特典は未収録だそうです。ガッカリ。(ジェネオン)

『28週後…』特別編(2007)
今年の暫定ベスト1。感想はこちら。DVDにはフアン・カルロス・フレスナディージョ監督と、製作のエンリケ・ロペス・ラビニュによる音声解説つき。2つの未公開シーン、メイキング映像集、グラフィックノベル、予告編を収録。前作『28日後…』とのパックBlu-ray版もあり。(20世紀フォックス)

『ヒドゥン』&『ヒドゥン2』ツインパック
ジャック・ショルダー監督の傑作SFアクション『ヒドゥン』が待望の再リリース。今回はオーディオコメンタリーつき。ついでに大幅スケールダウンの続編『ヒドゥン2』も同梱。こっちはまあ映像特典だと思って……。(ギャガ・コミュニケーションズ)

『カリギュラ《ヘア解禁版》』(1980)
「ペントハウス」親玉ボブ・グッチョーネが巨額のバジェットを投じて製作した大作ポルノ史劇が、ヘア解禁版・HDリマスターで復活。『フラッシュ・ゴードン』のセットデザインも手がけたダニロ・ドナティの狂った美術センスが全編に炸裂。マルコム・マクダウェル、ピーター・オトゥール、ヘレン・ミレンなど豪華キャストの競演も見もの。撮影中は全員これがハードコアポルノ映画になるとは知らされていなかったという。(ギャガ・コミュニケーションズ)

『カリギュラ』インペリアル・エディション4枚組BOX(1980)
いまだに映画ファンの間で邪な興味をかきたて続ける問題作『カリギュラ』の超豪華版DVD-BOX。公開版本編を始め、製作者ボブ・グッチョーネによってハードコアポルノに改ざんされる前のファーストカット・バージョン、メイキングやインタビュー、未公開シーンなど、膨大な量の映像特典を収録した4枚組。ファーストカット版にはマルコム・マクダウェルとヘレン・ミレンによるオーディオコメンタリーが収録されるそうで、これは貴重。(ギャガ・コミュニケーションズ)


●2008.6.7発売
佐藤真監督作品BOX
昨年惜しくも世を去ったドキュメンタリー作家・佐藤真監督の作品を集めたDVD-BOX。収録作品は『阿賀に生きる』『まひるのほし』『SELF AND OTHERS』『花子』『阿賀の記憶』『保育園の日曜日』『女神様からの手紙』。5月31日からの発売日変更。(紀伊國屋書店)


●2008.6.11発売
sweeny_todd_jpdvd.jpg

『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』特別版(2007)
ティム・バートン監督の趣味性とスタジオ映画作家としての力量がとことん発揮された秀作。殺人理髪師スウィーニー・トッドの血塗られた復讐劇と悲劇を、ジョニー・デップ、ヘレナ・ボナム・カーターという最高の共犯者を得て、堂々たる愛憎ミュージカルドラマとして描ききっている。2枚組DVDには2時間に及ぶ映像特典を収録。Blu-ray版、数量限定生産のブックレット付きプレミアム・ボックスも同時リリース。(ワーナー)

『ブレードランナー《ファイナルカット》』Blu-ray(1982-2007)
発売延期になっていた『ブレードランナー ファイナルカット』Blu-ray版がようやく発売(DVDも同時発売)。まだプレイヤーを持ってないので、画質の差がどれほどかは分からないけど、劇場であれだけのクオリティを発揮できるなら、さぞや……と思う。昨年発売されたDVD-BOXを買い渋っている人にはおすすめ。特典に収録されている、とてつもないボリュームの力作ドキュメンタリー『デンジャラス・デイズ』はファン必見。(ワーナー)

『TSUNAMI ―津波―』(2007)
2004年に起きたスマトラ沖大地震による大津波の悲劇を、欧米人の視点から描いた3時間のTVムービー。出演はティム・ロス、トニ・コレット、ソフィー・オコネドー、キウェテル・イジョフォーなど。監督はアクションスリラーの佳作『キリング・タイム』(1994)でデビューしたバハラット・ナルルーリ。(ワーナー)


