
金もないけど観る暇もない、あたしゃもすこし背がほしいDVDリストのお時間です。今回は5月に発売される国内版DVDと、6月以降リリース予定の注目タイトルをいくつか紹介。
『シルクハットの大親分』
や
『徳川セックス禁止令 色情大名』
などの鈴木則文監督作品が一挙に発売されるほか、
『モンティ・パイソン/ライフ・オブ・ブライアン』
も待望のノーカット版で初リリース! 岡本喜八監督の
『暗黒街』シリーズ
DVD化もファンには嬉しいニュースではないでしょうか。各商品タイトルのリンク先は、Amazon.co.jp。
●2008.5.2発売
『ドキュメント「超」怖い話 〜都市伝説編〜I』(2008)
他の追随を許さない恐怖の紡ぎ手、ホラー小説界の鬼才・平山夢明が、実在の心霊スポットを巡り歩くビデオ『ドキュメント「超」怖い話』が復活! 平山先生が軽快なトークを交えながら嬉々として禁忌の領域に踏み込んでいく、心霊ビデオの常識を超えたエンタテインメント。平山ファンはもちろん、その巧みな話術とクールな男ぶりに触れたことのない人は必見! メチャクチャ面白いから!(竹書房)
●2008.5.9発売『ノラ・ミャオ ザ・ハリケーン』(1971)
アンジェラ・マオに続いてキングレコードが放つ、女性クンフースター発掘シリーズ。今回は『ドラゴン怒りの鉄拳』などでブルース・リーの相手役を務めたノラ・ミャオの出演作を連続リリースする。本作『ザ・ハリケーン』は、彼女が江湖の女剣士を演じた武侠アクション。共演はニコラス・ツェーの父、パトリック・ツェー。『燃えよドラゴン』の悪役を演じたシー・キエンも出演している。監督はロー・ウェイ。(キングレコード)
『ノラ・ミャオ レディ・ブレイド』(1971)
ゴールデン・ハーベスト社の第1回オーディションで選ばれ、アンジェラ・マオと共に
『8人のドラゴン/天龍八将』
でデビューした女優、ノラ・ミャオの初主演映画。カラフルな衣装に身を包んだ最強の女剣士の活躍を描く武侠アクション。共演はジェームズ・ティエン、パトリック・ツェー。(キングレコード)
『ノラ・ミャオ クンフー・キッド』(1975)
潜入捜査ものにクンフーアクションを取り入れた、ロー・ウェイ監督の犯罪アクション映画。ノラ・ミャオがそれまでの清楚なイメージを覆す汚れ役を演じ、話題を呼んだ。共演はチャーリー・チャン、ティエン・フォン。(キングレコード)
●2008.5.21発売
『モンティ・パイソン/ライフ・オブ・ブライアン』完全版(1979)
恐れを知らぬコメディアン・ユニット「モンティ・パイソン」の面々が、ついにキリスト教を笑い飛ばしたコメディ映画の金字塔。西暦33年のエルサレムで、聖人に間違われてしまった平凡な青年ブライアンの悲喜劇を、抱腹絶倒のギャグと味わい深いペーソスをこめて描いた傑作。この映画を観て「♪Always look on the bright side of life」と口ずさまない人間はいないはず。これまで日本では数分カットされた吹き替え版しかソフト化されていなかったが、今回ようやくオリジナル英語音声のノーカット版で復活。さらに3時間以上もの特典映像と、山田康雄や広川太一郎の名演が光る吹き替え音声も収録した豪華2枚組でのリリース! ファンにとっては記念すべき大事件だ。(ソニーピクチャーズ)
『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』デラックス・コレクターズ・エディション(1975)
「アーサー王と円卓の騎士」を題材にした、モンティ・パイソンの劇場映画第2作。もう何度繰り返し観たか知れない名作中の名作。以前に発売された2枚組コレクターズDVDに、新規特典映像を10分加えて再リリース。本編もデジタルリマスター。(ソニーピクチャーズ)
『犯さん哉』(2007)
モンティ・パイソンに多大な影響を受けたと公言するケラリーノ・サンドロヴィッチが作・演出を手がけ、劇団☆新感線の古田新太が座長を務めた、構想10年の“デタラメ演劇”公演がDVD化。共演は中越典子、犬山イヌコ、姜暢雄、大倉孝二ほか。(ポニーキャニオン)
NHKアーカイブス ドラマ名作選集・第3期/昭和50年以降篇〜カラーの時代〜
1975年以降にNHKで放映されたドラマの中から、名作を選りすぐった5枚組DVD-BOX。収録タイトルは「極楽家族」「修羅の旅して」「しあわせの国 青い鳥ぱたぱた」「北の海峡」「失われし時を求めて〜ヒロシマの夢」。それぞれ単品でも同時リリース。(ポニーキャニオン)
『墓場鬼太郎』第二集(2008)
原作初期のダークな味わいを忠実にアニメ化したTVシリーズ『墓場鬼太郎』の第2巻。「吸血木」「寝子」「ニセ鬼太郎」の3話を収録。正直、初回を観ただけではあまりピンとこなかったけど、回を追うごとに原作のすっとぼけたユーモアや突飛な展開をきっちり踏襲しようとしていることが分かり、どんどん引き込まれていった。(角川エンタテインメント)
『徳川セックス禁止令 色情大名』(1972)
突如として色欲の素晴らしさに目覚めた九州の大名が、自分以外の人間はセックスまかりならん! と「閨房禁止令」を発令。大騒動に陥る藩内の事件を綴った艶笑風刺劇。『エロ将軍と二十一人の愛妾』と並ぶ、鈴木則文監督の代表作。明確な主人公が存在せず、群像スケッチ風に映画が進行していくため、個人的にはなんとなくエッセイっぽいイメージが。(東映)
『シルクハットの大親分』(1970)
鈴木則文監督の隠れた名作がニュープリントマスターで初ソフト化。『緋牡丹博徒』シリーズの人気キャラクター、若山富三郎演じる熊虎親分を主人公にしたスピンオフの第1作で、緋牡丹お竜こと藤純子も特別出演。『緋牡丹』シリーズの生みの親である鈴木監督が、番外編的企画の中でのびのびと自身の世界を展開させた、痛快任侠活劇。(東映)
『シルクハットの大親分 ちょび髭の熊』(1970)
鈴木則文監督・若山富三郎主演の『シルクハットの大親分』シリーズ第2弾。今回は熱海を舞台に、輸入自動車の利権をめぐって悪徳博徒と熊虎親分が対決する。クライマックスでは緋牡丹お竜さんも登場し、華麗な大立ち回りが展開。ギャグありお色気ありの痛快娯楽作。(東映)
『現代ポルノ伝 先天性淫婦』(1971)
池玲子&サンドラ・ジュリアン、夢の競艶! と書くだけで特定のファン層はグッとこざるを得ない、通過儀礼的一品。元よりムチャな企画を職人・鈴木則文監督が遊びの余地なくまとめ上げた本作は、決して楽しい仕上がりではない。しかし、ファンにとっては面白いかどうかなど問題ではなく、このフィルムそのものが見逃すことのできない「事件」なのである。(東映)
