Simply Dead

映画の感想文。

『映画秘宝EX 激闘! アジアン・アクション映画大進撃』発売!

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 久々の告知です。夏目深雪さん、浦川留さんと1年以上かけてコツコツ作ってきた(でも最終的には怒涛の勢いで駆け抜けた)本がようやく発売されます。ベテランから若手まで勢揃いした豪華執筆陣によるコラム、俳優&監督インタビュー6連発など読み応え満点の1冊となっております。ご興味ありましたら、ぜひ!

『映画秘宝EX 激闘! アジアン・アクション映画大進撃』

定価:1,600円+税/洋泉社刊
発売日:2017年4月19日


【目次】
◎カラーグラビア“The Essentials of Asian Action”
 打て!/蹴りまくれ!/飛べ!/内功!/武器を持て!/撃て!

◎カラーグラビア ASIAN ACTION STAR TRIBUTE 秘宝的永世王位武打星
 ブルース・リー(コラム:江戸木純)
 ジャッキー・チェン(コラム:筒井修)
 サモ・ハン(コラム:岡本敦史)
 ジェット・リー(コラム:浦川留)

◎インタビュー 直撃!アジアン・アクションの星
 カラ・ワイ(ベティ・ウェイ)/マックス・チャン


◎対談
  龍飛鳳舞!武俠映画七変化(宇田川幸洋×浦川留)
◎コラム
  変幻する武俠映画のスタイル――キン・フーから『マトリックス』、そして『ローグ・ワン』へ(岡本敦史)

《香港・台湾》
◎コラム
  伝説の映画帝国、邵氏兄弟有限公司――その栄光と波乱の興亡史(知野二郎)
  香港クンフーアクション映画黄金期を築いたアクション監督 ラウ・カーリョンとユエン・ウーピン(浦川留)
  知られざる台湾女性アクション映画の世界――社会写実映画の栄枯盛衰(結城らんな)
  ジョン・ウーとツイ・ハーク――友情と決別、そして再会の物語(岡本敦史)
  チャウ・シンチーのクンフー愛――笑いの達人を支えた熱き武術魂(浦川留)
  ウォン・カーウァイ――“すれ違い”のメロドラマ的アクション(北小路隆志)
  ジョニー・トー七変化――壮麗なるガンアクション美学の変遷(岡本敦史)
  香港潜入捜査官映画の興隆―― 『邊緣人』から『インファナル・アフェア』へ(結城らんな)
  香港黒社会映画と越境者たち――大陸と犯罪映画の関係(岡本敦史)
  ドニー・イェン最強伝説――銀河をも制した「宇宙最強」の男(浦川留)
  イップ・マン ムービーズ――黄飛鴻に代わる新たなヒーローアイコンの誕生(藤本洋輔)
  ダンテ・ラム――肉体の限界を超えて(夏目深雪)
  ベニー・チャン――世界基準の現代香港アクションをリードし、真の香港アクション映画を撮り続ける男(江戸木純)
  2000年以降の女性ファイターたち(浦川留)

◎インタビュー
  リンゴ・ラム
  ウィルソン・イップ
  ダンテ・ラム
  ソイ・チェン

◎対談
  新世代アクションスター総進撃(浦川留×岡本敦史)

◎小論
  ビジネスとしてのアジアン・アクション史――命を削り、拳と筋肉で稼いできた男たちの伝説(江戸木純)

《中国・韓国》
◎小論
  中国クンフーアクション映画の系譜――その起源と独自の歩み(劉文兵)

◎対談
  知られざる70年代韓国アクション映画の世界(知野二郎×岡本敦史)

◎コラム
  中国犯罪アクション映画の現在――検閲との戦いから生まれた過激な挑戦(岡本敦史)
  韓国映画のバイオレンス表現――突き抜けた“痛み”と“過剰さ”の魅力(岡本敦史)
  韓国アクション映画における北朝鮮の表象(夏目深雪)
  チョン・ドゥホン――韓国アクション映画の牽引者(岡本敦史)

《番外編》
◎小論
  アクション原論――すべての映画はアクション映画である(夏目深雪)

◎コラム
  スポーツアクション映画(浦川留)/ホラーアクション映画(岡本敦史)/災害アクション映画(浦川留)/戦争アクション映画(岡本敦史)/サイレントアクション映画(夏目深雪)/アニメーションアクション映画(土居伸彰)