●2008.6.12発売
ジャン=リュック・ゴダール フィルム・コレクション
『小さな兵隊』『気狂いピエロ』『パッション』の3作品と特典ディスクを収録した4枚組DVD-BOX。特典ディスクには「THE DINOSAUR AND THE BABY」(ゴダールとフリッツ・ラングの対談/60分)、「LUC ON JEAN-LUC」(ゴダールの旧友で評論家でもあるリュック・ムレ監督による短編/8分)、「GODARD: LOVE AND POETRY」(ゴダールの私生活と映画製作の様子を5年間にわたり描いたドキュメンタリー/56分)を収録。初回限定生産。(ユニバーサル・ピクチャーズ)

『シャラコ』(1968)
ショーン・コネリーとブリジット・バルドーが共演した西部劇が初DVD化。未開の地ニューメキシコを舞台に、ヨーロッパからやってきた美しい未亡人と、白人とインディアンの混血児シャラコの交流を描く。ヨーロッパのスターを主演に招いて新味を狙った末期的作品。監督は『折れた槍』のエドワード・ドミトリク。(ユニバーサル・ピクチャーズ)


●2008.6.13発売
lastemperor_jpdvd.jpg

『ラストエンペラー』ディレクターズカット版(1987)
イタリアの巨匠、ベルナルド・ベルトルッチが描く、清朝最後の皇帝・溥儀の波乱に満ちた生涯。アカデミー賞を総なめにしたスペクタクル大作の、約3時間40分に及ぶ長尺版が初リリース。厳密にはディレクターズ・カットではなく、TV放映用の別バージョンだが、よりじっくり作品世界に浸りたい人にはこちらの方がおすすめ。(東北新社)

『ヒート』プレミアム・エディション(1995)
マイケル・マン監督による傑作クライムアクションドラマが待望の2枚組豪華版で再リリース。本編は銃撃戦の迫力を堪能できるDTS仕様、日本初公開のオーディオコメンタリーつき。特典ディスクには未公開シーン集、製作舞台裏に迫る各種ドキュメンタリーなど、106分に及ぶ映像特典を収録。(東北新社)

『L.A.コンフィデンシャル』製作10周年記念版(1998)
ジェームズ・エルロイの傑作小説をカーティス・ハンソン監督が映像化した力作が、HDリマスター版で再リリース。ガイ・ピアース、ラッセル・クロウのオーストラリア俳優勢の快演、そしてブライアン・ヘルゲランドの巧みな脚色が光る。40分に及ぶ特典映像も収録した2枚組。(東北新社)


●2008.6.21発売
toei_jiro-cho_jpdvd.jpg

『次郎長三国志』(1963)
マキノ雅弘監督が東映で手がけた『次郎長三国志』新4部作が、めでたく初ソフト化。鶴田浩二が次郎長に扮し、恋女房・お蝶に佐久間良子、子分たちには松方弘樹、津川雅彦、山城新伍、大木実、田中春男といった顔ぶれで、おなじみ清水一家の大活躍が描かれる。(東映)

『続 次郎長三国志』(1963)
東海道の兇状旅に、喧嘩と恋の花が咲く『次郎長』シリーズ第2作。長門裕之扮する森の石松も加わり、次郎長一家の物語はいよいよ盛り上がっていく。石松が惚れるヒロイン・お仲を演じるのは、丘さとみ。法印大五郎役の名バイプレイヤー・田中春夫は、東宝版に引き続いての出演。(東映)

『次郎長三国志 第三部』(1964)
ついに清水に看板をあげた次郎長一家は、義兄の賭場を荒らす勝蔵一味に立ち向かう。東映版『次郎長』シリーズ第3作。鬼吉と綱五郎に惚れられる料理屋の娘・お千ちゃんを演じているのは、デビューしたばかりの藤純子。(東映)

『次郎長三国志 甲州路殴り込み』(1965)
囚われのお仲を救うべく、次郎長一家は一路甲州へ! 東映版『次郎長』シリーズ最終作。佐久間良子、安城百合子、南田洋子ら豪華女優陣が華を添える。本作のみ、関東綱五郎役は松方弘樹から曽根晴美にバトンタッチ。(東映)

『恋極道』(1997)
奥田瑛二と望月六郎監督コンビによる、異色アウトローヤクザ映画の傑作が初DVD化。東京の女子大生に一目ぼれしてしまった大阪の中年ヤクザの純愛物語を、切々と綴る。ヒロイン役の夏生ゆうなの熱演、主人公の親友に扮したオール巨人の好演が印象的。音楽は憂歌団。(東映)