『多羅尾伴内』(1978)
百面相探偵・多羅尾伴内を、匿名性とは百万光年ほどかけ離れた大スター・小林旭が演じた話題作。かつてはやはり誰が見ても変装になっていないスター片岡千恵蔵が演じていたので、これは伝統に則ったキャスティング。監督は荒唐無稽を具現化させれば右に出るものはない名匠・鈴木則文。『ファントム・オブ・ザ・パラダイス』か『サスペリア』かという演出で描かれる、コンサート会場でのアイドル惨殺シーンは今でも語り草。(東映)
●2008.5.23発売
『ベティ・ペイジ』(2005)
1950年代にSM雑誌「Bizzare」などで活躍したピンナップガール、ベティ・ペイジ。アメリカ裏ポップカルチャーを代表するアイコンとなった彼女の半生を、あんまし似てないグレッチェン・モル主演で映画化した作品。『アメリカン・サイコ』のメアリー・ハロンが監督を務め、グウィネヴィア・ターナーと脚本を共同執筆。(ジェネオン)
『北京ロック』(2001)
香港から北京にやってきた若きミュージシャンが、そこで新しい仲間たちと出会い、彼らとツアーに出発する。『宋家の三姉妹』のメイベル・チャン監督が、北京のロックシーンを背景に描く青春映画。主演は『ワンナイト・イン・モンコック』のダニエル・ウーと、『THE EYE 2』のスー・チー。(ジェネオン)
暗黒街列伝 ─GUNS AND GANGS─
岡本喜八監督の『暗黒街』シリーズ4本をまとめたDVD-BOX。収録作品は『暗黒街の顔役』『暗黒街の対決』『暗黒街の弾痕』『顔役暁に死す』。BOXのみの特典として、岡本監督が毎日脚本を執筆していた自宅の書斎を映した貴重な記録映像「鬼才の書斎」、岡本監督作品の予告編集を収録した特典ディスクつき。(東宝)
『暗黒街の顔役』(1959)
ヤクザ稼業から足を洗おうとする弟・宝田明と、組織への忠誠と肉親への愛の狭間で揺れる兄・鶴田浩二の悲劇をサスペンスフルに描いた、岡本喜八監督のヒット作。随分前に観たのでよく覚えてないけど、まだ作風が固定していない頃のシリアスで暗めの演出が新鮮だった気がする。音楽はいつもの佐藤勝ではなく伊福部昭。(東宝)
『暗黒街の対決』(1960)
前作『〜顔役』よりもコミカルなテイストをふんだんに盛り込んだ娯楽作。ギャング同士が抗争を繰り広げる地方都市にやってきた一匹狼の刑事・三船敏郎が、双方の組織を壊滅させるまでを描く。そのたたみかけの早さはスピーディーというよりアシッドな感じ。フィルターを多用したカメラワークも過剰にエキセントリック。三船の目にも止まらぬ往復ビンタとか、殺し屋トリオの歌謡シーンとか、遊びに遊んだ演出が見どころ。(東宝)
『暗黒街の弾痕』(1961)
初ソフト化。73分というタイトな尺で作られたお正月映画。死んだ兄の復讐のため、産業スパイ団に戦いを挑む青年・加山雄三の活躍を描く。共演は佐藤允、三橋達也、中谷一郎、水野久美といったお馴染みの面々。(東宝)
『顔役暁に死す』(1961)
初ソフト化。家出してアラスカに行っていた市長の息子・加山雄三が町に戻ってみると、そこは2つのギャング組織に支配されており……というお話。演出はひたすら歯切れ良く快調で、シリーズ4本の中ではいちばん喜八映画らしさが出ている快作。アメリカ映画的な構造を強く意識している分、印象的にはヨーロッパ製のアメリカナイズ娯楽映画っぽい。(東宝)
●2008.5.26発売『飾窓の女』(1944)
フリッツ・ラング監督の傑作スリラーが初DVD化。エドワード・G・ロビンソン演じる真面目な大学教授が、ショウ・ウィンドウの中に見た美しい女に惹かれたことから、のっぴきならない窮地に追い込まれていく。ファム・ファタルに扮したジョーン・ベネットは、のちにラング愛好家であるダリオ・アルジェント監督の『サスペリア』に出演。(ジュネス企画)
『雷鳴の湾』(1953)
ジェームズ・ステュアートとアンソニー・マン監督の名コンビが贈る男のドラマ。石油採掘のためにルイジアナ沖へやってきた男たちが、資源を守ろうとする地元の漁民と対立しながら採掘を成功させるまでを描く。ユニバーサル映画初のワイドスクリーン映画に選ばれ、上下をトリミングしたビスタサイズで上映されたこともある。(ジュネス企画)
●2008.5.30発売
『ア・ダーティ・シェイム』US公開バージョン(2004)
アメリカ映画界が誇る永遠の過激派、ジョン・ウォーターズ渾身の大傑作がついに日本でもDVD化! レビューは
こちら。90年代以降の作品では、『シリアル・ママ』と並ぶマスターピースだと思う。トレイシー・ウルマンの捨て身の熱演も強烈なインパクト。それにしても「US公開バージョン」ってどういう意味だろう?(ハピネット)
『ピンク・フラミンゴ』ノーカット特別版(1972)
ジョン・ウォーターズ監督とその仲間たちがボルチモアから世界に問うた、バッドテイスト博覧会。トラッシュムービーとしての達成度は他の追随を許さず、永遠不動の地位を守り続けている。今回は極力、無修正に近いかたちでソフト化されるとのこと。伝説の尻パク・パフォーマンスがついに鮮明な映像で見られる、かも(見たいかどうかはさておき)。特典としてブックレット、復刻ポスター、ポストカードセットを収録。(デックスエンタテインメント)
●2008.5.28発売
『河童のクゥと夏休み』コレクターズBOX(2007)
『クレヨンしんちゃん/嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』の原恵一監督が、念願の企画を実現させた劇場長編アニメ。小学5年生の少年・康一と河童の子ども・クゥの交流を、丹念で誠実な演出で綴った秀作。原作は木暮正夫の児童文学『かっぱ大さわぎ』。2時間をゆうに越える尺で、派手さのまるでないドラマ主体の長編アニメを作り上げるという型破りな企画を、今の時代に成立させてしまったこと自体がすごい。いろんな意味で、とても贅沢な映画だと思う。西田尚美や田中直樹ら、声優陣の好演も印象的。コレクターズBOXには、劇場公開版より3分ほど長い特別版本編と、公開時に放映された特別番組「そうだ遠野へ行こう」などを収録した特典ディスク、ブックレットを同梱。(ソニーピクチャーズ)
『河童のクゥと夏休み』通常版(2007)
こちらは138分の劇場公開版。特別版とさほど印象は変わらないはず。限定5000セットの
ぬいぐるみ同梱版
も同時発売。(ソニーピクチャーズ)
