『Futurama:The Beast with A Billion Backs』(2008)

SFアニメ『Futurama』オリジナル長編シリーズの第2弾。前作
『Bender's Big Score』(2007)のラストで出現した宇宙の裂け目から、未知の生命体がやってくるというストーリーを主軸に、フライ、ベンダー、エイミーとキフらのドラマが交錯していく。
前作からの流れを全く無視してフライとイイ仲になるヒロイン・コリーンの声を演じるのは、ブリタニー・マーフィー。テレビアニメ『キング・オブ・ザ・ヒル』のレギュラーキャストでもあるので、さすがにアテレコには慣れている様子。そしてTVシリーズにも何度か出演している理論物理学者スティーヴン・ホーキング博士も、本人役で登場する(もちろん人工音声で)。
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
〈おはなし〉
突如として現れた宇宙の裂け目を、人々がだんだん気にしなくなった頃。プラネット・エクスプレス社の仲間であるエイミーが、婚約者のキフと婚礼をあげることになった。フライは新しいガールフレンドのコリーンを伴い、キフの母星で行われたセレモニーに出席する。

フライとコリーンも順調に愛を育み、ついに2人は同棲することに。ところがコリーンの暮らすアパートには、フライの他に何人もの恋人たちが同居していた。最初のうちは我慢していたものの、結局は耐え切れず彼女の家から飛び出してしまうフライ。
数日後、宇宙の裂け目を閉じるべく、高性能爆弾を搭載した戦艦が地球を出航する。指揮官のブラニガン艦長と共に、もちろん副官のキフも同行。だが、キフは誤って爆弾もろとも宇宙へ発射され、悲惨な事故死を遂げてしまう。悲しみに暮れるエイミー。

こっそり乗艦していた傷心のフライは、宇宙服を着て裂け目へと向かう。自分以外の誰もいない場所を求めて。ところが、裂け目の向こう側には未知の生命体が待ち構えていたのだ! フライは思いもよらぬかたちで地球へと帰還する。何億という触手を持ち、星ほどの大きさを誇る巨大生命体・イーヴォとともに。地上の人々はその触手に捕えられ、身も心も支配されていく。
そんなパニックをよそに、ベンダーは親友フライに見捨てられた寂しさから、フリーメイソンまがいの「ロボット同盟」に入信していた。打倒人間を掲げながら、実はハイソな社交クラブでしかない組織に不満を感じた彼は、ラジカルな主義主張で独自の地位を確立していく。そしてついに、ロボット軍団を率いて蜂起するのだが……?
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

前半はバラバラのエピソードをラフに繋ぎ合わせたような印象で、正直まとまりに欠ける。それに、タイトルになっている「10億の背中を持つケダモノ」がなかなか出てこないので、やきもきさせられてしまう。
しかし後半、一風変わった地球侵略ストーリーが巨大なスケールで展開し始めると、ぐいぐい引き込まれていく。イーヴォ(Yivo)と呼ばれる巨大生命体は、台詞だと“Evil”=悪に聞こえるが、これが実は引っかけ。(以下、ややネタバレ)
【“『Futurama:The Beast with A Billion Backs』(2008)”の続きを読む】
『Futurama:Bender's Big Score』(2007)