●2008.6.25発売
kaiba_first_jpdvd.jpg

『カイバ』Vol.1(2008)
現在WOWOWでオンエア中のTVシリーズが、早くもDVDでリリース開始。『MINDGAME』『ケモノヅメ』の湯浅政明監督が放つ、異色のSF冒険アニメ。意識と肉体の分離が可能になった世界で、記憶をなくした主人公カイバがさまざまな人々の体を転々とし、自分の正体を探るため星々をめぐっていく。かわいらしい絵柄とは一見ギャップの激しい、残酷なペーソスと深みのあるストーリーが魅力。第1?2話を収録したVol.1には、サウンドトラックCDも同梱。(VAP)

『バロン』デラックス・コレクターズ・エディション(1989)
テリー・ギリアム監督が「ほらふき男爵の冒険」を映画化したファンタジー大作が、ファン待望の2枚組デラックス仕様で再リリース。子どもの頃、何度観たかしれない映画なので、今回のDVDリリースは嬉しい(もちろんスペシャルコレクションLDも持ってるんだけど)。見どころは未撮影に終わったシーンを、現存するストーリーボードと、ギリアムと共同脚本のチャールズ・マッキーワンによる朗読で再現するという実にしょうもない特典。(ソニーピクチャーズ)

『モンティ・パイソン ライブ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル』(1982)
1980年にハリウッドボウルで行われたパイソンズのライブを記録した長編映画。ライブだけあって出演者が思わず吹き出しちゃったりするハプニングが楽しい。幕間のニール・イネスの歌もナイス。前に出ていたソフトは画質がメタメタだったので、今回はよくなってると嬉しいんだけど……。(ソニーピクチャーズ)

『墓場鬼太郎』第三集(2008)
今回のシリーズで「キタ!」と思わず叫んだ傑作エピソード「水神様,」を始め、「人狼と幽霊列車」「怪奇一番勝負」の3話を収録。あれよあれよとローリングストーン状態で進んでいく展開の中で、登場人物があまりにそっけなく死んだりするブラックユーモアが楽しい。(角川エンタテインメント)

『曽根崎心中』(1978)
増村保造監督が梶芽衣子と宇崎竜童を主演に招き、近松門左衛門の名作浄瑠璃を映像化。パワフルな演出で男女の愛憎を描き続けた増村監督の最後の傑作であり、70年代ATGの代表作でもある。初DVD化。(ジェネオン)


●2008.6.27発売
poisonivy_jpdvd.jpg

『ボディヒート』アンレイテッド・エディション(1992)
当時17歳のドリュー・バリモアが魔性の美少女を演じたエロティック・スリラーが、日本初公開の「アンレイテッド版」でリリース。監督は『キャリー2』のカット・シーア・ルーベン。アリッサ・ミラノ主演の無関係な続編『ボディヒート2 ?挑発?』も同時リリース。(ハピネット・ピクチャーズ)


●2008.6.27発売
『ラテンアメリカ 光と影の詩』(1993)
アルゼンチンの名匠フェルナンド・E・ソラナス監督の最高傑作が初DVD化。実の父親を捜して南米大陸横断の旅に出た青年の旅を、瑞々しく描くロードムービー。南米における様々な社会問題を映し出すドラマが、マジックリアリズムの薫る幻惑的な語り口と、大自然を背景にした美しい映像で綴られていく。(紀伊國屋書店)

『幽霊屋敷の蛇淫』(1964)
ひょんなことから朽ち果てた古城で一夜を過ごすことになった若き記者が、そこで絶世の美女と出会う。だが、彼女はすでに死んでいた……。イタリアの職人監督アントニオ・マルゲリーティが手がけた、ムーディーな怪奇ホラー。モノクロ映像に浮かび上がるこの世ならぬヒロイン、バーバラ・スティールの美貌にうっとり。黒沢清×篠崎誠×遠山純生による「ホラー映画談義」を収録した解説リーフレットを封入。(紀伊國屋書店)