●2008.5.30発売『カフカ 田舎医者』(2007)
『頭山』『年をとった鰐』などの作品で知られるアニメーション作家・山村浩二の新作は、フランツ・カフカの小説『田舎医者』の映像化。冬の夜、助からない患者の往診に向かった老医師の絶望を、悪夢的映像美で描く。狂言師の茂山千作、作家の金原ひとみなどが声優として参加。(松竹)
●2008.5.31発売『8 1/2』愛蔵版(1963)
スランプに陥り、理想の世界へ現実逃避する映画監督グイド……。イタリア映画界の巨人、フェデリコ・フェリーニの代表作が、貴重な特典映像やブックレットを収めた2枚組の愛蔵版として初DVD化。(紀伊國屋書店)
ロベール・ブレッソン DVD-BOX2
廃盤になって久しかったブレッソン監督の代表作『スリ』『バルタザールどこへ行く』『少女ムシェット』の3本がまとめてDVD-BOXで復活。これであとは『白夜』が出ればカンペキなんだけど……無理かなあ、やっぱり。(紀伊國屋書店)
『山の焚火』(1985)
人里離れた山奥で、父親に家を追い出された聾唖の弟は、優しい姉と二人だけの幸福な時間を過ごす。やがて道ならぬ愛に目覚めた姉弟に、悲劇が訪れるのだった……。スイスの映画作家フレディ・M・ムーラーの代表作。ある家族がたどる悲劇的な物語を、美しい四季を背景に静かなタッチで描いていく。(紀伊國屋書店)
佐藤真監督作品BOX
昨年惜しくも世を去ったドキュメンタリー作家・佐藤真監督の作品を集めたDVD-BOX。収録作品は『阿賀に生きる』『まひるのほし』『SELF AND OTHERS』『花子』『阿賀の記憶』『保育園の日曜日』『女神様からの手紙』。独特の視線で人間を見つめてきた佐藤監督の足跡をたどることができる貴重な映像集。(紀伊國屋書店)
●2008年6月以降リリースの注目タイトル
『28週後…』特別編
(20世紀フォックス)6月6日発売
『ヒドゥン』&『ヒドゥン2』ツインパック
(ギャガ・コミュニケーションズ)6月6日発売
『カリギュラ《ヘア解禁版》』
(ギャガ・コミュニケーションズ)6月6日発売
『カリギュラ』インペリアル・エディション4枚組BOX
(ギャガ・コミュニケーションズ)6月6日発売
『フリーウェイ(連鎖犯罪)』ニューマスター版
(ジェネオン)6月6日発売
『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』ブックレット付きプレミアム・ボックス
(ワーナー)6月11日発売
『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』特別版
(ワーナー)6月11日発売
『ブレードランナー《ファイナルカット》』スペシャル・エディション
(ワーナー)6月11日発売
『ブレードランナー《ファイナルカット》』Blu-ray
(ワーナー)6月11日発売
「ジャン=リュック・ゴダール フィルム・コレクション」
(ユニバーサル)6月12日発売
『シャラコ』
(ユニバーサル)6月12日発売
『ヒート』プレミアム・エディション
(東北新社)6月13日発売
『ラストエンペラー』ディレクターズカット版
(東北新社)6月13日発売
『次郎長三国志』
(東映)6月21日発売
『続 次郎長三国志』
(東映)6月21日発売
『次郎長三国志 第三部』
(東映)6月21日発売
『次郎長三国志 甲州路殴り込み』
(東映)6月21日発売
『恋極道』
(東映)6月21日発売
『カイバ』Vol.1
(VAP)6月25日発売
『墓場鬼太郎』第三集
(角川エンタテインメント)6月25日発売
『バロン』デラックス・コレクターズ・エディション
(ソニーピクチャーズ)6月25日発売
『モンティ・パイソン ライブ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル』
(ソニーピクチャーズ)6月25日発売
『恥』特別編
(20世紀フォックス)6月27日発売
『顔のない殺人鬼』
(紀伊國屋書店)6月28日発売
『幽霊屋敷の蛇淫』
(紀伊國屋書店)6月28日発売
『ラテンアメリカ 光と影の詩』
(紀伊國屋書店)6月28日発売
『殺人容疑者』
(紀伊國屋書店)6月28日発売
『Genius Party』
(TCエンタテインメント)7月2日発売
『潜水服は蝶の夢を見る』特別版
(角川エンタテインメント)7月4日発売
『瘋癲老人日記』
(角川エンタテインメント)7月4日発売
『デイ・ウォッチ』ディレクターズ・カット
(20世紀フォックス)7月4日発売
『ナイト・ウォッチ』&『デイ・ウォッチ』ディレクターズ・カット DVD-BOX
(20世紀フォックス)7月4日発売
『ナイト・ウォッチ』&『デイ・ウォッチ』Blu-ray Disc BOX
(20世紀フォックス)7月4日発売
『ダーティハリー』アルティメット・コレクターズ・エディション
(ワーナー)7月9日発売
『墓場鬼太郎』第四集
(角川エンタテインメント)7月23日発売
『フィクサー』原題:Michael Clayton(2007)
傑作。近頃では稀有な“大人の男のシリアスドラマ”を真っ向から描いた、気概に満ちた作品だった。骨太な社会派エンタテインメントとしても一級品。テンポよく硬質な演出と、気迫みなぎる役者の演技でグイグイ引っ張り、最後までテンションを落とさず見せきってしまう。CGを使った特殊カットも一切盛り込まず、ただ現実に在る人間たちのドラマを映しだすだけで、ソリッドな娯楽映画を成立させた作り手の心意気が嬉しい(だから、エンドクレジットのなんと短いことか!)。
主演のジョージ・クルーニーが、久々に本気でかっこいい。普段の軽妙な味や胡散臭さを封じ、苦み走った寡黙な中年男の哀愁を漂わせ、最高の演技を見せている。彼が演じる“フィクサー”とは訴訟に関与しない揉み消し専門の弁護士のこと。日本でフィクサーと聞いて思い浮かべる大物のイメージとは違い、本作の台詞の中では、どちらかというと姑息に暗躍する何でも屋といったニュアンスで使われている。「ニッチ(適材)」という言葉も劇中で何度か出てくるが、クルーニー扮する主人公マイケル・クレイトンは、そんな裏の仕事が天職だと認められてしまった男。常に自己嫌悪と隣り合わせの日々を送り、妻とも離婚し、肉親の作った借金まで背負っている。人生に追いつめられた者の鬱屈を、クルーニーは笑顔ひとつ見せない抑えた芝居で妙演。クライマックスの逆転劇でも、シリアス俳優としての実力を出しきっている。これで惚れ直す人も多いのではないだろうか。