『ザ・シンプソンズ』の生みの親として知られるマット・グレーニングが、原案・プロデュースを手がけたテレビアニメシリーズ『Futurama』。31世紀のニューヨークを舞台に、20世紀生まれのボンクラ青年フライと、酒びたりのダメロボット・ベンダーを始めとする仲間たちが繰り広げる、ハチャメチャな冒険と日常を描いたSFコメディだ。シリーズの大まかな内容については、下記リンク参照。
・『Futurama』 First Series(1999)・『Futurama』 Second Series(1999-2000)・『Futurama』 Third Series(2001-2002)・『Futurama』 Fourth Series(2002-2003) 1999年から4シーズンにわたって放映され、一部のファンからは「『ザ・シンプソンズ』よりも面白い」とカルトな人気を博しながらも、放送局フォックス・ネットワークは2003年に番組を打ち切ってしまう。作り手もファンも突然の終了を悲しみ、再開を望む声も多かった。そして2006年、ようやくオリジナルスタッフによって製作再開が決定。4本の長編オリジナルストーリーがDVDでリリースされることになり、その第1弾として2007年11月に発売されたのが、本作『Bender's Big Score』である。
4年ぶりの新作ということで、期待と不安が入り混じりつつ観てみたら、予想以上に素晴らしい出来栄えだった。あらゆるギャグを満載した相変わらずの面白さと、映像・ストーリーの両面で長編らしい見応えを兼ね備えた、意欲的な力作に仕上がっている。ブランクをものともしないスタッフの仕事ぶりに感動した。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
〈おはなし〉
西暦3007年。主人公フライたちが働く宇宙宅配便「プラネット・エクスプレス」社は、親会社の「ボックス・ネットワーク」によって営業停止となっていた。しかし、ボックス社のバカ重役どもが全員おっ死んだので、めでたく営業再開!
ところがそれも束の間、会社は強欲なエイリアンたちの詐偽によって乗っ取られてしまった。彼らはさらに“情報”をかぎつける嗅覚を駆使し、なぜかフライの尻に彫られていたベンダーの刺青に、ある重大な秘密が隠されているのを突き止める。そこには、パラドックス抜きでの時間移動を可能にするタイムホールの召喚コードが隠されていたのだ! ベンダーはエイリアンたちにコンピュータ・ウィルスを仕込まれて下僕と化し、タイムホールを乱用して泥棒を繰り返す。巨万の富を得たエイリアンたちは、ついに地球の乗っ取り計画までスタートさせた。
一方、フライが想いを寄せ続けている一つ目美女のリーラは、最近ラーズというハゲの中年男と急接近中。どうやら彼女は今度こそ“運命の人”と出会ってしまったらしい。傷心のフライは、自らタイムホールを召喚し、西暦2000年に戻って人生をやり直そうとする。そこへ、コードを知るフライ抹殺の命を帯びたベンダーもやってきて……。
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

TVシリーズ同様、様々なサブストーリーが盛り込まれているが、前半の主軸となるのは詐欺師エイリアンたちの悪だくみと、タイムトリップによって巻き起こる騒動。後半では、千年の時を越えたフライとリーラの一途なラブストーリーへと比重が傾いていく。脚本を手がけたのは、第3シリーズの「Time Keeps on Slippin'」など、数々の秀作エピソードを手がけているメインライターのひとり、ケン・キーラー。複雑に入り組んだ時間SFのプロットを、多少荒っぽいながらも大胆な引っ張り方で見せきる手腕はさすが。とはいえ、途中からいきなり過去と現在のスイッチバック形式で物語が進み始め、叙述のスタイルが一変するあたりは、賛否が分かれるかもしれない。TVシリーズのエピソードと辻褄が合わなくなる部分も出てきたりする。しかし、その無頓着な語りの自由さが、最終的には意外な感動をもたらすので侮れない。本作では時間SFを切ないラブストーリーとして見事に着地させ、ジャック・フィニィの伝統に則ったSFの醍醐味を感じさせてくれる。

複雑なプロットを展開させていく上で大いに役立っているのが、隅々にまで詰め込まれたギャグ。とにかくその物量たるや凄まじく、ストーリー的に視聴者が混乱する暇を与えない。のっけから放送局フォックスに喧嘩を売ったり(BOXのネオンが壊れていて「FOX」に見えるというアイディアが秀逸)、主要キャラが途中で首を切断されたり、やたらと登場人物の尻ばっかり露出したり、アル・ゴアが大統領選に敗れた衝撃的理由が判明したり……。中学生レベルの下ネタからスラップスティックな破壊的ギャグ、ウィットに富んだ政治ネタまでが矢継ぎ早に繰り出される。ライタールームはきっと戦場なんだろうなあ、と思いを馳せてしまうほど。

ビリー・ウェストを始め、レギュラー声優陣の演技が相変わらず絶好調なのも嬉しい。歳月を感じさせずに同じ役を演じられるのも、プロの声優さんの素晴らしさ。特に今回は、ウェストの巧みな声の演じ分けが特別な感動を呼ぶのだ。ウェストは実際に4年という歳月を経て、主人公フライの声を変わらぬ調子で演じつつ、フライが20世紀に戻ってやり直す「もうひとつの人生」の歳月も見事に演じ分ける。その「不変」と「成熟」は、今回の作品自体のキーであり、現実に『Futurama』再開までに費やされた時の流れをも伝えるようで、非常に感慨深いものがある。
千年の眠りを経て目覚めた青年フライの成長物語である『Futurama』において、常に“時間”は重要なテーマであった。切なくも美しいどんでん返しが待ちうける『Bender's Big Score』は、ある種、フライの辿ってきた長大な旅の到達点を描くクライマックスでもある。もちろん、それはパラレルな結末のうちのひとつにすぎないけれども。