『顔のない殺人鬼』(1963)
古城に出没する異貌の怪人は、夜な夜な美女の顔を破壊して回る――その正体は? アントニオ・マルゲリーティ監督のゴシックムード漂う怪奇スリラー。ヒロインを演じるのは、製作者マルコ・ヴィカリオの妻で、『黄金の七人』シリーズでもおなじみのロッサナ・ポデスタ。不気味な守衛に扮するのは世界を股にかける怪奇映画スター、クリストファー・リー。拷問器具を使った凝った殺人シーンが見もの。(紀伊國屋書店)

『殺人容疑者』(1952)
警視庁、国警本部、科学捜査研究所の後援で作られた、セミドキュメンタリータッチの犯罪捜査もの。監督をつとめたのは東宝スリラー映画の雄・鈴木英夫で、主演は当時無名だった若き日の丹波哲郎、土屋嘉男。日本映画史的にも貴重な1本。もちろん初ソフト化。(紀伊國屋書店)


●2008年7月以降リリースの注目タイトル
『Genius Party』(TCエンタテインメント)7月2日発売
『呉清源 極みの棋譜』(エスピーオー)7月2日発売
『グッバイ・キス ―裏切りの銃弾―』(ジェネオン)7月4日発売
『ミリキタニの猫』(アップリンク)7月4日発売
『潜水服は蝶の夢を見る』特別版(角川エンタテインメント)7月4日発売
『瘋癲老人日記』(角川エンタテインメント)7月4日発売
『ドキュメント「超」怖い話 ?都市伝説編?II』(竹書房)7月4日発売
『デイ・ウォッチ』ディレクターズ・カット(20世紀フォックス)7月4日発売
『ナイト・ウォッチ』&『デイ・ウォッチ』ディレクターズ・カット DVD-BOX(20世紀フォックス)7月4日発売
『ナイト・ウォッチ』&『デイ・ウォッチ』Blu-ray Disc BOX(20世紀フォックス)7月4日発売
『ダーティハリー』アルティメット・コレクターズ・エディション(ワーナー)7月9日発売
『ジェシー・ジェームズの暗殺』特別版(ワーナー)7月9日発売
『ブレインダメージ』(キングレコード)7月9日発売
『フランケンフッカー』(キングレコード)7月9日発売
『鬼太郎が見た玉砕 ?水木しげるの戦争?』(ポニーキャニオン)7月16日発売
『墓場鬼太郎』第四集(角川エンタテインメント)7月23日発売
「帰ってきた東宝ゴクラク座 DVD-BOX」(東宝)7月25日発売
『君も出世ができる』(東宝)7月25日発売
『100発100中』+『100発100中 黄金の眼』ツインパック(東宝)7月25日発売
『地球爆破作戦』(ユニバーサル・ピクチャーズ)8月7日発売
『1941』(ユニバーサル・ピクチャーズ)8月7日発売
『キングコング(1976年版)』(ユニバーサル・ピクチャーズ)8月7日発売
『ニューヨーク1997』(ユニバーサル・ピクチャーズ)8月7日発売
『ウィッカーマン(1973年版)』(ユニバーサル・ピクチャーズ)8月7日発売
『追悼のメロディ』(ユニバーサル・ピクチャーズ)8月7日発売
『雨のしのび逢い』(ユニバーサル・ピクチャーズ)8月7日発売
『大追跡』(ユニバーサル・ピクチャーズ)8月7日発売
『女番長ブルース 牝蜂の逆襲』(東映)8月8日発売
『女番長ブルース 牝蜂の挑戦』(東映)8月8日発売
『レディアサシン』(タキ・コーポレーション)8月8日発売
『セックス・カウントダウン』(ポニーキャニオン)8月20日発売
『全然大丈夫』特別版(ポニーキャニオン)8月29日発売
『さば』(ポニーキャニオン)8月29日発売

スポンサーサイト

『Le Createur』(1999)

『Le Createur』(1999)

createur_dvd.jpg

〈おはなし〉
 ノイローゼにかかって転地療養していた売れっ子劇作家・ダリウス(アルベール・デュポンテル)。パリに戻った彼を待っていたのは、新たな締め切り地獄だった。すでに主演女優(クロード・ペロン)も決まり、そろそろ稽古を始めなければならない。が、ダリウスはもはや一行たりとも書けない体になっていた……。