しかし、本作でもっとも強烈なインパクトをもたらすのは、主人公の同僚アーサー役のトム・ウィルキンソンだ。悪徳企業の庇護にうんざりし、ノイローゼに陥ったあげく「正義」という名の狂気に目覚めてしまうベテラン弁護士を、かつてないほどの凄まじい迫力で熱演している。映画の冒頭を飾る、狂気に満ちたモノローグがとてつもなく素晴らしい。破滅的なおかしさと本物の威圧感がみなぎる最高の演技だ(この人だけは『フル・モンティ』に出てたって本気で怖い)。『フィクサー』は彼のベスト・パフォーマンスと言えるのではないか。
そして、敵役にあたる巨大農薬会社の法務部長カレンを演じた英国人女優ティルダ・スウィントンも素晴らしい。恐ろしくもありながら大いに同情をさそうキャラクター造形が出色で、それをガラス細工のように冷たい美貌をもつスウィントンが張りつめた表情で力演。一瞬たりとも目が離せない。オスカー受賞も納得だ。

珍しく事前情報を何も持たずに観に行き、オープニングにもスタッフクレジットがなかったので、最後まで誰が監督した映画なのか知らずに観た。それで余計に楽しかったのかもしれない。途中でシドニー・ポラックが役者として出てきたので「ひょっとして……」と思ったけど、すぐに「いや、今のポラックにこんなきびきびした映画は撮れないよな」と思い直した。最後になってようやく名前が判明。監督・脚本、トニー・ギルロイ。ああ『ボーン・アイデンティティー』の脚本家だ。なるほど。
男くさい社会派ドラマを真っ向から語りきろうとする姿勢、予想を裏切る時制トリックを織り込んだシナリオの構造、その態度はひたすら自信に満ちており、揺るぎない。ラストカットの長回しも堂々たるものだ。プロデューサーとして名を連ねるスティーヴン・ソダーバーグや、S・ポラックを思わせる演出テクニックも吸収しつつ、デビュー作にして確固たる自分の映画を作り上げていて、とても好感が持てた。ファンタジー小説をモチーフに使うギミックのあたりは少し余計だったけど、よくできたシナリオを作者の意図どおりに映像化しきった充実感は伝わってくる。