《東南アジア》
◎コラム
  すべてはパンナー・リットグライから始まった タイ・アクションの系譜(藤本洋輔)
  フィリピン・アクション映画の復興―― 『牢獄処刑人』のさらにその先へ(よしだまさし)
  ベトナム・アクション映画の新潮流、『The Rebel』以降(坂川直也)
  インドネシアの荒唐無稽アクションから『ザ・レイド』まで(岡本敦史)
  インド・アクションの新潮流――肉体美よりも格闘美を!(岡本敦史)
  イランのバイオレンス・アクション映画――イスラム革命前と革命後(市山尚三)

アジアン・アクション映画年表[1920~2016年]
      
激薦! アジアン・アクション映画100選(浦川留、岡本敦史、加藤よしき、夏目深雪、藤本洋輔、結城らんな)
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2016年に面白かったもの

 またしても丸1年、更新が途絶えてしまいました……でも、こないだ友人に「年末のベスト発表、楽しみにしてるよ!」なんて言われてしまったので(読んでる人おったんや……と思いつつ)、がんばって更新します!



 2016年に観た映画は大体360本くらい。今年はとにかく「吹替秘宝」の予習で吹替版を毎月観まくっていた印象が強いです(こんなに吹替版を観るのは、テレビの洋画劇場を片っ端からチェックしていた小中学生以来ではないかと)。年明け1/21発売の「映画秘宝3月号」に恒例の新作ベストテンが掲載されますが、そこで最後まで入れようかどうしようか迷ったタイトルは以下の40本。とりあえず日本国内で今年リリースされたものに限っております。

アイアムアヒーロー
アナザー
イット・フォローズ
海よりもまだ深く
映画 クレヨンしんちゃん 爆睡! ユメミーワールド大突撃!
映画 聲の形
エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手のなかに
神様メール
カルテル・ランド
キャロル
キング・オブ・エジプト
ゴーストバスターズ
極秘捜査
この世界の片隅に
西遊記 孫悟空VS白骨夫人
さいなら BAD SAMURAI
ザ・ニック《ファースト・シーズン》(TVドラマ)
シークレット・オブ・モンスター
ジャングル・ブック
シング・ストリート/未来へのうた
ズートピア
スティーブ・ジョブズ
スティーヴ・マックィーン その男とル・マン
スロウ・ウエスト
団地
超人X.
ディスクローザー
手紙は憶えている
デッドプール
トゥルー・ディテクティブ《ファースト・シーズン》(TVドラマ)
DOPE/ドープ!!
トマホーク ガンマンVS食人族
の・ようなもの のようなもの
パディントン
ヒメアノ〜ル
ファイナル・マスター/師父
ベトナムの怪しい彼女
モブサイコ100(TVアニメ)
リップヴァンウィンクルの花嫁
レジェンド 狂気の美学
ユーリ!!! on ICE(TVアニメ)



 ベストテンまではいかなくても「面白かったな~」と印象に残った作品は、以下のとおり。

アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場
暗殺
X-MEN:アポカリプス
エル・クラン
王の運命 歴史を変えた八日間
溺れるナイフ
ガール・オン・ザ・トレイン
グランドフィナーレ
クリーピー 偽りの隣人
獄門島(2016年TVドラマ版)
COP CAR/コップ・カー
ザ・ウォーク
ザ・ギフト
貞子VS伽椰子
残穢 住んではいけない部屋
死の恋人ニーナ
シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ
死霊館/エンフィールド事件
死霊のはらわた リターンズ〈シーズン1〉
シン・ゴジラ
隻眼の虎
ソーセージ・パーティー
ソード・アーチャー 瞬殺の射法
デビルズ・メタル
10 クローバーフィールド・レーン
東京裁判 TOKYO TRIAL(TVドラマ)
トランボ ハリウッドに最も嫌われた男
ドント・ブリーズ
ハイ・ライズ
花に嵐
ヒーローマニア 生活
ビッグマッチ
ファインディング・ドリー
ブリッジ・オブ・スパイ
ヘルケバブ/悪魔の肉肉パーティー
マジカル・ガール
マネー・ショート/華麗なる大逆転
マン・アップ! 恋のロンドン狂騒曲
みかんの丘
LOVE 3D
Raman Raghav 2.0
ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
私の少女時代
湾生回家