 プレッシャーにもがき苦しむ彼は、ある時はずみで隣家の飼い猫を死なせてしまう。すると、パソコンに新作の出だしが書いてあるではないか! 恐るべき法則に気付いたダリウスは、創作のため、自分の作家としてのアイデンティティを守るため、次々と殺しを重ねていく。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

 『ベルニー』(1996)で注目された才人、アルベール・デュポンテルが再び監督・主演を務めたブラックコメディ。英語字幕もないフランス盤DVDで無理やり観たので、台詞の妙とかも全く分からず、ちゃんと観たとは言えない。でも、視覚的な演出が多くて話も分かりやすく、面白かった。

 スランプに陥った作家の狂気という『バートン・フィンク』(1991)を思わせるテーマを扱った本作では、前作『ベルニー』の過激さは影を潜めているかのように見える。が、おどおどした被害者キャラだった主人公が、やがて破れかぶれな殺戮者となる『ドリラー・キラー』(1979)のごとき展開は、やっぱりデュポンテルならでは。一線を越えた危険なブラックユーモアの世界に突入していくのが楽しい。

createur_dupontel.jpg

 主人公は臆病な自分を守るため、変装も兼ねて甲冑を着込んで蛮行を繰り返す。その滑稽な姿はさながらドン・キホーテのよう。立ち向かう敵は「創作の危機」という得体の知れない(だけど本当の正体はハッキリしている)脅威である。劇中1シーンだけ登場する神=万物の創造主(クリエイター)を演じたテリー・ジョーンズは、「これは自分に才能がないことを認めたくない作家の物語だ」と評する。『Le Createur』は“創造”を生業とする人たちにとって、きわめてリアルな危機感を残酷にえぐりだしたコメディなのではないか。

 どこまでも陰惨になりそうな話を、デュポンテルはあくまでスラップスティックに、滑稽なファンタジーとして映し出す。生々しく殺伐とした印象の強かった『ベルニー』に比べ、『Le Createur』は映像の質感もずっとリッチだし、ギャグも分かりやすい。だが、過激な本質は変わっていない。同情を誘う不幸な主人公が、暴力によって生命力を取り戻し、同時に取り返しのつかない破滅に向かって邁進する、というストーリーの不謹慎な高揚感は、観客をしっかり秩序の向こう側へ連れて行ってくれる。

createur_dupontel02.jpg

 主人公にプレッシャーをかける大女優クロエを演じているのは、デュポンテルのパートナー、クロード・ペロン。『ベルニー』で映画デビューした彼女は、本作、そして『Enfermes Dehors』(2006)と連続してヒロインを演じ、デュポンテル主演の犯罪スリラー『ブルー・レクイエム』(2004)でも共演している。また、デュポンテルがコメディアン時代にコンビを組んでいたミシェル・ヴュイエルモーズが、『フランケンシュタイン』のイゴールみたいな劇場の装置係の役で鬱陶しい怪演を見せている。

 映像的な面白さも見どころ。主人公の見る妄想や、テリー・ジョーンズ演じる神様の登場シーンなど、ファンタジックな場面もふんだんに織り交ぜ、おなじみの動物主観カメラ、パソコンのディスプレイの内側から見た映像など、変わった遊びもやっている。映画終盤、爆風に飛ばされて宙を舞う封筒を、延々とカメラが追いかけるというCGがあるのだけど、軌道や運動のディテールがあまりに見事で感動した。なかなかあんなに上手く作られたCGの具体物もないと思う。

createur_terry.jpg

・Albert Dupontel Official Site
http://www.albertdupontel.com/

・Amazon.fr
DVD『Le Createur』(フランス盤)

【“『Le Createur』(1999)”の続きを読む】

『秘密組織・非情の掟』(1974)

『秘密組織・非情の掟』
原題:The Nickel Ride(1974)

nickel_ride_poster.jpg

 ジェイソン・ミラーが『エクソシスト』(1973)の翌年に主演した暗黒街ドラマの佳作。製作・監督は『悪を呼ぶ少年』(1972)のロバート・マリガンで、脚本はのちに『インサイダー』(1999)などを手がけるエリック・ロス。撮影監督は『ブレードランナー』(1982)の名匠、ジョーダン・クローネンウェス。日本ではTV放映された。