やっぱり冒頭のシーンが何しろかっこいい。留守電に吹き込まれた明らかに狂った男のモノローグを背景にした弁護士事務所のカットバックで、完全に心を奪われた。ここでいきなり謎をふっかけられた観客は、主人公ジョージ・クルーニーが画面に登場した時に「なるほど、この導入部で彼がさっきの留守電野郎の危機を救い、鮮やかな“揉み消し屋”ぶりを見せるのか」と思う。しかし予想は覆される。主人公は疲弊しきった表情のまま特にめざましい活躍をすることもなく、また別のサプライズが起こり、観客ともども呆然としている間に、話は数日前にさかのぼってしまう。この説明を排したスリルのたたみかけが見事だ。『ボーン』シリーズでも本来目指していたのはこのニュアンスなんだな、と確認できる。
そして、社会悪を描写するリアリティ。これが何しろ卓抜している。『エリン・ブロコビッチ』や『シビル・アクション』といった企業の悪事を糾弾する社会派作品からも、一歩抜きんでた印象がある。

物語上では“敵役”にあたる企業法務弁護士のカレンは、別に冷血漢でも悪魔でもなく、我々のごく身近にいるタイプの人間として描かれる(それどころか努力の人と誉め称えられてもいい)。企業の防波堤として日々プレッシャーと戦い、責任ある大人として己に与えられた職務を全うしようとするがゆえに、彼女は人の道から外れる。それがどんなに恐ろしいことか分かっているにも関わらず。しかし立場上、そこに選択の余地はない(と、彼女は思い込んでいる)。今この世界にどれだけカレンのような人間がいることだろう? 社会的地位や報酬と引き換えに、プレッシャーにまみれ、倫理や信義に目をそむけ、自分を見失った人間が。彼女が脇にでっかい冷汗のシミを作って緊張に喘ぐ姿や、自宅で何度もスピーチの練習を繰り返す姿を執拗に映しだす演出は、鮮烈にリアルだ。
本作には、今までずっと勘違いされてきた「人間味のある悪役」という言葉が、やっと正しいかたちで実現している、という感動があった。たとえば『ザ・ロック』のエド・ハリスみたいに、型通りの悪役に中途半端な味付けとして「人間的な弱み」とかを加えるのではない。元々どこにでもいる普通の人でしかないキャラクターが、ある特殊な立場にいるために器以上の悪をなさざるを得ず、さらにプレッシャーやコンプレックスを肥大させていく。そうした成立過程こそ現実社会における“悪”のリアリティではないか。善玉VS悪玉という明快な図式を好むハリウッド映画にしては珍しく、トニー・ギルロイはそんなリアルな敵役を見事に作り上げてみせた。

社会人として生きる人間にとって、この映画に登場する「どんづまり」に陥った人々は、とてつもなくリアルに映る。生活のためには自分を裏切り、他人を傷つけ、環境を破壊することも致し方ない。だが、クルーニー演じるマイケル・クレイトンも、はたまたウィルキンソン演じるアーサーも、ある瞬間にそこで捨て身の決意をもって踏ん張り、己の信義を守ってみせることができた。しかしカレンは、現実の大多数の人がそうであるように、正義に目覚めるチャンスを逸する。
地獄に堕ちないためにどう生きればいいか、少しでも考えさせてくれる良作である。
・Amazon.co.jp
DVD『フィクサー』
オリジナル・サウンドトラックCD『フィクサー』
【“『フィクサー』(2007)”の続きを読む】
『Futurama』 Fourth Series (2002-2003)

『ザ・シンプソンズ』のマット・グレーニングが原案・プロデュースを手がけたSFコメディアニメの第4シリーズ。31世紀の未来世界を舞台に、宇宙運送屋“プラネットエクスプレス社”で働く20世紀生まれのボンクラ青年フライと、その仲間たちが繰り広げるおかしな日常と冒険をギャグ満載で描いた快作だ。今回のシリーズでは、登場人物の過去にまつわるストーリーや、関係性に微妙な変化の生まれるドラマチックなエピソードが多く、ファンには特に人気の高いタイトルが集中している。なんとなくシリーズ終焉の匂いがするのが寂しいが……。
実際、この第4シリーズで『Futurama』はひとまず幕を閉じる。作品のクオリティも高く、熱狂的なファン層も獲得したものの、『ザ・シンプソンズ』ほどのポピュラリティは得られなかったためか、FOXは放映打ち切りを決定。一部のエピソードは未放映のままDVD化された。また、9.11の影響を受けて、カットや変更を余儀なくされたギャグもいくつかあるという。
第4シリーズは、傑作揃いだった
第3シリーズに比べると全体的にバラつきはあるが、幕引きにふさわしいドラマチックな展開と、ほんのり切ない雰囲気が楽しめるシリーズだ。『ロッキー・ホラー・ショー』や『ファントム・オブ・ザ・パラダイス』や『クレヨンしんちゃん/雲黒斎の野望』といった名作群と同じで、この観終わったあとの寂しさ・切なさこそ、何度も繰り返し観てしまう秘密なんだと思う。その中からいくつか、個人的にお気に入りのエピソードを以下に紹介。

「Leela's Homeworld」
ベンダーが核廃棄物を下水道に垂れ流したせいで、地下に棲むミュータントたちは怒ってベンダーたちを拉致。巻き添えを食ったフライとリーラともども処刑されそうになるが、何者かに助け出される。行く先々でリーラを守護天使のように助けてくれる、彼らの正体は一体……? みなしごと思われていたリーラが、実の両親と思いがけない再会を果たす感動的エピソード。ラストで流れるピチカート・ファイブの「Baby Love Child」が泣かせる。脚本のクリスティン・ゴアは、元アメリカ合衆国副大統領のアル・ゴアの娘。再会シーンをエピソードの最後の最後まで引っ張る構成がなかなか異色だ。ちなみにアル・ゴアも本作のファンで、
第2シリーズの「Anthology of Interest I」、そして第4シリーズ「Crimes of the Hot」に本人役で出演している。