随所に現れる過去のエピソードの引用や、愛すべきサブキャラたちの再登場も、ファンにとっては嬉しい。みんな大好きヒプノトード様もしっかり登場する。本作単体で観ても十分に面白いが、やはりTVシリーズを観ていた方が遥かに楽しめるのも事実。とりあえず第1シリーズの「Space Pilot 3000」、第2シリーズの「Xmas Story」「Anthology of Interest I」「The Cryonic Woman」、第3シリーズの「A Tale of Two Santas」「The Luck of the Fryrish」「Godfellas」、第4シリーズの「Jurassic Bark」「The Why of Fry」は観ておいたほうがいいかもしれない。
カメオ出演陣の顔ぶれも長編だけあって豪華。もはや常連となったアル・ゴアを筆頭に、クーリオ、サラ・シルヴァーマンなどが再登場するほか、あのルーク・スカイウォーカーことマーク・ハミルが“ハヌカ・ゾンビ”役でミュージカル・パートに出演!(なんのこっちゃ)
映像の密度もHDフォーマット化によってグレードアップ。デジタル技術の進歩も大きな影響を与えており、特にクライマックスで展開するフルCGの宇宙船バトルは、TVシリーズ放映当時では表現できなかったであろう迫力。そのあたりのクオリティの違いも見どころだ。第2弾『Futurama:The Beast with A Billion Backs』への期待も否応なしに高まる快作である。

・DVD Fantasium
DVD『Futurama:Bender's Big Score』(米国盤・リージョン1) 【“『Futurama:Bender's Big Score』(2007)”の続きを読む】
『Futurama』 Fourth Series (2002-2003)

『ザ・シンプソンズ』のマット・グレーニングが原案・プロデュースを手がけたSFコメディアニメの第4シリーズ。31世紀の未来世界を舞台に、宇宙運送屋“プラネットエクスプレス社”で働く20世紀生まれのボンクラ青年フライと、その仲間たちが繰り広げるおかしな日常と冒険をギャグ満載で描いた快作だ。今回のシリーズでは、登場人物の過去にまつわるストーリーや、関係性に微妙な変化の生まれるドラマチックなエピソードが多く、ファンには特に人気の高いタイトルが集中している。なんとなくシリーズ終焉の匂いがするのが寂しいが……。
実際、この第4シリーズで『Futurama』はひとまず幕を閉じる。作品のクオリティも高く、熱狂的なファン層も獲得したものの、『ザ・シンプソンズ』ほどのポピュラリティは得られなかったためか、FOXは放映打ち切りを決定。一部のエピソードは未放映のままDVD化された。また、9.11の影響を受けて、カットや変更を余儀なくされたギャグもいくつかあるという。
第4シリーズは、傑作揃いだった
第3シリーズに比べると全体的にバラつきはあるが、幕引きにふさわしいドラマチックな展開と、ほんのり切ない雰囲気が楽しめるシリーズだ。『ロッキー・ホラー・ショー』や『ファントム・オブ・ザ・パラダイス』や『クレヨンしんちゃん/雲黒斎の野望』といった名作群と同じで、この観終わったあとの寂しさ・切なさこそ、何度も繰り返し観てしまう秘密なんだと思う。その中からいくつか、個人的にお気に入りのエピソードを以下に紹介。

「Leela's Homeworld」
ベンダーが核廃棄物を下水道に垂れ流したせいで、地下に棲むミュータントたちは怒ってベンダーたちを拉致。巻き添えを食ったフライとリーラともども処刑されそうになるが、何者かに助け出される。行く先々でリーラを守護天使のように助けてくれる、彼らの正体は一体……? みなしごと思われていたリーラが、実の両親と思いがけない再会を果たす感動的エピソード。ラストで流れるピチカート・ファイブの「Baby Love Child」が泣かせる。脚本のクリスティン・ゴアは、元アメリカ合衆国副大統領のアル・ゴアの娘。再会シーンをエピソードの最後の最後まで引っ張る構成がなかなか異色だ。ちなみにアル・ゴアも本作のファンで、
第2シリーズの「Anthology of Interest I」、そして第4シリーズ「Crimes of the Hot」に本人役で出演している。