 ミラー演じる主人公クーパーは、ニューヨークの下町で裏稼業を取り仕切り、住民の相談役として一目置かれている男。世間はどんどん世知辛くなり、面倒事は増えるばかりだが、それでも仲間や愛妻に支えられてなんとかやってきた。ところがある時、上部組織との関係に亀裂が入り、立場が悪くなった彼は、ほとぼりを冷ますために妻と休暇に出かける。が、そこに追手の影が……。

nickel_ride_birthday.jpg

 前半ではクーパーの誕生日を背景に、主人公を取り巻く人間模様を活写し、後半では彼がノイローゼに陥っていく姿を主観的演出でサスペンスフルに描いていく。通常の犯罪映画のように対立関係をカットバックで映したりすれば、神経質で用心深い主人公の行動もストーリー上の説得力をもつだろう。が、本作では徹底して主人公ひとりの目線に限定されているため、パラノイアックな内面だけが強調される。それは常に疑心暗鬼と隣り合わせで生きるしかないギャングのリアリティでもあるだろうし、シビアな現実社会で生きることに疲れた中年男の焦燥も重ねられている。

 そして、後半のショッキングな悪夢のシーンを境に、主人公クーパーは虚実を見失っていく。観客もまた同様に。現実か幻想か判別のつかない状態で導かれる、クライマックスの緊迫感が見事だ。その辺りのセンスは『殺しの分け前/ポイント・ブランク』(1967)や『グッドフェローズ』(1990)後半の錯綜感に近いが、ロバート・マリガンはそれを一切あざとく見せず、正攻法の演出で押しきるところが渋い。中年ギャングの憂愁を綴るような導入から、神経症的な心理劇に至り、フィルムノワールとして幕を閉じる。ジョン・G・アヴィルドセン監督の力作『セイブ・ザ・タイガー』(1973)を思い出した。

nickel_ride_couple.jpg

 やはり撮影監督ジョーダン・クローネンウェスの仕事が際立っている。それほど画質のよくない海賊版で観ても明白なほど、その光の作り方は独特だ。自然光も室内灯も、押しつけがましくないナチュラルなリアリティを感じさせながら、やたらと美しい。スモークなどを使って巧みに空気感をデザインし、人物の肌にもなめらかな光沢を持たせる技が随所に光る。暖色よりは明らかに寒色好みのクールな質感が、渋すぎるノワール世界を美しく満たしている(夫婦喧嘩のシーンとかそこまで綺麗に撮らんでもいいのに、とも思うけど)。なにげに犯罪スリラーとクローネンウェスの相性はよく、『ローリング・サンダー』(1977)、『男の傷』(1981)、そして『ステート・オブ・グレース』(1991)と傑作が多い。ちなみに本作の美術は『ブレードランナー』のローレンス・G・ポールだ。

nickel_ride_miller.jpg

 ジェイソン・ミラーは言うまでもなく素晴らしい。オールバックの中年ギャング姿がなかなかサマになっている。妻にひっぱたかれて反射的にぶん殴ってしまうアクションが、あまりに素早すぎて強烈(さすが元ボクサー、ってそれは『エクソシスト』の役柄か)。ぶん殴られても尽くし続ける薄幸妻サラを演じるのは、『ローリング・サンダー』のリンダ・ヘインズ。脇役のキャラクターもいちいち立っているが、中でも主人公の親友でバー&グリルを切り盛りするパディ役のヴィクター・フレンチが素晴らしかった。味のあるオヤジ俳優をやたら集めて自由な演技をさせるというのも70年代的だ。馴れ馴れしいテキサス男ターナーを演じる、サム・ペキンパー作品でおなじみの名脇役ボー・ホプキンスの芝居も印象に残る。

nickel_ride_bohopkins.jpg

 なお、この映画は1974年のカンヌ国際映画祭に出品されたが、同じ肌触りをもった(より分かりやすくパラノイアックな)フランシス・フォード・コッポラ監督の『カンバセーション/盗聴』(1974)にグランプリをかっさらわれた。以来、一度もソフト化されず、文字通り明暗を分ける結果となった。

【“『秘密組織・非情の掟』(1974)”の続きを読む】

『Enfermes Dehors』(2006)