「Love and Rocket」
プラネットエクスプレス社のスペースシップとベンダーが恋に落ちた!? シップに搭載されたコンピュータをアップグレードしたところ、人工知能が女性の人格になり、ベンダーとイイ仲になってしまったのだ。ふたりはロマンティックなデートを重ねるが、飽きっぽいベンダーはすぐに別の女性ロボットに目移り。純情なスペースシップは嫉妬のあまり、ベンダーを永遠に我が物にしようとする……。ギャップを抱えた恋愛関係の難しさと、恋に狂った女性の恐ろしさを、ロボット同士の恋模様を通して描くエピソード。スペースシップを演じた女性声優がやたらキュートかつ巧いので、誰かなーと思ったらシガーニー・ウィーヴァーだった! さすが! ラブシーンで「デイジー」を流したり、密室でのベンダーたちの会話を読唇術で読み取ろうとしたり、ふんだんに盛り込まれた『2001年宇宙の旅』のパロディが楽しい。ルーシー・リューもちょこっと出演。

「Less Than Hero」
ドクター・ゾイドバーグからもらった特殊なスキンクリームで、スーパーパワーを手に入れたリーラとフライ。彼らはベンダーを加えた3人で無敵の最強チームを結成。正体を隠し、町を守るヒーローとして活躍する彼らは、たちまち英雄として称えられる。しかしある時、リーラは地下に住む両親に、自分がスーパーヒーローだと明かしてしまう……。おなじみ主役トリオがヒーローとなって活躍する一編。気合いの入ったコスプレ、無理やりな変身シーン、ヒーローには付き物のテーマソングなど見どころ満載。もちろん『Futurama』なので、彼らのスーパーパワーも正義感も、後半ではグダグダに……。タイトルは映画化もされたブレット・イーストン・エリスの小説『レス・ザン・ゼロ(Less Than Zero)』から。

「Jurassic Bark」
フライは20世紀の遺跡展で、見覚えのある化石を見つける。それは昔働いていたピザ屋で飼っていた駄犬のシーモアだった。彼はシーモアをなんとか蘇生させてほしいとファーンズワース教授に懇願。ベンダーは親友の立場を奪われるような気がして、シーモアの化石に嫉妬し始める……。フライと愛犬の友情物語を、現在と回想シーンのカットバックで見せていく、ペーソスあふれるエピソード。飼い主フライを失ったシーモアの後半生をつづる『ハチ公物語』的なエピローグが秀逸で、シリーズ中でも屈指の泣かせる話として高い評価を受けている。タイトルはもちろん『ジュラシック・パーク(Jurassic Park)』と犬の吠える声(Bark)の合体。

「Teenage Mutant Leela's Hurdles」
ファーンズワース教授のあまりのボケっぷりに業を煮やしたプラネットエクスプレス社の面々は、教授を強引に若返りスパへ連れて行く。ところが、ふとしたことからフライたちまで若返り物質を浴びてしまい、全員がティーンエイジャーに! レギュラーキャラがそれぞれ青春まっさかりの状態になってしまう愉快なエピソード。孤児院育ちのせいで「親の目を盗んで」遊ぶのが夢だったリーラは、フライと『アメリカン・グラフィティ』のようなデートを楽しむ(お約束のカーレース・シーンが楽しい)。ジェームズ・ディーンのような反抗児になってしまうベンダー、どんどん幼生状態に戻っていくドクター・ゾイドバーグがえらいことキュート。若かりし日に戻った教授の70年代風ファッションも見どころだ。ラストシーンが本筋と全く関係ないんだけど、異常にかっこいい! タイトルの由来は言うまでもなく亀のアレ。

「The Why of Fry」
リーラにふられ続け、仕事でも必要とされず、もはや人生の意味を失ったフライ。そんな時、ペットのニブラーはフライを母星に連れて行き、彼が未来へやってきた“本当の理由”を教える。フライこそ、地球の救世主だったのだ! フライが未来へ来たのは偶然ではなかった、という大ネタが明かされる重要エピソード。
第3シリーズ「The Day the Earth Stood Stupid」でも描かれた、宇宙征服をもくろむ脳型エイリアンとニブロニアンたち(外見は可愛いペットみたいだけど、実は高度な知的生命体)との抗争に巻き込まれ、フライは自らに課せられた使命と対峙する。このエピソードのために、
第1シリーズの第1話もちょっぴり作り変えられたという。

「Where No Fan Has Gone Before」
31世紀の地球では、『スター・トレック』は危険な宗教として封印されていた。すべての映像素材や資料は遠い辺境の惑星オメガ3に葬り去られ、迫害を恐れたレギュラーキャストの保存生首も、レナード・ニモイを除いて宇宙へ旅立ってしまった……。その事実を知ったフライたちは、ニモイの首を連れて惑星オメガ3へ。そこでは生身の肉体を得たキャストたちが、張りぼてのセットに囲まれて『スター・トレック』のキャラクターを演じていた!
第1シリーズの第1話「Space Pilot 3000」以来の出演となるレナード・ニモイを始め、ウィリアム・シャトナーやジョージ・タケイなど『スター・トレック(宇宙大作戦)』の出演陣が一堂に会した、全世界のスタトレ・マニア大喜びのエピソード。ただし痛烈なオタク風刺ギャグも満載。いきなりブラニガン艦長による裁判シーンから始まって、回想スタイルで進んでいくシナリオの凝り方も初期『スタトレ』っぽい(?)。ちょっとウィリアム・シャトナーがよく描かれすぎていると思うが、こうでもしないと出てくれないんだろうなあ。タイトルは『スター・トレック』第2話「光るめだま(Where No Man Has Gone Before)」から。