「Love and Rocket」
プラネットエクスプレス社のスペースシップとベンダーが恋に落ちた!? シップに搭載されたコンピュータをアップグレードしたところ、人工知能が女性の人格になり、ベンダーとイイ仲になってしまったのだ。ふたりはロマンティックなデートを重ねるが、飽きっぽいベンダーはすぐに別の女性ロボットに目移り。純情なスペースシップは嫉妬のあまり、ベンダーを永遠に我が物にしようとする……。ギャップを抱えた恋愛関係の難しさと、恋に狂った女性の恐ろしさを、ロボット同士の恋模様を通して描くエピソード。スペースシップを演じた女性声優がやたらキュートかつ巧いので、誰かなーと思ったらシガーニー・ウィーヴァーだった! さすが! ラブシーンで「デイジー」を流したり、密室でのベンダーたちの会話を読唇術で読み取ろうとしたり、ふんだんに盛り込まれた『2001年宇宙の旅』のパロディが楽しい。ルーシー・リューもちょこっと出演。

「Less Than Hero」
ドクター・ゾイドバーグからもらった特殊なスキンクリームで、スーパーパワーを手に入れたリーラとフライ。彼らはベンダーを加えた3人で無敵の最強チームを結成。正体を隠し、町を守るヒーローとして活躍する彼らは、たちまち英雄として称えられる。しかしある時、リーラは地下に住む両親に、自分がスーパーヒーローだと明かしてしまう……。おなじみ主役トリオがヒーローとなって活躍する一編。気合いの入ったコスプレ、無理やりな変身シーン、ヒーローには付き物のテーマソングなど見どころ満載。もちろん『Futurama』なので、彼らのスーパーパワーも正義感も、後半ではグダグダに……。タイトルは映画化もされたブレット・イーストン・エリスの小説『レス・ザン・ゼロ(Less Than Zero)』から。

「Jurassic Bark」
フライは20世紀の遺跡展で、見覚えのある化石を見つける。それは昔働いていたピザ屋で飼っていた駄犬のシーモアだった。彼はシーモアをなんとか蘇生させてほしいとファーンズワース教授に懇願。ベンダーは親友の立場を奪われるような気がして、シーモアの化石に嫉妬し始める……。フライと愛犬の友情物語を、現在と回想シーンのカットバックで見せていく、ペーソスあふれるエピソード。飼い主フライを失ったシーモアの後半生をつづる『ハチ公物語』的なエピローグが秀逸で、シリーズ中でも屈指の泣かせる話として高い評価を受けている。タイトルはもちろん『ジュラシック・パーク(Jurassic Park)』と犬の吠える声(Bark)の合体。

「Teenage Mutant Leela's Hurdles」
ファーンズワース教授のあまりのボケっぷりに業を煮やしたプラネットエクスプレス社の面々は、教授を強引に若返りスパへ連れて行く。ところが、ふとしたことからフライたちまで若返り物質を浴びてしまい、全員がティーンエイジャーに! レギュラーキャラがそれぞれ青春まっさかりの状態になってしまう愉快なエピソード。孤児院育ちのせいで「親の目を盗んで」遊ぶのが夢だったリーラは、フライと『アメリカン・グラフィティ』のようなデートを楽しむ(お約束のカーレース・シーンが楽しい)。ジェームズ・ディーンのような反抗児になってしまうベンダー、どんどん幼生状態に戻っていくドクター・ゾイドバーグがえらいことキュート。若かりし日に戻った教授の70年代風ファッションも見どころだ。ラストシーンが本筋と全く関係ないんだけど、異常にかっこいい! タイトルの由来は言うまでもなく亀のアレ。