『Enfermes Dehors』(2006)
英題:Locked Out

enfermes_dehors_poster.jpg

 最高!! 涙が出るほど笑った。ここ最近観たコメディの中では断トツの傑作。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
〈おはなし〉
 昔々、あるところにシンナー中毒のホームレス(アルベール・デュポンテル)が暮らしていた。ある日、彼は警官が川に身投げする現場に居合わせ、制服一式と拳銃を拾う。さっそく警察署に届けに行ったものの、「暖房に当たりたいだけのくせにツマラン嘘をつくな!」と冷たく追い返されてしまう。

 その時、彼は素晴らしいアイディアを思いついた。この制服で警官になりすまして、署の食堂でタダメシを食らおう! まんまとカフェテリアに潜り込み、久々に腹を満たした彼は、署内で憧れのポルノショップ店員(クロード・ペロン)と出くわす。彼女は義父母に幼い娘を奪い取られ、苦情を申し立てに来たのだが、なかなか聞き入れてもらえない。……困った市民を救うのが警察の義務じゃないか!

 かくてホームレスの男は制服のまま町へ飛び出し、警官としての力をフルに活用して、社会の悪を正そうとするのだが……?

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

enfermes_dehors_01.jpg

 監督・脚本・主演は、個性派俳優として知られるアルベール・デュポンテル。本作『Enfermes Dehors』は、カルトムービーになったデビュー作『ベルニー』(1996)、書けない劇作家の狂気を描いた『Le Createur』(1999)に次いで7年ぶりに手がけた、待望の監督第3作である。個人的には今のフランス映画界でいちばん才能溢れるクリエイターだと思っている(とにかく『ベルニー』は必見の歴史的超傑作)。役者としても、ジャック・オディアールやギャスパー・ノエ、ジャン=ピエール・ジュネといった一筋縄ではいかない監督たちの作品によく出ている実力派だが、最近は『地上5センチの恋』(2006)とか『モンテーニュ通りのカフェ』(2006)とか、やけにオサレな出演作が相次いでいて、正直そんなんどうでもいいから自分の映画だけ作っててください! と土下座して頼みたいくらいの才人なのだ。

enfermes_dehors_jump.jpg

 話はとてつもなくシンプル。「警官の服を拾ったホームレスが、ニセ警官となってムチャをする」。このお膳立てだけで、全編にわたって抱腹絶倒のスラップスティック・ギャグをたたみかけ、息つく暇を与えない。ドライブ感溢れるスピーディーな演出は前2作を凌ぐほどだ。過激な反骨精神と、腹の底から真っ黒なギャグセンス、切れ味鋭いバイオレンス描写は本作でも健在。それでいて、ファンタジックな童話性や可愛らしさも忘れないところに好感が持てる。やっぱりどこかに可愛げがあってこそ、本当にかっこいいと思えるから。

enfermes_dehors_roof.jpg

 人間を徹底して即物的にとらえたギャグが何しろ痛快。主人公がバイクと衝突してオモチャのようにすっ飛んでいく画が、どうしてこんなに楽しいの? と、プリミティブな笑いの神髄を思い出させてくれる。もちろんそこにはデュポンテル独自の間合いとカッティング術があり、容易に真似できるものではない。病院の屋上で繰り広げられるクリフハンガー的展開から『太陽を盗んだ男』ばりのスタントへ雪崩れこむ、サービス精神旺盛なアクションも素晴らしい。

 突拍子もない幻覚シーンや、動物の主観映像など、映像的にも面白いエフェクトが随所にちりばめられている。3作目にしていまだに表現への貪欲さを持ち続けている態度が頼もしい。その若々しさは今見ると90年代っぽいセンスなのかもしれないが、引き算思想だけでかっこつける若手や、持ち駒を使いまわすだけで安定してしまった商業作家たちとは一線を画している。

enfermes_dehors_claude.jpg

 『ベルニー』以来ずっとヒロインを演じ続けているパートナー、クロード・ペロンを始めとする常連俳優たちのハジケた演技も楽しい。主人公の勘違いでひどい目に遭う悪徳社長デュヴァルに扮したニコラ・マリエの力演が素晴らしい。祖父母に軟禁されてしまう女の子、ローラ・アルノーが本当に可愛く撮られているのもさすが。また、デュポンテルが敬愛するテリー・ジョーンズとテリー・ギリアムの特別出演も見逃せない(唖然とするほどクッダラナイ役で登場)。ジョーンズは『Le Createur』の神様役に続く登板である。

enfermes_dehors_02.jpg

 『ベルニー』や『Le Createur』には、ある種マニアックと言われても仕方ない毒気の強さがあったが、『Enfermes Dehors』は過激でありつつ単純明快なエンタテインメントに仕上がっている(主人公は頭のおかしいホームレスだけど)。こんなに面白い映画が未公開のままなんて、世の中間違ってるとしか思えない。『ホット・ファズ』のあとに公開するべきはこの映画じゃないの?