「The Sting」
フライ、リーラ、ベンダーが新たに引き受けた仕事は、巨大宇宙蜂のハチミツを採取してくること。3人はこっそり巣の中へ潜入し、順調にハチミツを運び出すが、途中でバレて蜂軍団に襲撃される羽目に。そしてなんと、フライが刺されて殉職! 彼を死なせたのは自分のせいだと落ち込むリーラ。しめやかに葬儀が行われ、皆が彼の思い出に別れを告げた頃、リーラの前に死んだはずのフライの姿が……! 主人公フライの死という驚きの展開で幕を開ける、衝撃的なエピソード。後半は『うる星やつら2/ビューティフルドリーマー』のように、リーラが虚実の境目を見失っていくさまをスピード感あふれる演出でたたみかけ、なかなか圧巻。リーラとフライの生死を越えた絆を描くラブストーリーとしても感動的だ。タイトルはもちろん「蜂のひと刺し」の意味と、ラストのどんでん返しで有名な映画『スティング』のダブルミーニング。

「Obsoletely Fabulous」
ファーンズワース教授が新型ロボットを購入してからというもの、居場所のないベンダー。彼は自ら工場へ行ってアップグレードしてもらおうとするが、怖くなって逃げだしてしまう。ボートで海の外へ出たベンダーは、とある孤島に流れつく。そこはテクノロジーに頼らないスローライフを送るポンコツロボットたちの楽園だった。彼らの思想に感化されたベンダーは全身を木製パーツに“ダウングレード”。生まれ変わったベンダーは仲間とともにニューヨークへ戻り、テクノロジー社会に対してテロを開始するが……。クリストファー・ティンのパンクな音楽に乗せて、ベンダーたちが子供のいたずらみたいなテロを繰り返すシークェンスがおかしい。ラストには『未来世紀ブラジル』のようなどんでん返しが。タイトルはイギリスの人気TVコメディドラマ『アブソリュートリー・ファビュラス(Absolutely Fabulous)』から。Obsoletelyは「すたれた/時代遅れの」という意味。

「The Farnsworth Parabox」
ファーンズワース教授はパラレルワールドへの行き来をかなえる箱を開発。世界の法則を覆しかねない危険から、教授はそれを破棄しようとする。が、リーラは好奇心からその箱の中へ入ってしまう。そこで見たのは、何もかもが自分たちと同じようで、何かが異なる世界。髪の色も違うし、ベンダーのボディも金色だし、リーラとフライは結婚していた! パラレルワールド側の教授たちは、真逆の世界=悪の人格を持った分身がやってきたと思い込み、リーラたちを信じようとしない……。並行宇宙を題材にした、正統派SFタッチのエピソード。「正反対の世界」と聞いてSFファンが頭に浮かべるイメージを、スマートにひっくり返してみせるのが『Futurama』らしい。幾通りものパラレルワールドが登場し、バラエティ豊かな『Futurama』のバリエーションが楽しめる。極寒の世界だったり、盲人しかいない世界だったり、全員がバネ人形だったり、ローマ帝国風だったり……。そして、ドクター・ゾイドバーグはどの世界に行っても鼻つまみ者であることが発覚(涙)。

「Three Hundred Big Boys」
宇宙での戦勝を祝って、ニクソン大統領から全地球住民に300ドルの記念紙幣が配られた。思いがけないボーナスを得た人々は、それぞれお金の使い道を考え始める。キフは恋人エイミーにプレゼントを贈ることにし、エイミーは喋るタトゥーを入れ、ベンダーは高級葉巻を買い、リーラは水族館のシャチ乗りにチャレンジし、ファーンズワース教授は若返りセラピーを受けて超年下のガールフレンドをゲット。そしてフライはコーヒーを100杯飲み尽すことに決めるが……? 『Futurama』の数あるエピソードの中でも特に異色のくだらなさにあふれた、群像パズル風ストーリー。『パルプ・フィクション』に影響を受けた『ザ・シンプソンズ』シーズン7の「スプリングフィールドに関する22の短いフィルム」を意識して作られたのだとか。コーヒーを100杯飲むって何か意味があるのか? と思ってると、予想だにしない感動的ラストが待っていたりする。

「The Devil's Hands Are Idle Playthings」
4シリーズにわたって続いてきた『Futurama』、堂々の最終回。
第1シリーズの傑作エピソード「Hell is Other Robots」に出てきたロボ悪魔が再び登場し、
第3シリーズの「Parasites Lost」ともセットになった『ファウスト』仕立てのストーリー。感情を映像化する楽器“ホロフォーナー”がなかなか上達しないフライは、ロボ悪魔の助けを借りることに。危険な賭けに勝って悪魔の手を得たフライは、天才ホロフォーニストとして頭角を現し、世間からの注目を集める。彼はリーラに捧げる自作のオペラを上演しようとするが、そこに自らの手を奪い返そうとロボ悪魔が乗り込んできた……。悪魔を演じるのは『ザ・シンプソンズ』のホーマー・シンプソン役でおなじみ、ダン・カステラネタ。「Hell is Other Robots」同様、ミュージカルとしての見せ場をふんだんに盛り込み、クライマックスではキャスト陣によるオペラシーンが展開。彼らの芸達者ぶりを堪能できる。いつも肝心なところで恋を成就できなかったフライの一途な思いが、リーラの心をかすかにとらえるエンディングが美しい。
▼今年6月にDVD発売予定の新作長編第2弾『Futurama: Beast With A Billion Backs』