「The Why of Fry」
リーラにふられ続け、仕事でも必要とされず、もはや人生の意味を失ったフライ。そんな時、ペットのニブラーはフライを母星に連れて行き、彼が未来へやってきた“本当の理由”を教える。フライこそ、地球の救世主だったのだ! フライが未来へ来たのは偶然ではなかった、という大ネタが明かされる重要エピソード。
第3シリーズ「The Day the Earth Stood Stupid」でも描かれた、宇宙征服をもくろむ脳型エイリアンとニブロニアンたち(外見は可愛いペットみたいだけど、実は高度な知的生命体)との抗争に巻き込まれ、フライは自らに課せられた使命と対峙する。このエピソードのために、
第1シリーズの第1話もちょっぴり作り変えられたという。

「Where No Fan Has Gone Before」
31世紀の地球では、『スター・トレック』は危険な宗教として封印されていた。すべての映像素材や資料は遠い辺境の惑星オメガ3に葬り去られ、迫害を恐れたレギュラーキャストの保存生首も、レナード・ニモイを除いて宇宙へ旅立ってしまった……。その事実を知ったフライたちは、ニモイの首を連れて惑星オメガ3へ。そこでは生身の肉体を得たキャストたちが、張りぼてのセットに囲まれて『スター・トレック』のキャラクターを演じていた!
第1シリーズの第1話「Space Pilot 3000」以来の出演となるレナード・ニモイを始め、ウィリアム・シャトナーやジョージ・タケイなど『スター・トレック(宇宙大作戦)』の出演陣が一堂に会した、全世界のスタトレ・マニア大喜びのエピソード。ただし痛烈なオタク風刺ギャグも満載。いきなりブラニガン艦長による裁判シーンから始まって、回想スタイルで進んでいくシナリオの凝り方も初期『スタトレ』っぽい(?)。ちょっとウィリアム・シャトナーがよく描かれすぎていると思うが、こうでもしないと出てくれないんだろうなあ。タイトルは『スター・トレック』第2話「光るめだま(Where No Man Has Gone Before)」から。

「The Sting」
フライ、リーラ、ベンダーが新たに引き受けた仕事は、巨大宇宙蜂のハチミツを採取してくること。3人はこっそり巣の中へ潜入し、順調にハチミツを運び出すが、途中でバレて蜂軍団に襲撃される羽目に。そしてなんと、フライが刺されて殉職! 彼を死なせたのは自分のせいだと落ち込むリーラ。しめやかに葬儀が行われ、皆が彼の思い出に別れを告げた頃、リーラの前に死んだはずのフライの姿が……! 主人公フライの死という驚きの展開で幕を開ける、衝撃的なエピソード。後半は『うる星やつら2/ビューティフルドリーマー』のように、リーラが虚実の境目を見失っていくさまをスピード感あふれる演出でたたみかけ、なかなか圧巻。リーラとフライの生死を越えた絆を描くラブストーリーとしても感動的だ。タイトルはもちろん「蜂のひと刺し」の意味と、ラストのどんでん返しで有名な映画『スティング』のダブルミーニング。

「Obsoletely Fabulous」
ファーンズワース教授が新型ロボットを購入してからというもの、居場所のないベンダー。彼は自ら工場へ行ってアップグレードしてもらおうとするが、怖くなって逃げだしてしまう。ボートで海の外へ出たベンダーは、とある孤島に流れつく。そこはテクノロジーに頼らないスローライフを送るポンコツロボットたちの楽園だった。彼らの思想に感化されたベンダーは全身を木製パーツに“ダウングレード”。生まれ変わったベンダーは仲間とともにニューヨークへ戻り、テクノロジー社会に対してテロを開始するが……。クリストファー・ティンのパンクな音楽に乗せて、ベンダーたちが子供のいたずらみたいなテロを繰り返すシークェンスがおかしい。ラストには『未来世紀ブラジル』のようなどんでん返しが。タイトルはイギリスの人気TVコメディドラマ『アブソリュートリー・ファビュラス(Absolutely Fabulous)』から。Obsoletelyは「すたれた/時代遅れの」という意味。