・Amazon.fr
DVD『Enfermes Dehors』(PAL?FR)

【“『Enfermes Dehors』(2006)”の続きを読む】

『愛をもとめて 素顔の貴婦人』(1989)

『愛をもとめて 素顔の貴婦人』
原題:La Vie et rien d'autre(1989)

La_Vie_rien_dautre01.jpg

 第一次大戦後のフランスで、身元不明の戦死者を捜索・統計する任務に奔走する仏軍将校デラプラン。そして、戦地から戻らない夫を探しにパリからやって来た上流階級の夫人イレーヌ。ふたりの出会いと束の間の交流を、ある村の群像劇の中に描いた秀作ドラマ。監督・共同脚本はベルトラン・タヴェルニエ。

 物語を数日間の出来事に凝縮し、片田舎の人間模様を連鎖形式でつぶさに描きながら、重苦しい状況下で惹かれ合っていく男女の葛藤、悲劇的な時代の空気を浮かび上がらせたシナリオが見事。今こういう熟達したドラマ運びをする映画って見当たらないのではないか。それぞれのキャラクター描写も魅力的で印象深い。台詞も痛烈にあけすけだったり、深みに富んでいたり、フランス映画の伝統と新しさが混在した独特のタッチが面白い。

La_Vie_rien_dautre_deux.jpg

 ぶっきらぼうで変わり者、恋に無器用なベテラン将校デラプランを、名優フィリップ・ノワレが好演。タヴェルニエとは『サン=ポールの時計職人』(1973)以来の名コンビであり、本作で2度目のセザール主演男優賞を獲得している。気丈でひたむきな貴婦人イレーヌを演じるのは、アラン・レネ作品でおなじみの女優サヴィーヌ・アゼマ。イレーヌと同じく行方不明の恋人を探し続ける村の女性アリスを演じるパスカル・ヴィニャルがいい。その他の村人や軍人たちを演じる役者も全員キャラが立っていて、強い印象を残す。また、70年代のクロード・シャブロル作品で主役を演じたミシェル・デュショーソワが、デラプランの上官役で顔を見せている。

La_Vie_rien_dautre02.jpg

 タヴェルニエという人は、日本ではわりとおとなしめの作品が多く輸入されているけど、実はその作品歴は幅広い。連続殺人鬼の刑事責任を問う裁判を描いた『判事と殺人者』(1976)、ジム・トンプスンのノワール小説『ポップ1280』を映画化した『Coup de Torchon』(1981)、父殺しの天使ベアトリスの物語を描いた『パッション・ベアトリス』(1987)など、血生臭い題材や、社会のタブーに切り込む気骨を持った監督でもある。本作では、戦死者の捜索・統計に精魂を傾ける男が主人公であり、大戦後の150万人にのぼる不明者の処理問題、灰と泥の中から死体や遺品を掘り出し続ける人々の日常が、リアルに淡々と描かれている。

La_Vie_rien_dautre03.jpg

 しかし、ドラマの作りはいたって繊細で味わい深い。全編、死体の話しかしていないのに、人々の日常はユーモアとペーソスに溢れ、グロテスクな直接的描写も皆無だ。繊細すぎて、わずかな機微を見落とすと、荒っぽい作劇と見られてしまう危うさすら持っている(個人的にはそれを単なるヘタとは言いたくない)。ミステリー風の展開も後半に用意されているが、明確な答えは最後まで避けられる。作家としての主張と、描きすぎることへの抵抗感が常にせめぎ合っている人なのだろう。元シネフィルならではというか。

 134分をこういったかたちで見せきる監督も珍しいと思った。やっぱりしばらく追い掛けていきたい。

【“『愛をもとめて 素顔の貴婦人』(1989)”の続きを読む】

FC2Ad