 映画祭や先行試写などで、これから公開される新作もたくさん観ました。そのなかから、2017年のベストテンにも食い込んでくるであろう傑作・快作を紹介しておきます。

『ドラゴン×マッハ!』
2017年1月7日公開


『人魚姫』
2017年1月7日公開


『マッドマックス 怒りのデス・ロード《ブラック&クローム・エディション》』
2017年1月14日公開


『ザ・コンサルタント』
2017年1月21日公開


『沈黙/サイレンス』
2017年1月21日公開


『ワイルド・シティ』
2017年1月24日ほか「未体験ゾーンの映画たち2017」にて上映


『侠女』&『残酷ドラゴン 血斗竜門の宿』
2017年1月28日公開



『ドクター・ストレンジ』
2017年1月28日公開


『グリーンルーム』
2017年2月11日公開


『クレイジー・ナイン』
2017年2月25日ほか「未体験ゾーンの映画たち2017」にて上映


『お嬢さん』
2017年3月公開


『アシュラ』
2017年3月4日公開


『ミッドナイト・スペシャル』
2017年3月8日、Blu-ray & DVDリリース


『哭声/コクソン』
2017年3月11日公開


『サラエヴォの銃声』
2017年3月25日公開


『イップ・マン 継承』
2017年4月公開


『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』
2017年5月公開


『新感染/ファイナル・エクスプレス』
2017年夏公開


『Elle(原題)』
2017年夏公開


『危城 Call of Heroes(原題)』
2017年公開


『特工爺爺 The Bodyguard(原題)』
2017年公開


 公開未定の作品にも「これは日本でやったほうがいいんじゃないの?」という作品がたくさんありました。以下、何本輸入されるかわかりませんが、劇場公開かソフトリリースを期待したい12本です。

『Mrs. K』
(2016年/マレーシア/釜山国際映画祭2016にて)


『Corki dancingu(The Lure)』
(2015年/ポーランド/プチョン・ファンタ2016にて)


『麥兜・飯寶奇兵(Mcdull:Rise of Rice Cooker)』
(2016年/香港/釜山国際映画祭2016にて)


『HEADSHOT』
(2016年/インドネシア/釜山国際映画祭2016にて)


『リトル・メン(Little Men)』
(2016年/アメリカ/東京国際映画祭2016にて)


『ヘブン・ウィル・ウェイト(Le ciel attendra)』
(2016年/フランス/東京国際映画祭2016にて)


『フロム・ノーウェア(From Nowhere)』
(2016年/アメリカ/東京国際映画祭2016にて)


『シェッド・スキン・パパ(脱皮爸爸)』
(2016年/香港/東京国際映画祭2016にて)


『メコン大作戦(湄公河行動)』
(2016年/香港=中国/東京国際映画祭2016にて)


『Monkey Twins』
(2016年/タイ/プチョン・ファンタ2016にて)


『Under The Shadow』
(2016年/イギリス、ヨルダン、カタール/プチョン・ファンタ2016にて)


『I am not a serial killer』
(2016年/アイルランド/プチョン・ファンタ2016にて)


 今年最大の出来事は、なんといっても『塚本晋也「野火」全記録』で憧れの塚本監督と一緒にお仕事できたこと、そして『野火』や塚本作品ゆかりの方々に貴重なお話をうかがえたこと。参加できて本当に嬉しかったです。ほかにも、一生会えると思ってなかったような方たちにインタビューできたり、釜山国際映画祭でイ・ドゥヨン監督と握手できたり、『アイアムアヒーロー』のオーディオコメンタリーに参加させてもらったりと、信じられないような出来事がたくさんありました(失敗も多かったですが……)。お世話になった方々に心より感謝申し上げます。そして毎日楽しく過ごせるのは仕事仲間の皆様のおかげです。今年もありがとうございました。

 ……というわけで、2017年もムック『アジアン・アクション(仮)』をはじめ、ガシガシがんばっていきますので、今後ともよろしくお願いいたします。それでは、よいお年を!

『Billy Ze Kick』(1985)

『Billy Ze Kick』(1985)

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〈おはなし〉
 パリ効外の団地で、結婚式を挙げたばかりの花嫁が射殺された。現場にはビリー・ズ・キックと名乗る犯人の大胆不敵な声明文が……それを知ったシャポー刑事(フランシス・ペラン)は驚愕する。なぜならビリー・ズ・キックとは、彼が娘のジュリー・ベルト(セリーズ・ブロック)を楽しませるために作り上げた架空の人物だったからだ! 次々と女たちが殺され、右往左往するシャポー刑事。ジュリー・ベルトは精神分裂症の青年ヒッポと結託し、過激な遊びに熱中する。そしてシャポーの妻のジュリエット(ザブー・ブライトマン)はブローニュの森で春を売り、同じ団地に住む弁護士と関係を持つ。住人たちの脳内でビリー・ズ・キックの存在は膨れ上がり、事件は予想外のクライマックスに向けて疾走する。