「The Farnsworth Parabox」
ファーンズワース教授はパラレルワールドへの行き来をかなえる箱を開発。世界の法則を覆しかねない危険から、教授はそれを破棄しようとする。が、リーラは好奇心からその箱の中へ入ってしまう。そこで見たのは、何もかもが自分たちと同じようで、何かが異なる世界。髪の色も違うし、ベンダーのボディも金色だし、リーラとフライは結婚していた! パラレルワールド側の教授たちは、真逆の世界=悪の人格を持った分身がやってきたと思い込み、リーラたちを信じようとしない……。並行宇宙を題材にした、正統派SFタッチのエピソード。「正反対の世界」と聞いてSFファンが頭に浮かべるイメージを、スマートにひっくり返してみせるのが『Futurama』らしい。幾通りものパラレルワールドが登場し、バラエティ豊かな『Futurama』のバリエーションが楽しめる。極寒の世界だったり、盲人しかいない世界だったり、全員がバネ人形だったり、ローマ帝国風だったり……。そして、ドクター・ゾイドバーグはどの世界に行っても鼻つまみ者であることが発覚(涙)。

「Three Hundred Big Boys」
宇宙での戦勝を祝って、ニクソン大統領から全地球住民に300ドルの記念紙幣が配られた。思いがけないボーナスを得た人々は、それぞれお金の使い道を考え始める。キフは恋人エイミーにプレゼントを贈ることにし、エイミーは喋るタトゥーを入れ、ベンダーは高級葉巻を買い、リーラは水族館のシャチ乗りにチャレンジし、ファーンズワース教授は若返りセラピーを受けて超年下のガールフレンドをゲット。そしてフライはコーヒーを100杯飲み尽すことに決めるが……? 『Futurama』の数あるエピソードの中でも特に異色のくだらなさにあふれた、群像パズル風ストーリー。『パルプ・フィクション』に影響を受けた『ザ・シンプソンズ』シーズン7の「スプリングフィールドに関する22の短いフィルム」を意識して作られたのだとか。コーヒーを100杯飲むって何か意味があるのか? と思ってると、予想だにしない感動的ラストが待っていたりする。

「The Devil's Hands Are Idle Playthings」
4シリーズにわたって続いてきた『Futurama』、堂々の最終回。
第1シリーズの傑作エピソード「Hell is Other Robots」に出てきたロボ悪魔が再び登場し、
第3シリーズの「Parasites Lost」ともセットになった『ファウスト』仕立てのストーリー。感情を映像化する楽器“ホロフォーナー”がなかなか上達しないフライは、ロボ悪魔の助けを借りることに。危険な賭けに勝って悪魔の手を得たフライは、天才ホロフォーニストとして頭角を現し、世間からの注目を集める。彼はリーラに捧げる自作のオペラを上演しようとするが、そこに自らの手を奪い返そうとロボ悪魔が乗り込んできた……。悪魔を演じるのは『ザ・シンプソンズ』のホーマー・シンプソン役でおなじみ、ダン・カステラネタ。「Hell is Other Robots」同様、ミュージカルとしての見せ場をふんだんに盛り込み、クライマックスではキャスト陣によるオペラシーンが展開。彼らの芸達者ぶりを堪能できる。いつも肝心なところで恋を成就できなかったフライの一途な思いが、リーラの心をかすかにとらえるエンディングが美しい。
▼今年6月にDVD発売予定の新作長編第2弾『Futurama: Beast With A Billion Backs』

シリーズ終了後、作り手にとってもファンにとっても寂しい日々が続いたが、2007年にようやく製作再開が決定。オリジナル長編エピソード『Futurama: Bender's Big Score』が作られ、07年11月にDVDリリースされた後、アメリカのコメディ専門チャンネル「コメディセントラル」でも25分×4回に分けて放映された(第4シリーズの未放映分も合わせてオンエア)。現在、新作長編第2弾『Futurama: Beast With A Billion Backs』の発売が今年6月に控えており、第3弾『Futurama: Into the Wild Green Yonder』の製作も進められている。まだまだ『Futurama』には明るい未来が期待できそうだ。
・Amazon.co.jp
DVD『Futurama』Vol 1(3枚組)
DVD『Futurama』Vol 2(4枚組)
DVD『Futurama』Vol 3(4枚組)
DVD『Futurama』Vol 4(4枚組)
・DVD Fantasium
DVD『Futurama: Bender's Big Score』DVD『Futurama: Beast With A Billion Backs』※すべて米国盤
【“『Futurama』 Fourth Series (2002-2003)”の続きを読む】