シリーズ終了後、作り手にとってもファンにとっても寂しい日々が続いたが、2007年にようやく製作再開が決定。オリジナル長編エピソード『Futurama: Bender's Big Score』が作られ、07年11月にDVDリリースされた後、アメリカのコメディ専門チャンネル「コメディセントラル」でも25分×4回に分けて放映された(第4シリーズの未放映分も合わせてオンエア)。現在、新作長編第2弾『Futurama: Beast With A Billion Backs』の発売が今年6月に控えており、第3弾『Futurama: Into the Wild Green Yonder』の製作も進められている。まだまだ『Futurama』には明るい未来が期待できそうだ。
・Amazon.co.jp
DVD『Futurama』Vol 1(3枚組)
DVD『Futurama』Vol 2(4枚組)
DVD『Futurama』Vol 3(4枚組)
DVD『Futurama』Vol 4(4枚組)
・DVD Fantasium
DVD『Futurama: Bender's Big Score』DVD『Futurama: Beast With A Billion Backs』※すべて米国盤
【“『Futurama』 Fourth Series (2002-2003)”の続きを読む】
『ノーカントリー』原題:No Country for Old Men(2007)

面白かった。久々にコーエン兄弟の実力を感じられたし、今までの作品にはなかった新境地も見せてもらって、まだまだ新しいことはやれるんだなあと勇気が湧いた。特に今回は、カーター・バーウェルの音楽にまったく頼らず、緊張感あふれるテンポのいい画面展開だけで観客の興味をグイグイ引っ張っていく。その見事な演出に感動した。最近はどうもキレが鈍ってきていた気がしたので、本来のスリラー作家としての本領発揮ぶりは嬉しい。コミカルなテイストは普段より抑えめだが、ほのかなユーモアも忘れてはいない。
そして、相変わらず暴力のデザインが素晴らしい。ひとつひとつの打撃の食らい方、飛び散る血の見せ方(あるいは隠し方)が、とにかく惚れ惚れするほどかっこよかった。空気ボンベという新手の殺人道具の描写も面白い。こういう新しいエモノを発見したときのコーエン兄弟は本当に嬉しそうだ。
こういったタイプの作品だと、これまではかなり「画!」という主張の強いスタイリッシュな画面作りをしてきたコーエン兄弟だが、『ノーカントリー』ではさらに無駄なくシェイプアップされた演出スタイルに進化している。緻密に計算されたかっこいい構図から、すぐにそっけなく人物主体のショットに(移動もしくはパンで)移行できる、活劇的な潔さを獲得しているのだ。撮影監督ロジャー・ディーキンスの仕事がまた際立っている(
『ジェシー・ジェームズの暗殺』同様、カメラオペレーターを兼任)。本作にも出演しているトミー・リー・ジョーンズの監督作『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』(2005)にも共通する、荒れ地の光の捉え方が興味深かった。

キャスティングはもう、言うまでもなく完璧だ。巷で話題のハビエル・バルデムの迫力は、まさに絶品。ホントに劇中とんでもなくブサイクに見えるショットもあって、『ハモンハモン』(1992)や『ゴールデン・ボールズ』(1993)からは随分遠くへ来たもんだなあと思いつつ、流暢で研ぎ澄まされた英語の台詞回しも含め、動物的で重量感のある芝居が美しかった。主人公ジョシュ・ブローリンの70年代アクション俳優然とした精悍な侘まいもいい。きびきびしたアクションとミニマルな感情表現が魅力的。南部訛りを見事にマスターしたスコットランド人女優ケリー・マクドナルドの演技も特筆ものだ。脇に回って最大限の存在感を発揮するウディ・ハレルソンのスターぶりも素晴らしかった。『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(1994)では無軌道な殺人鬼を演じていたのに、本作では……。

トミー・リー・ジョーンズも、監督作『メルキアデス〜』で自ら決定付けた、古きアメリカの記憶を皺に刻む“フロンティアの男”のアイコンとしての役割を、見事に果たしている。コーエン兄弟が近年とみにこだわっている「アメリカの神話性」を今回託されたのが、ジョーンズの存在感ではないだろうか。ただし、路頭に迷わせるために。
あの後半の見せ方には、やっぱり唖然とした。それまで凄くワクワクしながら観ていただけに、ポカンとするしかなかった。あれがよかったとは思わないけども、ショッキングなやり方で観客を作品のテーマへ導いてみせる手口としては成功しているとは思う。どう理解していいか分からない=どうこの世の中を生きていけばいいのか分からない、という困惑が、この映画の最後で観客がたどり着くべき気分だからだ。映画的に心地好い省略などでは、もはやない(できるのにしない)。こういう荒業はポッと出の新人監督には許されない暴挙だろうし、逆に、あれだけ「フォーム」にこだわってきた作家のコーエン兄弟がやるからこそ、この暴力的なまでのスッ飛ばし方が効くのだと思う。

『セブン』(1995)でさえ、デイヴィッド・フィンチャー監督はモーガン・フリーマン扮する老刑事に微かな希望を呟かせたのに、コーエン兄弟はジョーンズの所在なさげな表情で映画を断ち切ってしまう。まさしく老人が所在を失う世界の物語だから当然だ。いろんな意味で挑戦的で、少なくとも2回は観なくては、という気持ちにさせる映画だった。
・Amazon.co.jp
DVD『ノーカントリー』スペシャル・コレクターズ・エディション
原作本『血と暴力の国』 by コーマック・マッカーシー(扶桑社ミステリー)
【“『ノーカントリー』(2007)”の続きを読む】
ホームページ
アフィリエイト レンタルサーバー 1GB!FC2ブログ(blog)