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▲『パパはビリー・ズ・キックを捕まえられない』単行本カバー

 世界一好きな小説家は誰か? と尋ねられたら、ジャン・ヴォートランの名前は間違いなく出てくる。今年6月、82歳で世を去ったフレンチ・ノワールの鬼才である。特に、いちばん最初に読んだ『パパはビリー・ズ・キックを捕まえられない』の面白さは衝撃的だった。とことん暴力的でイカれてて、なのに笑えて愛らしくて、老若男女に対して平等に冷酷。悪意とチャーミングさを兼ね備えた作風はあまりに自分の好みと合致しすぎて、「もう小説ってのはこれさえ読んどきゃいいんじゃないか?」とさえ思った。その後、ヴォートランと同世代の新世代ノワール作家たちを追いかけたりしたが、やっぱり面白さでいえばヴォートランが断トツだった。

 ジャン・ヴォートランは『さらば友よ』(1968)や『ジェフ』(1969)などを手がけた映画監督ジャン・エルマンのペンネームである、というのは、フランス映画に詳しい人ならよく知る事実だ。とはいえ彼の表現欲求を満たすのは当時のフランス映画界ではなかなか難しかったようで、わりと早い時期に小説家に転向している(脚本家としては活動)。これ以降、後進の“元同業者”たちによってヴォートランの作品はいくつか映像化されているのだが、その作品世界を完全に映像に置換するのはかなり至難の技と見えて、初期「映画秘宝」でも取り上げられていたイヴ・ボワッセ監督の『狼獣たちの熱い日』(1984)という、どうしようもなくいびつで、なおかつ忘れ去られた作品がわずかに知られているだけだ。なかでも『パパはビリー・ズ・キックを捕まえられない』の映画化作品である『Billy Ze Kick』はファンでさえも観たことがない幻の作品であり、当然のごとく世間一般の評価も低い。しかしながら、あの途方もない文学をどうやって映像化したのか? という興味は抑えがたくあり、ファンとしては出来はどうあれ一度は観てみたい作品だった。その夢がまさか2015年の大晦日に叶うとは……。

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 ジェラール・モルディラ監督による映画版は完全にコメディとして撮られているので、原作の“団地ノワール”としてのグルーミーな味わい、アナーキーな異常性は消え失せている。悪意が肥大し加速していく、どす黒い痛快さみたいなものはあまりない。ただし、ストーリー展開と登場人物はわりと原作に忠実なので、エキセントリックな登場人物が入り乱れて不条理なミステリー劇が形成されていく面白さはある。鈴木清順とゴダールとジャック・タチを下品に混ぜ込んだような、原色をあしらった奇抜なセットやロケーション、作為的な構図やカット割りをこれでもかと重ねてくる演出(途中でいきなりPV風のミュージカル・パートが始まったりするあたり、いかにも80年代)が受け入れられれば、これはこれで楽しい。時折、本当にハッとするような演出もあるので、なかなか侮れない。

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 キャストも魅力的。なんといっても、物語のキーパーソンとなる危なっかしい夢想家の少女ジュリー・ベルトを演じるセリーズ・ブロックが素晴らしい。というか、この子、原作の単行本のカバーを飾っていた女の子ではないか! なんと知らずに映画版のヒロインと最初から出会っていたのだった。あの表紙の子が動いてる! というだけでも感動だ。さんざん人々の悪意を増幅し、挑発し、暴走していったあげくに彼女が迎える結末は、原作とはちょっと変えてあるが(でも「トリュック!」という名台詞はいっぱい言ってくれる)、これはこれでいい。

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 ほかにもジュリー・ベルトの母親ジュリエット(ジュジュ)役で、歌手でもあるザブー・ブライトマンが弾けた美貌と歌声を披露していたり、映画監督のイヴ・ロベールが立ち退きを拒否する偏屈老人を渋く演じていたり、彼に監禁されて発狂してしまう警察署長を名優ミシェル・ロンズデールが怪演していたりする。シャポー刑事役のフランシス・ペランは完璧にコメディ芝居なのでさすがにやりすぎの感はあるけれども、映画のアプローチから言ったら役割をきちんと果たしていると言える。

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 かなりヘンテコな映画だし、公開当時は観客からも原作読者からもそっぽを向かれたのもわかるが、ぐるっと回って今観ると面白い。原作とは別物の異貌のコメディとして、クライテリオンとかアロービデオあたりで発掘してブルーレイ化してくれないものだろうか?

▼劇中、唐突に始まるミュージカル・パート。だいたい全編こんな感じです。


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